Hello New World-Reloading｜リアクション

Hello New World-Reloading

■チャプターＥ：光さす庭
　さて、姉妹都市が発展する間、本家ともいえるギアガーデンがどう発展していったのか見てみましょう。
　この国を作った最初の人物は瀬莉ですが、この国に花と特別な技術を持つ人々を生んだのは椿美咲紀でした。
　瀬莉がより自然に密着した時計の国を作ろうとしたように、美咲紀もまたこの国により豊かな植物を増やそうと考えました。
　元々花の手入れを日課としていた時の番人たちに、花以外の植物も育てるように仕向けたのです。
　まず最初に生まれたのは果樹園でした。
　時間とは世界の絶対的な軸であり、惑星のルールです。それを正確に把握し、時として操れる彼らにとって果物を正確に実らせて収穫することはさほど難しくありませんでした。
　けれどまず最初にぶつかった壁は、品種という壁でした。
　知っているでしょうか。美咲紀たちが普段暮らす世界のスイカは、元々食べるところが殆ど無かったという話を。
　人間が品種改良を重ねに重ね、食べることに適した実がなるように変化させていったのです。
　それは途方も無く地味で、そして途方も無く先の見えないものでした。
　時間に厳しいギアガーデンの技術者が、いつなんどきに終わるかもわからない作業を続けるのは地獄のような苦痛だったでしょう。
　ですが継続は力。
　やがて彼らは果樹園を広げ、他国へ自慢できるほどのものを生産するようになりました。
　この技術はより広く発展して、葉を乾燥させて成分を取りだし、お湯に溶け込ませて呑むといういわゆるお茶の技術をより洗練させることにも成功しました。
　長い年月の間、神様によって主要な技術を支えられていた人々は自らの力で生命のありようを変化させるという発想を持たなかったのですが、このことをきっかけとして彼らは植物を使った様々な産業に着手するようになりました。
　元々地球に酷似した自然環境をもっていたので、リンゴもミカンもなんならトウガラシもありましたが、自分たちの文明にあったものを作成するということを知った彼らは『ジャムにぴったりのイチゴ』や『お茶にするのに適したハーブ』や『ワインのためのブドウ』や『カレーのためのトウガラシ』を生産する技術を身につけたのです。
　彼らがやがて薬学にまで精通するようになるのは、そう遠くないことだったでしょう。