「『新世界の栞』って、知ってる?」
鬼河内 萌が、どこでもない空へ向けて語りかけていた。
ポケットから不思議な色合いの栞を取り出して翳す。
表面には『
突然だが、あなたは神だ』と書き付けられ、裏返すともう少し細かい文字で続きが書かれていた。
『
新世界を作るにあたり、あなたは世界を創造する神のひとはしらに選ばれました。
あなたが望めばあらゆるものが生まれ、あらゆる形に変わります。
まだなにもないこの宇宙に、あなたが世界を作ってください。
たのみましたよ……。』
栞をポケットにしまいなおして、萌はぐっと背伸びをした。
「ボクたちはひょんなきっかけでこの不思議な栞を手に入れて、神様になったの。もしかしたらもっと沢山配られていて、その人が気づいてないだけかもしれないけど……とにかく、新しい世界にボクを含めた10柱の神様が生まれたんだ。ボクたちは宇宙すらないような世界の中で、自由に世界を作っていったの」
別の場所。巨大な時計塔の頂上で、
旅鴉 月詠は『新世界の栞』を眺めていた。
そこにいない筈の誰かにむけて語り始める。
「最初は世界が二つに分かれた。『
滅びある世界』と『
滅びなき世界』だ。私が選んだのは前者だから、そっちを語らせて貰うけど……生き物はちゃんと死ねて、土になって雨になって、惑星をめぐっていく。そういう世界ができた」
月詠が座っている時計塔は、まるでアンティークの時計が複雑に進化したかのような不思議な造形をしていた。周りの家や教会も、時計の部品を組んだような作りをしている。
「惑星には三つの大陸が生まれて、それぞれ別々の文明ができあがった。『
花と時計の国』『
カレーとカエルの国』『
亜種族と温泉の国』だ。どの国も、良くも悪くもちゃんと育っていったんだけどね……」
宇宙空間に浮かぶように、
ナタリア・シシロヴァは『新世界の栞』を眺めている。
物理法則を無視するように、どこかの誰かへ語り始める。
「私は全ての文明がある程度までできあがった後で、この世界に『
絶対悪性存在』を生み出すという試みをした。世界を終わらせてしまわない程度の、しかし文明レベルで滅びてしまう程の、一切話の通じない文明破壊だけを目的とする存在だ」
ふと見上げると、宇宙のかなたから巨大な隕石が惑星へと接近していく。
途中で無数に分裂したそれは、幾度も分裂を繰り返しながら、惑星の至る所へと落ちていく。
「世界の人々はこれを『悪魔』や『侵略者』と呼んで、戦い始めた。そうだ……私が作ろうとしたのは、文明共通の敵なんだ」
腕組みして空に浮遊する
風雲児 轟。彼はピッと『新世界の栞』を立てた。
そこに居るはずなのに、決して居ない誰かへむけて語りかける。
「だが安心してくれ。俺はこの世界に『
正義と悪の才能』をちりばめた」
見下ろすと、カエル気球に乗ったバトルスーツの青年や、キラキラした光を纏って飛ぶ魔法少女や、時空を操りながら家々の屋根を飛び移る執事服の美男子がすれ違っていく。
「才能は力となって、悪巧みをする人を生み出した。同時に、その力を使って悪をこらしめようとする人も現われた。力と力がぶつかり合って、人と人がぶつかり合う。その中には確かに、人間として一番大切な魂の輝きがあったんだ。そして数々の悪と戦ったヒーローや、改心したヴィランたちは今、宇宙からやってくる絶対悪との戦いに直面している」
皆の『新世界の栞』が再び光を放ち始める。
世界創造の力が、再び動き出すのだ。
そう、『
あなた』の手によって。
ごきげんよう、青空綿飴です。
こちらはシナリオガイド『Hello New World』の続編シナリオとなっております。
あなたはひょんなことから『新世界の栞』を手に入れ、神様の一人となりました。
さあ、あなたの自由な発想で世界を創造していきましょう。
(※今回から新規参加の方は、以前から手に入れていたけど発動はさせなかったという扱いになります)
新しくこんな国や大陸を作りたい。
いまの出来事を変えるたえに新しくこんなものを作りたい。
などなど……あなたのアイデア次第でこの世界は大きく変わっていくでしょう。
■創造のルール
この世界ではあらゆるものがあなたの自由に創造できます。
山よあれと思えば山ができますし、塔があればいいと思えば建ちます。勿論物体だけでなく、人々の趣向や考え方、宗教や人種といったものまで思いのままに生み出せます。
ただ絶対のルールとして、自他含めらっかみに登録されているPC・NPCをこの世界に生み出すことはできません。この辺は権利的なお約束と考えてください。
元々この世界を創造するにあたってのルールは先程の一つしかありませんでしたが、前回ある程度まで世界が作られたことによってあるルールが追加されました。
それは『神によって創造されたものを神は破壊できない』というルールです。
具体的には前回シナリオで確定した情報を削除・変更できないということですね。今から作るものに関してはコントロール+Zの感覚でやり直しながら作れるのでご安心ください。
確定している情報は以下で細かく説明しますが、まず大前提として『世界が二つに分かれていること』『死と不滅のルール』『惑星と宇宙の環境と物理法則』は確定してしまっているので、変えることができません。
※例:
『ある国の国民食がカレーライスになっているが、これをハヤシライスに変える』→前回神が確定させた情報なので変更できない
『ある国の国民食がカレーライスになっているが、ハヤシライスブームをおこしてひっくり返す』→神は新たにハヤシライスを作ったのであって、あとは人間たちの自助努力なのでOK。
■世界のいま
まず世界は二つに分かれています。
『滅びある世界』と『滅びなき世界』です。
前者から解説していきます。
・滅びある世界サイド
地球に酷似した惑星をベースに三つの大陸があり、それぞれに文明が栄えています。
東、西、北と分けて紹介していきます。
東の大陸には『カエレル』という国があります。
この国は国民食がカレーライスやカレーうどんで、幸せな気持ちになるとふわふわ飛べるという魔法が一般的に使われています。
また様々な種類のカエルさんの力を借りて暮らしていて、馬車のように荷車をひく大きなカエル車や膨らんで空を飛ぶカエル気球、大型犬くらいのサイズでお家の番をする番カエルなどなど、神様の力によってカエルは様々な能力をもっています。
他の大陸を結ぶ貿易国家としての側面ももち、食料や人材が豊富です。
ヒーローの才能もちりばめられているので、この国からは魔法少女やカエル勇者が生まれるかも知れません。
西の大陸には『ユノハナ』という巨大な温泉国家があります。
温泉が湧く条件に適したこの大陸はそこらじゅうに天然温泉があり、そのぶん地震や火山噴火や洪水といった災害が起きやすいですが、住民たちは建築技術を工夫して栄えています。
住民は殆どが亜種族で、ドラゴンやオオカミやネコのような頭をした人々が共通の言語を交わして普通に生活しています。
彼らの肉体的な強度もさることながら、温泉による効果で国民はみな総じて健康です。
この国では温泉技師や建築家が大臣の次くらいにえらく、とても重宝されます。
北の大陸には『ギアガーデン』という宗教国家があります。
この国の建造物はほとんどが時計の部品を巨大化させたようなパーツを施されており、時計は神様の定めたきわめて神聖なアイテムだとされています。
国を治めているのもその宗教で、最高権力者は教皇です。
教皇は国の中心にある巨大時計塔で暮らしており、この時計塔で生み出される懐中時計は時間を操る魔術の媒体となります。国最高の時計魔術師は十年に一度『季節を一つ前に戻す』という魔術を使えると言いますが、逆に言うとそこが魔術の限界点です。
住民はみな時間に厳しく、しかし時間通りに生活することで強い達成感や幸福感を得ているので高水準のメンタルヘルスを保っています。
またこの国では花を愛でることを尊ぶ習慣があり、そういった意味でも心の穏やかな人が多いでしょう。
・滅びのない世界サイド
宇宙にぽつーんと浮かぶ一本の柱があり、この中で全ての生命が暮らしています。
柱はひとつひとつが階層に分かれていますが、住民たちの都合から大体の階層が自然豊かで動物さんいっぱいの平和空間です。
この世界の住民は熊さんやネコさん狐さんといった動物たちですが、みな人の言葉で会話することができ、共通して高い知的欲求を持っています。
木の棒に石をくくりつけたやつでウホウホしていた時代から軽く数百年で高度な文明へ成長し、彼らは社会を築きました。
ですがこの世界の特徴として、あらゆる生命は絶対不滅であるというルールがあるため、飢餓や病気といった概念がありません。
必要以上にお腹もすかないので、獲物を殺して食べるようなことはありません。
ついでに言うと樹木が無限にグングン生えていくので、果実や作物があふれるほど収穫できます。
この世界では無限に成長する樹木をくりぬいて住居とし、動物たちが服を着たり眼鏡をかけて本を読んだりして過ごしています。
最も巨大な樹木は世界樹と呼ばれ、今階層分けされた柱空間そのものを飲み込んで更に伸びていますが、それでも世界の果てにたどり着くことはないそうです。