Hello New World-Reloading｜リアクション

Hello New World-Reloading

■チャプターＧ：カエレルの魔法少女
　鬼河内萌の話をしましょう。
　彼女が願ったカレーが主食の愉快な国は、同時期にあるひとが願ったみんながカエルさんを好きな国という希望と溶け合うことでカエレルという独特の風土や文化をもった国になりました。
　この国はカエルさんを移動手段にした大陸間貿易業で大きな成功を収め、貿易の中心国として発展を続けています。
　そんな国に危機が訪れたのは、彼らが大陸から離れた場所にある島国との貿易を続けておよそ数百年後のことでした。
　その国では犬やネコや鳥や魚といった動物から直接進化した亜人が多く生息する国で、ユノハナのようにこの世界に生まれたときから亜種族だった者たちとは大きく異なる特殊な生態系をもっていました。
　彼らは自らの進化を助けた神を本能的に知覚するという性質をもっていたため、カエレルをはじめとする人間たちを蔑視していましたし、彼らが神聖な生き物だとするカエルさんを未熟な生物だととらえていました。
　勿論カエレルの人々は自分たちに誇りを持っていましたし、亜人族の考え方を受け入れることはとうていできませんでした。
　やがて互いの主張がぶつかり、宗教戦争が勃発しました。
　カエルさんや魔法少女を擁するカエレルは武力という形でも他国をリードしていましたから、この戦争に負ける要素などないと考えていたのですが……。

　ここで少し、ナタリア・シシロヴァの話をしましょう。
　彼女はこたびの創造で、世界に銃器開発の技術をもたらしました。
　ギアガーデン、カエレル、ユノハナ。そしてギアガーデンの姉妹都市や霊界につながる里に至るまで、大小様々なコミュニティにある才能をもった人間が生まれたのです。
　具体的には、火薬の製造とこれを利用して石や鉛といった鉱物の塊を高速で発射できるというメカニズムを発見する才能です。
　この突飛な人間はもともと風雲児轟が世界中に特殊な才能の持ち主が生まれるようにと願ったために生まれた特殊才能所持者のうちの一人であり、世界も『そんなことを考える人間もたまにはいるよね』程度の気持ちで受け流していました。
　なぜなら主要三国はなんだかんだで他国を攻めるような状況ではありませんでしたし、それぞれの国には兵器としての銃火器を全く必要としないだけの特殊技術があったからです。
　ですが、ある国が銃器のあるメリットに目をつけたのです。
　それが大天使天吏の作った亜人の島国でした。
　彼らは自分たちこそがこの世界における正当な進化種族であり、人類というか弱い生物種族は不当に大陸を占拠していると主張しました。彼らを排除するために、戦闘に適していない者でも簡単に戦力にできる銃器に目をつけたのです。
　魔法少女、時計術士、温泉ドラゴンなどなど……強力な戦士は各国にいましたが、国民全員が戦士となった亜人たちにはさすがに手を焼いたのです。

　そんな亜人族に対して、決定的に対抗できたのはカエレルの魔法少女たちでした。
　鬼河内萌はなにげに漠然としか設定していなかった彼女たちの魔法を大きく拡張することにしたのです。
　まず最初に目をつけたのは、『サポートカエルさん』の存在でした。
　魔法少女にはつきもののサポートキャラクターとして、特別な魔法を使うカエルさんが生まれるようにしたのです。
　加えて、国を襲う兵器や自然災害に関わる様々な脅威をカレー食材に変えてしまうという反則級の錬金術や、『ちっぱいパワー』という名前だけ聞くとなんだかわからない魔法少女の底力的能力を付け加えたのです。
　あとついでに萌のアバターを作ってカレーを食べる喜びだけを感じさせました。これは単に趣味です。
　というわけで、亜人族の猛攻はカエレルの魔法少女がもつ防衛力によって押さえ込まれ、この世界における最初の世界大戦は終結を迎えました。

　元々カエレルの魔法少女は自国の防衛を役目としてしましたし、他の主要二国も略奪や破壊を（国是に反するとして）望まなかったため、亜人の国は新たにガラパゴスという名前を受け、兵器を持たず貿易によって他国に対抗する島国として独自の産業発展を続けることになりました。

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