Hello New World-Reloading｜リアクション

Hello New World-Reloading

■チャプターＣ：魂のゆくえ
　最初にこの世界に死の概念を持ち込んだのは、他ならぬ旅鴉月詠でした。
　死によって人々は生命の意味を考え、時間を強く意識し、生活の安らぎを求めました。
　けれど、死んだら人はどうなってしまうのか。
　この大陸の誰も知りませんでしたし、本当は神様たちも知りませんでした。
　なので月詠は、死の先を創ることにしたのです。

　この世界に、月詠は魂という存在を作りました。
　全ての人にある、次元の異なる存在です。
　肉体に定着し、思考や体験を記録し続ける高次元記録媒体としての役割を持っていました。
　そして魂は不滅であるために、この世界で人が死ぬとそれがある場所にプールされ、新たな肉体を世界に見つけて定着するというシステムも生まれました。
　いわゆる輪廻転生の考え方です。
　そしてこの魂をプールしておく次元を、月詠は霊界と名付けました。

　霊界は次元の異なる場所ですし、魂は人の目には見えません。
　内部に蓄積された記録も、人はそれを解読することも出力することもできません。
　けれどごくまれに、そういったことに近い才能を持つ者も現われました。
　月詠はそんな人間を巫女と名付けて、大陸の南側に住まわせました。
　南側には雲を抜くほど巨大な山があり、山を囲むように樹海が広がっています。
　人類は三国家の間で文明が完結していましたし、特別離れた土地へ赴いて山や森の資源を求めることもありません。なので、この土地は放って置いても誰も近づかない、きわめて孤独な土地として長らく残ることになりました。
　けれど、大陸に人が増え、それぞれが新しいすみかを探すようになるにつれ、この樹海ですら開拓が進むようになったのです。
　開拓が成されたのは、大陸の南端。海に面した土地でした。
　ここに暮らした人々は動物を狩ったり果物を栽培したりして暮らし、時には海路を通じて他国との貿易をすることもありました。
　ここで暮らす人々は自然への適正が高い人ばかりでした。というより、そういう人しか生き残ることは難しかったのです。
　自然と、ユノハナにくらす亜種族が大半を占めるようになり、翼のある種族や獣のような種族が、時折山から下りてくる巫女と交流しながらすごす土地へと発展していきます。
　けれど彼らが山を登ることはありませんでした。
　なぜなら、巫女からこの山に近づくと祟りが起きると強く言われていたからです。
　しかし同時に、亡くなった人々と再び逢える場所だとも言われていました。
　そしてそれは。
　ある意味で事実でした。