Hello New World-Reloading｜リアクション

Hello New World-Reloading

■チャプターＤ：時計の精霊
　この世界に初めて建造の技術や信仰が生まれたのは、佐藤瀬莉の作った『時計のような国』でした。
　やがてギアガーデンと呼ばれるようになったこの国は、時計の部品を組み合わせたような建造物が神聖なものとされ、巨大な時計塔を中心に宗教国家が生まれていました。
　しかし瀬莉はこことは別の、新しい国家の建造を目指すことにしたのです。

　彼女の考えは、自然と調和した国作りでした。
　ギアガーデンと姉妹関係をもつこの土地は、いわゆる精神性の高い小国家です。
　砂や水、太陽や大地を巨大な時計の一部ととらえ、この世界の時を感じて生きていくことにした国家でした。
　元々時間というものに神聖な考え方をもっていたギアガーデンの住民のごく一部が分離してできた土地なので、より密接に時を感じる技術を常に模索していました。
　そこで最初に目をつけたのは、ガラスで作った砂時計でした。
　不思議な話かもしれませんが、この世界においては決して狂わない水晶式時計が国より先に完成していたので、誰も砂や水や、空を巡る太陽で時間を確かめようとはしなかったのです。
　それにこの国には『時計の精霊』がいるとされ、正確に時間を刻むものには少なからず精霊が宿るとされていました。
　事実、決して狂わないギアガーデンの時計には高密度の精霊が宿り、時間を操る魔術を可能なものにしていたのです。

　しかしそんな彼らを大きく追い抜いたのが、この姉妹国家でした。
　砂時計や水時計、日時計や地時計をより正確に作ろうとした彼らの技術力はついに、ギアガーデンの精霊密度を上回るに至ったのです。
　全ての家には精霊を呼び込むための砂時計がかかっていて、太陽の位置から正確に時間を割り出す巨大な時計が国の中央にたてられました。
　しかし、自然の時を読むということは簡単なことではありません。
　雲がかかれば太陽は隠れますし、砂の落ちる瓶も気圧や湿度によって少なからず影響を受けます。
　雪が降るほど寒くなれば、水時計も凍ってしまうでしょう。
　精霊の力を信仰していた人々も、ただ砂時計を回すだけではだめだと流石に思い知りました。
　そして、新たな時計の開発に乗り出したのです。
　より正確な時を。
　より安定した時を。
　確実に、そして永遠に時を刻む装置を人類だけの手で生み出そうとしたのです。
　後にそれが、ギアガーデンを上回った、大きな要因だと言われています。