Hello New World-Reloading｜リアクション

Hello New World-Reloading

■チャプターＢ：ロボット王国
　楽しい場所を作りたい。そんな考えは、日暮ねむるにもありました。
　彼が目をつけたのは大陸の地下深く。きわめて広大な地下空間でした。
　元々さして大きくなかった空間に、彼は人工知能を積んだ機械を生み出しました。
　一番最初の機械は神の奇跡によって知恵をさずかり、彼は新たな機械を作っては自分と同様の知恵を与え、それを幾度も繰り返しました。
　やがては巨大な機械が自らの意志で、意志を持った機械を生産するプラントが生まれました。
　素材は地中に自然精製された鉱物を採掘し続けることで確保できましたし、ユノハナ付近には巨大な地熱の脈があったためにエネルギー源にも困ることはありませんでした。
　こんな巨大なロボット帝国を作って、一体彼は何を考えたのでしょう。
　人類への攻撃でしょうか。
　それとも地球の破壊でしょうか。
　いいえ、どちらでもありませんでした。
　彼は最初の人工知能に、娯楽の概念をしっかりと植え付けていたのです。
　巨大な地下空間は星空めいた無数のライトに彩られ、カジノやナイトクラブやスポーツを楽しむためのスタジアムが生まれました。
　娯楽は欲望から生まれるものです。機械が完全無欠の永久機関であったなら、きっと生産性だけでものを考えてしまったでしょう。
　けれどねむるは地脈に流れる石油資源を彼らの主要燃料に定めて、彼らはそれを食料と位置づけて労働をするようになりました。
　より洗練されたオイルは彼らにとっての贅沢となり、自らの知能でも計り知れない確率によるギャンブルは娯楽となりました。
　スポーツは彼らの性能を向上させる理由になり、やがてロボット帝国は『充実した生産性』を求める機械たちの独自コミュニティとなりました。
　けれどそれも、いつかは終わる日が来ます。
　地底を削り、資源を消費し続ければ、地上の人々と交わる日が来るのです。
　ある日天井をくりぬいて、生まれて初めて空というものを知った彼らが最初に出会ったのは……。

このページにイラストを設定する