２月の★ハッピーバースデー｜リアクション

２月の★ハッピーバースデー

　ネコジマのとある四つ辻、ふらりと立つはトワ・E・ライトフェロゥ。
　好奇心にきらきらと輝くアクアマリンの瞳で、冬の陽が燦々と降り注ぐ道をぐるりと見回す。ついでに踵でくるりと回る。
　陽光の色した金の髪とスカートの裾を翻し、舞うようにターンを決めて、
「あっ」
　トワは道の先、次の四つ角に立つ人影を見つけた。
　黒い帽子に黒い外套、月の色した透き通るような金髪に、どことなく人間離れした雰囲気をふわり纏った、
「エムアー！」
　以前、寝子島カルチャーセンターで『人狼』というゲームに興じた少女の姿を見つけるなり、トワは一瞬も迷うことなく駆け出した。
「トワさん」
「今日も元気にwonder smileしてるマス？」
　振り返りざまに人懐っこい少女に腰に抱きつかれ、遮るもののない陽光のような笑顔を向けられ、
「ふふ、こんにちは」
　戸影エムアと名乗る少女はトワのいうところのwonder smileを浮かべてみせた。
「トコロデーここ何処かわかるデス？」
　エムアの返事を待たず、トワはダイジョーブと笑う。
「解らなくてもオムカエが来るカラダイジョーブデス」
　トワが解らなくとも、お付きの護衛は何故か必ず、絶対に迎えに来てくれる。
　息も継がずに勢い込んで喋りつつ、トワはエムアの服の裾をがっしり、小さな両手で掴む。
「エムアがダイジョーブならトワと遊ぶマス！」
「おやおや」
　月色の瞳も唇も三日月型に細めるエムアの笑みを了承と受け取り、トワはその場で飛び跳ねた。
「トワは寝子島人狼を希望するマス！　シマミンでもー、knightもwolfもドントコイデス！」
「おや、ではまた招待状を送りましょう」
　あのゲームはとても楽しかった。ゲームの最中だけでなく、終わってからの会話も、とてもとても、楽しかった。
　薄い胸を張って宣言するトワに、エムアは薄く微笑む。
「エムアは？　エムアは何したいデス？」
　エムアの周りをぐるぐると駆けまわりながら、スキップをしながら、トワは首を傾げる。ネコジマで偶然にもせっかく見つけた遊び相手、自分の主張ばかりして取り逃がしては堪らない。
「そうですね」
　エムアはちらり、楽しそうに首を傾げた。腰を屈め、トワの耳元に唇を寄せる。
「きょうはエムアのたんじょーび？」
　こっそり大切な秘密を打ち明けられるように聞かされて、トワは歓声あげて大きく跳ねた。
「oh birthdayデシタカー」
　なら、とトワは大真面目に考える。それならば、人狼ゲームはまた今度にして、今日はエムアを祝おう。だってゲームは何時でも出来る。
(デスケド)
「birthday は one year one day.」
　エムアから誕生日だと聞かされた嬉しさに思わず母国語で口走ってしまってから、トワは頬に指先を当てて考える。
「えーとー……年に一度デス！」
　トユコトでー、とトワはエムアを見上げる。手を伸ばし、エムアの手を取る。
「エムアの知り合いを集めて祝うデス！」　
「そう来ますか」
　怪しい月の金色した瞳をくるりと丸くし、いつものwonder smileを浮かべるエムアに、トワは当然のように頷く。
「オイワイ事は皆でやる方が楽しいと思うマス、しー」
「ゲームと同じですね」
「エムアなら集まった皆でsolution of a riddle……なーぞなーぞ？　なぞなーぞ大会出来ると思うデス。遊ぶことに変わりないと思うマス！」
「ふふ、謎掛けも楽しいですよね」
　エムアの手を引き、とりあえず目についた方向へ歩き始めながら、トワは宙を見上げる。エムアの友達はどこにいるだろう。
「人狼どーこー会ならエムアも面識あるマス、まずそっちから行くデス！」
　寝子島カルチャーセンターで開催される人狼ゲームでよく顔を合わせるメンバー、来島アカリの顔がパッと思い浮かんだ。でも、ここからどう行けば皆に会えるだろう。と言うかそもそもここは何処だろう。
　迷子を迷子とは決して思わず、トワはエムアと真っ直ぐ向き合う。
「そのまえにー」
　言うなり、両手でエムアに抱きつく。
「トワからhappy birthday to エムア！　デス！」
　とびきりの笑顔でエムアを祝ってから、
「第一問！　じゃじゃん！」
　方向音痴なトワは誕生日プレゼントの代わりとばかり、とっておきの謎々を披露する。
「トワとエムアはどの道を通ったら皆の所まで行くか！　デス！」

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２月の★ハッピーバースデー

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