【明かされた影の思い出（委員会編）】

　放課後の部活動も開始され、各委員会も同じように行動を起こしていく。
　そんな中で、保健室からは担当教諭である鷲尾 礼美が退出した後、添木 牡丹は一人作業を行うべく保健室に残っていた。
「鷲尾先生はやっぱり知らなかったんですねぇ……ウフフ……」
　各薬品や治療道具をある程度整理し終え、牡丹は鞄に忍ばせていた【影】の新聞を取り出す。
　礼美にもそれとなくこちらの新聞の存在を匂わせてみたのだが、礼美自身がこちらの新聞に興味は無く、光側で取り上げられた千鶴の記事の方で満足してしまっていたのだ。
「先生に余計なお手間を掛けさせる必要なんてありませんからぁ……これで、少しは悪い事をする人が減ってくれるといいんですけどねぇ……」
　なんとも言えない忍び笑いを牡丹は顔に浮かべ、新聞へと目を落とす。
　――千鶴が提供した新聞とは別に、匿名での保健委員からのお知らせ。
　おっかない記事の内容と共に、牡丹は保健室の机に新聞を置き、残った分の整理を終わらせていく。

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とある保健委員から注意報

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　新学年になって約二か月…皆様、いかがお過ごしですか。
　さて、保健委員として私、一言申し上げておきたい事があります。

　…皆さん、最近暴れすぎじゃないですか？

　ここ最近の寝子島は超常現象や事件が頻発してますがそれにしたって怪我や器物破損の類が多く、保健委員としても対処に困っております。

　最たるものではこの前の保健室半壊事件…あれにはほとほと困りました。
　……今でも思い出すと腸煮えくり返りそうです……ウフフ。

　つきましては、個人的にそのような迷惑行為を働いた人にはお仕置きしに行こうと思います。

【お仕置き内容】
１：保健室の備品を損壊させた場合、強制的な奉仕活動
　　当然、ただの奉仕活動ではありません。
　　一切の手抜き無く、私本人がしっかりと監視した上でやっていただきます。
　　手抜きをした場合は……そうですね、生爪を一枚一枚はが（以後修正されて読めず）

２：保健室の一部及び半壊させた場合
　　一度例がありますから、こちらは容赦しません。
　　肉体労働なんて生易しいものじゃありませんよ？
　　まずは袋を頭に被せて、視界と呼吸を奪ってから……ウフフ、その後はお楽しみです。

　まだまだ考えていますが……悪い子の皆さん……もし、保健室に何かするつもりなら、覚悟してくださいね？

　それでは皆さん学生生活を楽しんでください……ウフフ

記事提供：匿名の保健委員

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【明かされた影の思い出（部活編）】

　部活動が開始され、校舎外が騒がしくなり始めた頃、水泳部である鏡箕 萌は近々迫るプール開きを前に筋力トレーニングにいそしんでいた。
「プール開きも近いし、今の内に色々やっておかないとね！」
　水泳部の本番であるプールは、少し早い６月から９月までの使用が許可されており、これ以外の水泳部の活動では、近場の施設を利用するか、もしくは学校内で筋力や体力をつける事が目的となる。
　その為に、萌はこうしてせっせと汗を流していたのだ。
　――だが、そんな萌にとって少々予期せぬ自体が発生していた。
「……なんか、今日に限って色々視線を感じるよね……？」
　水泳部の部員達と共に行うトレーニングだというのに、今日はなぜかギャラリーの数が多い。
　プールが開始されれば、確かに水着目当てでギャラリーが増える事もあるだろうが、今はジャージ姿であるにも関わらず。
　不思議そうな顔をする萌ではあるが、その原因である【影】の新聞を萌は読んでいなかったのだ。
　――そこに載せられた記事と一枚の写真。
　なんともナイスショットな、健全な青少年をちょっとばかり興奮させてしまうこの記事を。

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スクール水着～そこには夢がある～

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　スクール水着というものは素晴らしい。
　成人している男性にはノスタルジックなものとして映り、そういった思い出のない人には憧れを感じさせる。
　世の男性にとってスクール水着というのはナニからアレまで使える素晴らしい題材であると考える。
　スクール水着にリビドーを感じる人はきっとこれを読んでいる人の中にもいるはずである。

　そこで今回、こういう新聞が出ると聞いて、私は皆さんにこの思いを伝えるため水泳部に赴いたのだ。
　新聞部を偽って写真を撮らせて欲しいと言ったところ、一人の女の子が協力してくれることになった。
　最初は泳いでるところなどを撮らせてもらい、そこから徐々に普通新聞では使わないであろうアングルなどを織り交ぜて撮らせてもらった。特に疑問は持っていなかったようである。チョロい。

　というわけで、撮った写真の中から1枚だけ、一番良かったと思うものを投稿しよう。
　きっとこれを見た男性諸君はスクール水着、そしてちらりと見える日焼け後に様々なものを感じてくれることだろう。
投稿された写真【被写体：とある水泳部員】
　尚、後日記事が没になったので写真は使われないという旨の手紙を出しておいたので写っている本人はここに載っていることを知らない。
　口外せぬよう気をつけたし。

記事提供：匿名

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【明かされた影の思い出（部活？編）】

　放課後の学食内。
　そこに、一人ふんぞり返るように椅子に座り、【影】の新聞を読む生徒の姿があった。
「ふふ、いいじゃないですか……」
　微かに笑うその顔には、普通にこそしていればご令嬢とも言える側面が垣間見える。
　しかし、ここに居る生徒――岩国 ソワカにとっては、そんな側面など、どうでもよかったのだ。
「ここ最近はちょぉっとばっかり影が薄かったですからねぇ。ここで一つ、アピール出来るのはとても、そう、とても重要な事なのですよ！」
　ガタンと椅子を鳴らし、ソワカは立ち上がる。
　――新聞に提供した記事の内容は、自らが設立した【寝子島☆美食クラブ】に関してである。
　とはいえ、美食クラブの名は世を忍ぶ仮の姿。
　果たしてその実体は、裏で画策する【寝子島征服】を目的とした組織母体であった。
　――実際は、行動そのものはギャグの域を出ない範囲ではあるが、当人達は至って真面目に考えているのだから手に負えない。
「さぁ、私が、私たちが奏でる劇を、そ～ろそろ開かなければならないでしょうね……キャハハ！」
　喜劇、悲劇。
　まとめて全部喰らい尽くし、そして自らも奏でる。
　ソワカにとって、それらは生きがいであり、何よりも重視すべき行動の一つであるのだ。
　学食内に響く声とあわせ、ソワカと美食クラブは更なる行動を開始すべく、動き出していた。

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寝子島☆美食クラブ暗躍す！

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　さて、この記事を読む生徒諸君は美食クラブの名を聞いた事はありますか？
　無い？　あー、聞こえませんね。
　当然、そこは【ある】と答えるべきです。えぇえぇ、間違いなく。

　かのネコノメとのイザコザを覚えている生徒は少なからず居るはずですよ？
　雄雄しく立ったソワカちゃんの雄姿も、しっかりと目にしたでしょう？
　この記事を読む皆にもその光景がありありと！ 浮かんでいるはずです！

　苦々しい事に、ネコノメの殲滅には至りませんでしたが、私たちの実力はしっかりと見せ付けられた事は明白ですね。

　さて、最近はおとなしかった我が美食クラブですが、ここに一つ宣言を行わせていただきましょう。

【我々はこれからも、寝子島征服を諦めなぁぁい！】

　美食を征服し、尚且つそちらの目的も重視します。
　クラブに属する者達は努々忘れる事無く、まずは足がかりとしてこの高校を征服を目的としてくださいね。

　さぁ、我が美食クラブの前にひれ伏す準備は出来ましたか？
　部屋の隅でガタガタ震える心の準備はＯＫ？
　楽しい楽しい、美食の時間はすぐそこまで迫ってますよ……キャハハ！

記事コミュニティ：寝子島☆美食クラブ
記事提供：岩国 ソワカ

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【明かされた影の思い出（ろっこん編その１）】

　部室棟内、間借りしているコスプレ部の部室内で、栖来 衣夢は今日も今日とて私服用のコスプレ衣装を選んでいた。
「ん、こんな感じね」
　衣夢にとって、コスプレとは趣味であると豪語しているが、実際には生活の一部となっているのは明白である。
　何しろ、コスプレする際に、そのキャラクターになりきるのは当然とし、必要であればなりきる為の肉体作りも惜しまないのだから。
「……あぁ、そういえば」
　今回着る衣装に目星を付け、いざ着るといった段になって、衣夢の視線には机の上に置かれた新聞が目に入る。
　先ほどまで居た信彦が置いていった【影】の新聞であったのだが、衣夢はまだこれに目を通していなかったのだ。
　そして、衣夢もまた、この新聞に記事を提供している。
　初めてろっこんを使った、思い出深いあの時の事を――

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お魚…ではなく、答案用紙をくわえたドラ猫を追いかけることになった事件

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　とある放課後、教頭先生が持っていた学力テストの答案用紙がボン太に奪われた。
　奪われたのは点数が良くなかった人の分らしくて、勉強が苦手な人は大慌てで追いかけていったわ。
　ののこの答案用紙も奪われちゃって、それで助けを求めてたから私も協力することにしたのよ。

　商店街を右往左往したり、色々策を講じたり、女湯に猫が乱入して男子も乱入してきたり…本当に色々あったわね。

　私は張り込みをして、ボン太を尾行して住処を探り当てることにしたの。
　まぁ、ボン太の住処を見つけたには見つけたんだけど、ボン太はすぐ居なくなって、代わりに奇麗な猫が居座っていたわ。
　あれ、今思い返してみればテオよね。何であそこの居たのかしら…

　ろっこんの力を初めて使ったけど、中々良い気分だったわ。
　まぁ、慣れてないせいか逆に振り回されてる人も結構いたみたいだけど。

　あれから２ヶ月…まだ、それだけしか経っていないのね。
　ろっこんには大分慣れたけど、起こる事件はドンドン大きくなっているわ。
　フツウを守る…思った以上に大変ね。

記事提供：栖来 衣夢

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