【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）｜リアクション

【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）

結：今日もほっこり、蟹日和

　蟹を湯掻いた後、一足先に戻った者たちは其々の拠点へと戻る。

　その中の１組である本居陽毬と水守流は早速茹で蟹をたんのうしていた。
「少しわけてやるから、俺の分全部もってくとかなしだかんな？」
「わかってるわかってるー」
　そんな遣り取りをしつつ自分達の蟹を確保した２人は……早速無口になって蟹の身を出していた。陽毬はのりのりで豪快に皮を剥ぎ、星の力でちょいと炙って焼き蟹に。実にいい匂いが鼻を擽る。
（やっぱ蟹の身をほぐす作業は……）
　と苦労しながら身を解していると、皿に載せた分が無い事に気付いた。
「って横から掻っ攫うなーっ！」
「ひゃいっ？！」
　つっこみを喰らい、変な声を上げる陽毬。
「大丈夫！　すっごく美味しいから！」
「理由になるわけねーだろ！　ったく、蟹味噌はやらねーぞ」
　いい笑顔で答える陽毬に、ジト目で返す流。だが、陽毬は躊躇わない。
「頂戴」
「だめにきまってんだろ！　お前はお前でやれ！」
　しばし睨みあう両者。この後、めちゃくちゃ蟹争奪戦に突入するわけだが、傍から見ればじゃれあっているようにしか見えない。
「騒ぐのも、程ほどにな」
　と、旅鴉月詠が苦笑交じりにそう言った。そう、ここは月詠が開く『カフェ・迷い猫』なのである。
　普段酒場があるが故夜は閉める。だが、本日は蟹を捌きたいので臨時営業。酒場や業務提供している宿泊施設には宣伝してあるし、翌日は休業日と決めている。問題は無い。
　慣れた手つきで蟹を解体する様はまるで宝箱を開けるよう。彼女は材料へと蟹を解体するとクリームパスタやオムレツ、クリームコロッケを作った。
　その他にも他の魚介を一緒にピラフやスープにしていた。
「今日は、これらがなくなるまで開店しているよ。食前食後に当店自慢のブレンドコーヒーもどうぞ」
「なかなか商売上手だよな」
　流が陽毬から死守した蟹味噌を味わいながらそういえば、陽毬は自棄になって「クリームパスタ大盛りでー！」と言っている。２人の分の蟹はまだあるのに、と月詠は肩を竦めながらも注文に応じる。
「っと、こっちの温泉卵も美味いぞ。食うか？」
「食べる！」
　流はちょっと拗ねたように見えた陽毬へ温泉卵を勧めると、彼女はさっ、とその１つをとって器によそう。それに醤油をたらし、とろり、と口にすれば、愛らしい笑みを零す。
（さっきとはえらい変わりようだよなぁ）
　なんて思いながら、流は蟹を食べ続けるのであった。
　近くでは、第五階層から帰ってきた鈴野海斗もまた、まったりしつつ蟹をちゅるちゅる食べていた。鍛錬で疲れてくったくたな彼は、ゆるゆるモードである。ちなみに、聖なる木の実ジュースも一緒に頂いている。
「はぁ、美味しいっちゃ～」
　と湯で蟹を食べた後はピラフも注文。今日はとことん食べられそうなほど空腹である。
「ゆるゆるなのに良い食べっぷりだねー」
　陽毬が苦笑すれば、海斗はふにゃ、と笑って「疲れたっちゃからねー」と頷く。そんな様子に「起きていてくれたまえよ？」と月詠はくすり、と笑った。
　そこへ訪れたのは御剣刀。第四階層での手伝いでくたくたになった刀はすぐさまカウンター席に座った
「ちーっす、旅鴉。蟹くれ、蟹」
「はいはい。今、ピラフができた所だ。大盛りでいいかい？」
　月詠に問われ、頷くと刀は早速大盛りのピラフをもりもりと食べる。そっちに面白い話はないか、月詠が問えば、刀は苦笑した。