【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）｜リアクション

【星幽塔】おつかいみんなでできるかな？（茹で蟹編）

「今日は、けっこう忙しかったよ。よく1人でやってるなーって思った。第四階層のあの街は……」
　刀は今回の仕事のことやシドニウムから聞いた竜の話などをし、月詠は料理しながらソレを聞く。その楽しげな語り口調に海斗も陽毬も、流も聞いていた。
「こっちはリブラスさんに戦い方とか指導してもらったっちゃよ。それで、第五階層は……」
　と海斗も語り、第四・第五階層の現状を知った面々はとりあえずは平穏なんだな、と安堵した。
　その後も『カフェ・迷い猫』には蟹料理を求めて人が集まり、賑わったようだ。

　『カフェ・迷い猫』が賑やかになっている頃。『猫島亭』もほのぼのとした賑わいを見せていた。
「来てくれて、ありがとな」
「こっちこそ、誘ってくれてありがとう」
　来島アカリに誘われた鴻上彰尋は笑顔で礼を述べる。
　台所を使っていいから何か作ってほしい、とアカリが頼めば、彰尋は「いいよ」と慣れた手つきで蟹のパスタとサラダ、蟹の甲羅を使った蟹グラタンを作ってくれる。その手さばきといい、出来栄えといい、見事な物。アカリは思わず目を輝かせる。
「さっき茹で蟹食べたのに、腹が減るな……っと？」
　良い匂いが漂う中訪れたのは、ポニーテールを揺らした獅子目悠月。傍らには、フランチェスカもいる。実を言うと、悠月が誘ったのだ。
「あぁ、いらっしゃいませ！　ようこそ、『猫島亭』へ！」
「こんにちは。悠月さんに誘われて、遊びに来ました」
　フランチェスカがにっこり微笑む。突然の来訪にびっくりするアカリと彰尋。
「誘ってみた」
「いや、それはわかったけどびっくりしたーっ！」
　悠月がにっ、と笑い、それにアカリは思わず言葉を返す。そんな２人の様子にフランチェスカと彰尋は思わずくすくす笑う。
「立ち話もなんだし、食事にしよう。まだまだ料理はあるから」
　彰尋の言葉に頷き、４人で食卓を囲む。和やかな食事に、悠月の歌が混じって楽しい宴となり、和気藹々とした空気が流れるのであった。
　まぁ、たまにアカリと悠月が言い合ったりするのはお約束なのだろうか？　フランチェスカは「喧嘩するほど仲の良い友達ですね」と笑い、彰尋は苦笑する。悠月とアカリは「「ちがう」」と思わず声を揃えて否定し、フランチェスカはやんわりと微笑ましげに笑った。

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　私は、街角を早歩きで進んでいるとき、楽しげな声を聞いた。店の中では見知った顔の冒険者達とフランチェスカさんがわいわいと食事をしている。
（楽しそう）
　ハンドクリームのケースに書かれた猫の模様が可愛くて見とれていた。第二階層の温泉も気持ちよかったし、茹で蟹梱包も楽しかった。
（でも、ちょっとのんびりしすぎたかも）
　いそいで『ねこよろず』に帰ろう。きっと、あったかい皆が待っている。

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　一方、こちらは『ねこよろず』……の一角。お店では蟹殻でつくったグッツやかにフォーク、キッチンバサミなどが売られていた。その他にも蟹から作られた田畑用の肥料に切り出しレジン加工のアクセサリーにストラップ、金属と組み合わせた軽い部分鎧、も用意されている。イートインでは蟹スープが無料で振舞われ、色んな世代に好評だった。
　ちなみにサプリメントは女性に好評で、けっこうな売れ行きだ。店員の獣人、アニさんとオトさんもこれには驚いたようである。

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