【４周年記念】異世界ばっひゅーん｜リアクション

【４周年記念】異世界ばっひゅーん

　広々とした部屋の床に座って白真白がカードゲームを楽しんでいた。
「この局面は難しいわね」
　大きな胸の上で腕を組み、星の図柄のカードを見ながら思案する。
　好守と思われる手を打ち、わくわくした顔で新たなカードを捲った。
「予想が当たったわ」
　喜びの声を上げた。急に動きが活発になる。カードの選択は速くなり、カードの山はみるみる小さくなった。
「最後の一枚ね」
　カードを表に返した瞬間、両手を高々と上げた。白いドレスに包まれた胸が躍る。
「ミッションコンプリートよ！」
　長い間、床に座っていて少し冷えたのか。側に置いてあったベージュのカーディガンを羽織る。
「この新作、本当に面白いわね。もう一回、やろうかな」
　カードを集めてシャッフルを始める。

　足元から風が吹く。自然に両腕が上がってカードがひらひらと空を舞う。

「え、あれ？　ここ、どこ？　私、落ちてる！？」
　飛び散るカードを無視して下に目をやる。ぽかんと口を開けたまま、左目を擦る。もう一度、じっくりと見て震えた。
「ち、地表が全然、見えないんだけど！」
　周囲に助けを求めるような目を向けた。同じような境遇の人々を見つけて、あれ？　と言葉が漏れた。
　――あの人、笑っているみたい。あっちはカップルなのかな。楽しそうに空を飛んでるね。
「……慌てる必要はないのかも」
　強張っていた表情が一気に緩んだ。
　そこに獅子島市子が胡坐を掻いた姿で落ちてきた。
　――なんかクールでカッコイイかも！
「お姉さんも落下中ですね」
「まー、そんなトコ。あんた、変わった目の色してんなー」
「今日は気分で金色にしてみました。どうです、って落ちるの速くないですか？」
　上にいた市子は易々と真白を追い抜いて下にいる。
「あんた、スカートの下、どうなってんだ？」
　指摘された途端、慌ててスカートを両手で押さえた。
「な、なんでもないですよ。本当に」
　そっかー、と間延びした声で市子は落ちていく。間もなくして見えなくなった。
「ああ、お姉さんが……」
　未練がましく伸ばした片手を引っ込める。諦めてスカートの裾を押さえた。
　――どうしよう。こんな空でスカートなんて。下から見られたら……。
　顔を赤くしてじたばたと暴れる。その行為で身体が回った。逆さまの形で顔に風をまともに受ける。目に沁みるのか。顔を背けた。目にしたスカートは上手い具合に窄んでいた。
「そうよ、この手があったわ！」
　真白は手足を使って飛んだ。受ける風でスカートは閉じる。中を見られる心配はなくなった。
「この状況を思いっ切り楽しんでやるんだからね！」
　声を張り上げて笑顔で飛んだ。笑い声まで上げて大空と戯れた。