らっかみ桃太郎伝説｜リアクション

らっかみ桃太郎伝説

●モモタロウ・アクト５
　鬼ヶ島は地獄のような場所と聞いていたが……。
「ウグルアァアァァァァオォ！！」
　商事の裏から大声を出して威嚇したあと、夏朝は戸を突き破って鬼の顔面にネコパンチ。
　更にネコキック。
　更にネコひっかき。
　更にネコ甘噛み。
　更にネコ転がり。
　更にネコまるまり。
　更にネコうとうと。
　鬼たちがきゃーかーわいーとかいって猫じゃらし片手に寄ってきた所にネコ回し蹴りで転倒させてから柱に登ってネコアピールからのネコフェニックススプラッシュで鬼を殲滅していた。
　その横では亮扮する世紀末ジジイが芝刈神拳とかいいながら鬼をひでぶっていた。
　更にその横ではまほろがお腹すいた人におにぎりを配ってはお茶を入れたり自分もおにぎりまぐまぐしたりと半径２メートルくらいの平和空間を作っていた。
　かと思えばその横ではバニー莉鳥が柱にくくりつけた鬼めがけて釘バットを構えていた。
　昔懐かしき一本足打法でバットを振り上げ。
「せっ！」
「ぎゃみん！？」
　振り切ってから、莉鳥は前髪を指でかき上げた。
「血塗れバニーとは、私のことよ」
「あわわわわっ、思った以上に地獄めいた所なのだ鬼ヶ島！　来るタイミング間違えたかもなのだ……！」
　襖の隙間から様子を見ていた後木真央がカタカタ震えていた。
　屋内でこの有様である。
　外はもう地獄どころの騒ぎじゃあなくなっていた。
「鬼ヶ島なのに、襲ってきた人のほうが鬼なのだ……」

　さて、鬼っぷりについて詳しく紹介していくことにしよう。
　このパートだけ異様に流血描写とかあるから、苦手な人はページを飛ばしたり両手で目を隠して指の間からチラッチラしててね。

「桃太郎どもだ！　一人残ら叩き殺せぇ！」
「「おうっ！」」
　金棒を持った無数の鬼たちが突撃をしかける。
　対するは、たった五人の桃太郎。
　すらりと刀を抜く、御剣刀。
　鬼の群れが５メートル圏内に入った瞬間に地面を蹴る。
「この刃が届くまで、世界よ凍てつけ！」
　瞬間、彼を取り巻く世界の全てがスーパースローになった。
　否。彼自身が世界の理を超えて肉体や精神を加速させているのだ。
　鬼の間をジグザグに駆け抜け、振り抜き姿勢のまま停止。
「加速、完了」
　彼の背後で次々に血しぶきを上げて崩れ落ちる鬼たち。
　一方で、鬼の群れめがけて小銃（ＡＫ４７）を向ける八神修。
「銃は剣より強し、だよ」
　右から左に掃射。
　戦国にタイムスリップした自衛隊のお話さながらに、金棒を持った鬼の群れなど鉛の弾幕にかかればよく叫ぶ的にしかならない。
　被弾した鬼たちは呻きながら転倒。
　だが鬼とて伊達ではない。仲間のしかばねを飛び越えて殴りかかってくる。
　刀を抜いて格闘に移る修。
　そんな彼を助けるように、零の刀が鬼の腕を切り落とした。
「さすがは鬼の本丸。雑魚ばかりでキリがないな」
「首魁を落としたいところだけど」
　零と修は頷きあうと、仲間に合図を出して走り出した。
「ここは任せた。１０以上倒したら飯を奢るぞ」
「任されたよ。忘れないでね？」
　鬼の攻撃を右へ左へ華麗にかわし、頸動脈や足の腱などを的確に切断しては殺していくサキリ。
　彼は海斗へと振り返った。
「抜刀、突撃準備よし！」
　海斗は軍刀を握り込むと、鬼たちへと言葉通りに突撃した。
　振り下ろされる金棒を、刀のスイングで強制的に跳ね上げる。
　更に腹を切りつけ、背後からタイミングを伺っていた鬼の懐へと潜り込む。
　胴体を柱にみたてぴったりと背後へ回り込み、背中から刀を突き刺す。
　仲間ごと殴ってしまわぬようにと躊躇した鬼たちの間を抜けるように右へ左へ切り払い、残った鬼による大上段打ち下ろしを水平に翳した刀身で受け止める。
　ぐい、と衝撃を一度吸収。
　相手のバランスを前のめりな形に誘ってから、腹に大胆な蹴りを叩き込んだ。
　思わず蹴り飛ばされる鬼。
　転がった所を、サキリと刀が素早くトドメをさした。
「二人は行ったようだけれど」
「ここは敵だらけだべ」
　周囲を見回すと、鬼たちがじりじりと取り囲んでくる。
　刀は鬼たちを見回し、小さく笑った。

　一方こちらは鬼ヶ島のボス、スーパー鬼将軍がおわします屋敷の奥である。
「クククよくきたな桃太郎たちよ。もし仲間になるなら世界の半分をお前に」
「スーパーハイパーナイツオブラウンドアタック！」
「まだ喋ってるのに！」
　会話中の鬼将軍の額めがけて小銃を乱射する。
　同じく零は弾幕が止んだタイミングで飛び込み、鬼将軍の首を切り落とした。
「おぬしの血の色は何色だ……」
　背筋を伸ばして立ち、瞑目する零。
　刀を振り、壁に血の放物線を描いた。

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