らっかみ桃太郎伝説｜リアクション

らっかみ桃太郎伝説

●モモタロウ・アクト３
　茶屋のベンチで、まほろがおにぎりをじーっと眺めていた。特に食べるでもなく転がすでもなく、かといって他にやることもなくといった具合である。
　もういっそ観光でもしようかなと席をたった所で、一匹のネコがやってきた。
「にゃーにゃー」
　思いっきりネコの着ぐるみ姿の恵御納夏朝である。
　ということでネコ（役：恵御納夏朝）は、ベンチの下でにゃーにゃー鳴き始めることにした。
　でもってここにあくどい商人がやってきて高価な皿からご飯を食べているネコを見てこりゃあ店の主人め皿の価値を知らないぞってんでネコを妻が欲しがるんだと言い張ってネコと皿をセットで二両で買おうとするが店の主人はネコを渡して皿だけ取り返し初代柿右衛門の名品でございます故とくるものだから商人は怒ってまくし立てる。なんだって野良猫なんかに名品で飯を食わせるんだと、ここで店主がこうしておりますと、時々猫が二両で売れるんでございます。と、これが有名な落語『猫の皿』でございますね。今の話と全く関係ございませんね。
「にゃー、にゃー」
「わっ、恵御納さんですよ！　恵御納さんがにゃーにゃーしているのですっ！」
　茶屋を指をさしてぴょんぴょんはねる美咲紀。
　修はまあ落ち着けといってきびだんごを食べさせると、夏朝へと向き直った。
「にゃーにゃー」
「恵御納、やっぱりネコになっていたのか」
「にゃー」
「犬も猿もキジも見つからなかったが、ネコでもいいかもしれないな。同じほ乳類だし……」
「お腰につけたきびだんご、ひとつ欲しいにゃ」
「しゃべれるのか！」
　だったら最初から喋っておけ、とは言わない。
「だめ？」
「ひとつと言わず一袋食べるといい」
　よーしよーしといって夏朝の頭をネコみたくなで始める修（なにげにレアケース）。
　一方の刀は、お供にネコばっかり増える現状に少々不安を感じていた。
「犬や猿なんて贅沢は言わない。せめて別の動物が出てきてくれないか……」
「えっと」
　茶屋のトレーを手にたたずむバニーガール（役：椎井莉鳥）。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……おねがい、なんか言って」
　莉鳥は顔を覆って背を向けた。
　一方の刀は表情も変えずに黙って見てるだけなので、いたたまれないったらなかった。
　なんつっても古式ゆかしいバニースタイルである。
　黒い光沢のあるレオタードに網タイツ。ハイヒールとウサギの耳までつけた例のやつである。
　このタイミングで『ウサギはつねに発情期がある＝私はいつも発情しています』というサインがバニーガールの発祥だという話をしようかと思ったけどこれしないほうがいいね。
「お供にするなら早くして」
「ああ、きびだんごしかないが」
「それでいいから……」
　今にもめくれそうな胸元を腕で隠し、莉鳥は店の奥から釘バットを引きずり出してきた。
　かくして、桃太郎はネコとネコとウサギをお供に加えて鬼ヶ島を目指したのであった。