らっかみ桃太郎伝説｜リアクション

らっかみ桃太郎伝説

●モモタロウ・アクト２
　おじいさんがおばあさんとなんやかんやしたらなんやかんやで桃太郎が鬼退治の旅に出ました。
「展開が早いな」
「途中のキャストがほぼいないからな」
　ＲＰＧでいう最初の村で最強くらいの装備を調えた桃太郎兄弟（兄役：御剣刀、弟役：八神修）は村のそとをふらふらと歩いていた。
　ぴたりと立ち止まる修。
「待て、なぜ俺が弟役なんだ。確か同い年の筈だったよな……ええと、御剣」
「そうだったかな。けれど生まれは三ヶ月ほど先だ」
「釈然としないな……双子で手を打たないか」
「まあ、別にいいぞ」
　おじいさん役の亮が『なんだか似た感じがするから二人まとめて桃太郎でいいんじゃないか』というなかなか不本意なことを言った結果のキャスティングである。
　ということで自己紹介。
「俺は桃太郎。剣道部所属」
「俺は桃太郎。射撃部所属」
「「なるほど日暮の……」」
　直接的な関わりはさほど深くない気はするが、『友人の友人』くらいの距離感にいる二人である。いわゆるスピンオフ作品で共演してもいいくらいの間柄である。
　二人は改めて握手を交わすと、鬼退治の旅を再開した。
「……」
　刀を腰にしっかりと装備した刀は、修の担いでいるＡＫ４７をチラ見した。
「どうした？」
「いや、いいんだ」
　目をそらすように近くの看板を見る刀。
　そこには『有限会社きびたろう』の広告が掲示されていた。
「きびだんご生産工場兼直売営業所……？　桃太郎にはきびだんごは必須か。できるだけ大量に仕入れていこう」
「同感だな。で、それはどこに？」
　二人して看板の右下に注目。
　『わたしが作りました』という写真に、大あくびする作業員（役：日暮ねむる）が写っていた。
「「なるほど日暮の……」」
　二人はキャスティングの意味を理解した。

　きびたろうの朝は早い。
　まだ日も登らない時間から自転車を工場の裏手につけるのはプロ作業員の日暮ねむる氏だ。
　従業員用の扉に鍵を差し込む。
　全ての窓に、明かりは無い。
　――まだ誰もいないんですね。
「ワンオペですから」
　――ワンオペとは？
「ワンマンオペレーション……かな？　とにかく、一人で全部回すってことですよ」
　扉を開き、工場内の照明スイッチを入れる。
　誰も居ない、工場。
　この広さを日暮氏は一人で回しているという。
　――つらくはないですか？
「つらくない、と言えば嘘になりますね。けど今日頑張れば定休日ですから」
　日暮氏は機械の点検表とボールペンを手に取った。
「よし、もうひと踏ん張りだ」
　目に宿る、闘志。
　入念なチェックを終えると日暮氏は早速工場を稼働させた。
　ベルトコンベアが規律正しく動く中、それらを全て管理しているのは日暮氏ひとりだ。
　しかもベルトコンベアのスピードは目で追うことも難しいほど早い。
　――スピードが早くないですか？
「今日はいつもより注文多めだし、ピッチあげなきゃなんですよ」
　質問に答えながらも、流れてくるきびだんごを袋詰めにしてケースに詰めていく。
　やわらかいきびだんごを、ひとつも崩すこと無く一定の個数ずつに分ける日暮氏。
　精密機械以上に精密機械だ。
　プロの技が、光る。
「桃太郎さんたちは早くから鬼退治を始めるから、きびだんごはそれより早くできてなきゃいけないんですよ」
　主役よりも早く。舞台を支える、職人の意地だ。
　表にとめてある原付にまたがる日暮氏。
　荷台にはケースいっぱいのきびだんごが詰まっている。
　と、そこへ――。

「日暮！　ここにあるだけ全部のきびだんごをくれ！」
「えっ……」
「大丈夫だ日暮。日暮なら出来る！」
「えっ……」
　原付のハンドルを二人がかりで押さえる刀と修。
　困り顔のねむるは、ちらりと後ろを振り返った。
「あ、シュー君……」
　マイクとカメラ片手に現われるレポーター（役：椿美咲紀）。
　美咲紀は慌てて鞄から猫耳としっぽを取り出すとわたわたした様子で装着した。
「ももたろさんももたろさん、取材させて欲しいのにゃん！」
　唐突に役を変えてきた猫娘（役：椿美咲紀）である。
　刀と修は顔を見合わせた。
　残念ながらきびだんごの持ち合わせは無い。だって今買いに来ている所だもの。
「日暮！　たのむ！　今売ってくれ！」
「でもこれ配達用だし……」
「大量にネコが要るんだ……！」
「ネコ？　ネコお供にするの？」
「桃太郎さんネコを選んだ理由は？」
「ややこしくなるから今インタビューしないで！」
　それはもうわっちゃわちゃになった。
　こういうときは魔法の言葉で乗り切ろう。

　なんやかんやで、桃太郎たちは大量のきびだんごと一匹の猫娘を得て旅に出たのでした。

このページにイラストを設定する

らっかみ桃太郎伝説

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧