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扉のその向こう
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濃密な花の香が身体を包み込む。
「この匂い――」
視界を淡く優しく滲ませる霧に花の香を辿り、
獅子島 市子
は黒い瞳を周囲に巡らせた。
早朝の風が頬を冷たく撫でて過ぎる。
紗のような霧がたなびき、その間に間に純白に黄金の線持つ山百合の花の群生が顔を覗かせる。
深緑の夏草の中に凛と立ち上がる山百合に目を奪われかけて、
「っとあぶね」
市子は三つ編みの黒髪を揺らして首を横に振る。冬に咲くはずのない花に持って行かれかけた心を取り戻す。
(山中異界……か)
扉をくぐった途端に広がった本来ならばありうべからざる景色に、眼鏡の奥の瞳を細める。
山には異界があるという。ひとならざるものが住まうそこは、時として迷い込んだひとを捉え、永遠にも近い時間を迷わせ閉ざす。座敷童の作り出した此処は、例えばそういう異界なのかもしれない。
花に心を奪われることは危険と判断して、市子は背後に視線を向ける。
「こんなとこに座敷童なんているのかなぁ」
壬生 由貴奈
が眠たげに周囲を見回し、
「蝋燭とか要らなかったかなぁ……まぁ、いいか~」
猫島 寝太郎
が手にした提灯を持ち上げて拍子抜けしたように笑い、
「綺麗な場所だな~」
御剣 刀
が別世界であることを然程気にした様子もなしにのんびりと歩き始める。
「足元注意だねぇ」
防水機能のないスマートフォンをポケットの奥深くにしまい込みながら、由貴奈は百合の群生を分けて進む。
「道があるよぉ」
軽い足取りで進んだ先、湿った腐葉土の上に橋のように渡された板の道を見つけ、左の扉を共にくぐった皆を呼ぶ。
「とりあえず道なりに進んでみっか」
霧に湿気った髪を掻き、市子は由貴奈と並んだ。
「……正直こーゆーの関わりたくねんだけど」
「そう?」
不機嫌にぼやいた途端、隣の由貴奈に見透かすような瞳で覗き込まれ、市子は数度瞬いた。気まずげに視線を逸らす。
「ほっといてもラチあかんし」
「そうだねぇ」
肩を並べたり離したりしながら歩んでいく年上の女子ふたりを視線の先に捉えつつ、寝太郎は誰かが敷いた板の上に足を下ろす。踏めばキシリと音立てる板の道を辿る。
気紛れに吹き寄せる涼風が花の香そのもののような白霧を吹き払えば、眼前に広がるのは山百合に白く埋め尽くされた初夏の緑の谷。
ひんやりとした花の空気を胸に満たし、寝太郎は先へと進む。
やがて道の先に現れたのは、岩間を縫うて白く碧く奔る澄んだ川。板敷の道は河原を転がる大岩を避けるようにして川上へと続いている。
「とりあえず道なりに進むか」
「そうしようかー」
先を行くふたりが迷うことなく選んだ道を、寝太郎と刀も続く。
涼しいとは言え初夏の熱を潜めた空気に知らず額に滲んだ汗を拭い、足を止めず進もうとした刀が、
「お」
岩の隙から霧よりも白く流れ落ちる小さな滝を見つけた。滝の下には、青のような緑のような水の溜まる淵。
「綺麗だなぁ」
つられて足を止めた寝太郎が、水底の石や魚まで見える水の透明さに溜息を吐く。
「河童とかいるのかな」
刀が楽し気に笑み、淵へひょいと手を伸ばす。掌に水を汲んで躊躇いなく口に含んでから、
「……?」
首を傾げた。確かに水を飲んだはずなのに、口の中に水の味どころか感覚もしない。
首を捻る刀を横目に見て後、市子は板敷の道を塞ぐように立ちふさがる、一際巨大な岩を見仰いだ。
「この先には崖しかなかったぜ」
「水源らしい湧き水はここにありますが……」
岩の向こう側から、ふたりの少年がひょいと顔を覗かせる。
先立って歩いていたらしい
楢木 春彦
と
呉井 弦月
の視線を受けて、市子は下手すれば注連縄さえ掛けられそうな雰囲気を帯びた岩の前、市子は膝を折った。
「ワリーね」
日暮からせびってきた菓子を取り出し、岩の前に供える。
「ちょいと邪魔すんよ」
立ち上がって改めて周囲を見回す市子に倣い、春彦と弦月ももう一度視線を巡らせる。
「ん?」
そうして、気づいた。
一際巨大な石の影、川の源流らしい小さな湧き水の脇に祀られた小さな小さな石祠。
「お、祠発見」
春彦が明るい声をあげて近づき、扉もない簡素な祠を覗き込む。祠の中には、両手を合わせて微笑む童子の石像。
弦月が山百合を童子像に供える隣で、春彦は石祠の両脇に据え付けられた灯篭にそっと触れる。石を組み合わせただけの灯篭の中には、油の尽きた火皿。
「火ついてねぇじゃん」
「んー?」
春彦の脇から、由貴奈は灯篭を覗き込む。
「霧の世界の奥にこんなとこがあったんだねぇ」
(灯篭も懐かしいねぇ)
お三夜祭りの夜、月影の夜道に見た幻のような金髪の少女を思い出す。同じ日に見た灯篭の火を恋しがる小鬼をも一緒に思い出して、くすり、小さく笑う。
市子が黙したまま祠の屋根に積もる葉を掃う。巾着袋から取り出した食用油を灯篭の火皿に注ぎ入れ、火皿の脇に転がっていた灯心を差し入れる。
「……湿気ってねーよな」
マッチを擦り、灯篭に火を入れる。そうしてから、そっと祈るように黒い睫毛を伏せる。
(ここが非現実なら)
非現実の世界に満ちるは陰の気。陰の気が満ちるは夜。日暮れから夜明けの間に火を点けることで発動し、炎に霊の未練を払い清める効果を付与するろっこんが、もしかすると働くかもしれない。
炎が鮮やかに揺れる。
「そうだねぇ、お参りくらいはしとこっか」
提げていたレジ袋の中から取り出したペットボトルの水を童子像の前の木椀に満たす寝太郎の脇に膝をつき、由貴奈が柏手を打つ。
「案外、あの家の座敷童は屋敷神か何かだったのかもねぇ」
「やしきがみ?」
「家とか土地を護る神様だよぉ。でも、家から離れた山や森に祀られることが多いらしいねぇ」
刀の問に応じる由貴奈に並び、市子は童子像の前にお菓子と玩具を供える。二礼二拍手一礼、丁寧に祈りを捧げる。
山中にひっそりと祀られ、長年屋敷の住人の祈りを受けて来た、ナニカ。
もしかするとここは最早現実には存在しない場所なのかもしれない。それでも、
(きっと、ここは)
新たな住人に怯えて姿を隠した座敷童の元々の場所な気がした。
「これで出てきてくれたら、ちょっとお話したいねぇ」
童子像に向けて由貴奈が微笑み、
「呼ばれたから助けに来たぞ」
刀が祠に居ると信じて疑わぬ声音で語り掛ける。
(あの時)
百物語の会にあの家に呼び込まれたあの時、あの座敷で己は言った。
――危ないと感じたら助けを求めな
受け取った手紙にあった『たすけて』の文字を思う。求められたのならば、応じたかった。己の放った言葉は、約束は、守りたかった。
「腹減ってないか?」
巾着袋からおにぎりを取り出す。寝太郎が水を満たした木椀の隣に供える。
さらさらと水の流れる音がする。
「うーん」
何も出てくる気配の見えない祠を見つめ、寝太郎は考え込んで腕を組む。思案して伏せた視線の先、手にした提灯が風もないのにぴょんと跳ねるように揺れて、
「え?」
提灯が口を開いた。上下に開いた提灯の中にはキョロリ、血走った目玉がひとつ。
その一つ目と眼が合った。途端、ぱっくり割れた提灯が真っ赤な長い舌をべろりと出す。ゲタゲタ笑う。
「うわぁぁぁぁ!」
大笑いする提灯を悲鳴を上げて放り出し、勢い余ってひっくり返る。
「うわ、わわわ、」
砂利の上に尻餅ついて後退りながら、気が付いた。提灯は提灯のままで地面に転がっている。
「ええー?」
祠の前で目を丸くする皆の視線を浴びて頬を赤く染める寝太郎の耳に、どこからかクスクスと笑う少女の声が聞こえた。また自分だけかもと警戒して周りを見回して、
「っ、……」
祠が背にする大岩の上、ちょこんと座り袂で口元を隠して笑う小さな少女を見た。
寝太郎と眼が合うなり、少女は身軽な動作で高い岩の上から飛び降りる。
「か、確保ー!」
慌てて両腕を差し伸べれば、少女の身は狙いすましたように寝太郎の腕の中へすっぽり落ちて収まった。
「う、うわー、うわー……」
座敷童を抱きとめて動きを凍らせる寝太郎の傍、市子は巾着袋から最後のひとつの菓子を手に寄る。
「よ」
短く言い、微笑む。
固まったままの寝太郎の腕から抜け出し、地面に立つ座敷童の前にしゃがみこんで視線の高さを合わせる。個包の袋から取り出して半分に割り、半分を差し出す。
前髪を結うた黒髪のおかっぱ頭を傾け、座敷童は市子を見、市子の持つ菓子を見る。
「怖かったな、もう大丈夫だぞ」
幼女の姿したナニカを安心させたい一心で、刀は座敷童の頭をぽんぽんと撫でた。
座敷童は黒い瞳を瞬かせる。頭を撫でる刀の手を見、傍らに立つ刀を見上げる。
「あっちも……手紙にあった『こわいひと』の方も、俺の友達が一緒だし、きっと大丈夫だろう」
座敷童の瞳にもの言いたげな色を見た気がして、刀はけれど任せろとばかり強気に笑う。
「万が一ダメだったら、頭が冷えるまで俺が付き合うさ」
その前に、と刀は固い表情の座敷童の頭をもう一度撫でる。
「最近は何をしてたんだ?」
この家を訪れるのは久し振りだった。だから話がしたかった。
問いかけに応じぬ座敷童に微塵も気を害することなく、刀はならばと己の最近の出来事を話す。今朝寝子島神社で踏んだ霜柱のこと、コンビニで買った新作おにぎりのこと、寝子島に起こる様々な不思議な現象のこと。
話すことは正直何でもよかった。話すうちに、座敷童が少しでも落ち着いてくれればそれで充分だった。
「ちゃんと話し合った方がいいと思うよぉ」
刀とは反対側に膝を折り、由貴奈が座敷童を覗き込む。
「なんで日暮さんと夕ちゃんが来たのが気に食わないのか、ね」
由貴奈を見、刀を見、背後の寝太郎を見、少し離れた場所に立つ春彦と弦月を見、座敷童は俯く。
一言も言葉を発さぬ少女の手を、市子は掴んだ。小さな手に菓子を握らせ引き寄せる。岩の上にかいた胡坐の膝に座敷童を座らせ、ぱくり、自分の分の菓子を口に入れる。
「アイツらさ。居場所が欲しいだけなんよ」
膝の座敷童が動かず逃げようともしないことを返事と取り、座敷童を両腕の中に抱え込む。
「オマエの都合とうめーコト間取れりゃーいんだけどな。ムズカシーか」
横から覗き込めば、座敷童は考えこむように菓子を口に含んだ。白い頬が菓子の甘さに僅かに綻ぶ。
「ナシつけてーなら手伝うし」
「……梨?」
「あーいや、話。つーかナニカして欲しいコトある?」
初めて聞いた座敷童の声は、その姿と同じにあどけない子どものそれだった。
「ってもダチに、……友達になるぐれーがせーぜーだけど。ヒマならいつでも遊びに来っしさ」
「ともだち……」
「ソレじゃダメか?」
飄々とした口調の裏で、市子は腹を括る。
座敷童の願いが今の己に易いものならば即実行しよう。もし先々に影響を及ぼすものであったとしても、必ず果たすと約束しよう。
市子の心の底を覗き込むかのように、座敷童は市子を細い肩越しに見遣った。小さく冷たい手が市子の手に触れる。
ややあって、少女の姿した座敷童はかぶりを振った。
「ともだち。うれしい」
黒い瞳を細め、白い頬を上気させて笑う。
「あーそーそー」
少女につられて笑み、笑んだことに少しばかり照れて、市子は僅かにぶっきらぼうになる。
「あたしはシジマイチコっての。オマエは?」
「こん」
子狐が鳴くように、座敷童は名乗った。
「こんちゃん」
市子の膝で笑う座敷童に向け、由貴奈はそっと手を伸べる。
「どうせなら三人で住んじゃってもいいんじゃない? って、うちは思うよぉ」
少なくとも、と由貴奈はあの家で暮らそうとしているふたりを思い浮かべる。あの妖に溢れた黄昏の町から来たふたりは、
「少なくともあの二人は、きみの力を忌避しないし」
「……どんなにおどろかせても、びっくりしなかった。かわりにすごく怒った」
「いたずらが過ぎなければ、ね?」
由貴奈はこんの尖る唇をつつく。穏やかに微笑む由貴奈に膨らんだ頬を撫でられて、こんはたまらず噴きだして笑った。
存在を認められた嬉しさに笑い転げるこんを、市子は抱きしめる。抱きしめられてますます笑うこんの両手を、由貴奈はぎゅっと握った。
「ほら、かえろかえろ。ここで閉じこもっても仕方ないし」
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年08月18日
参加申し込みの期限
2016年08月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年08月25日 11時00分
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