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扉のその向こう
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扉の向こうには、黄昏よりも昏い暗闇があった。
「なにココ?」
冬の凍り付くような寒気とも違う、足首から背筋を這い上るような冷気に、
神薙 焔
は思わず自分の身を掻き抱く。
指先に触れられるほどに濃い闇に眼を凝らすうち、そう広くない通路の左右に置かれた行燈に気が付いた。目を凝らしてやっとのことで捕らえられるほどに頼りない光は、よくよく見れば濡れた岩肌覗かせる天井を支える木製の梁にもところどころに吊り下げられている。
「不気味ね……」
「ッ……!」
呟いた途端、背後に響いた小さな悲鳴に、焔はぎくりと振り返る。背後に立っていたのは、後に続いて真ん中の扉を潜ったらしい、夏草色した髪の少女。学校の廊下ですれ違ったこともあるかもしれない小柄な少女は、緋色の瞳に浮かんだ怯えを一瞬のうちに消し、強気に笑った。
「あ、……あー、ゴメン」
「大丈夫?」
「平気へーき」
燃えるような赤毛の少女にひらひらと手を振りつつ、
桜庭 円
は深呼吸をする。
黒く湿気った岩壁も、地の底までも続きそうな暗闇も、今にも支えが脆く折れて崩れてしまいそうな天井も、――何もかもが、
(そっくり)
幼いあの日に潜り込んだ廃鉱の坑道内と同じだった。
ただひとつ、あの日見た坑道に、灯りはなかったけれど。
それでも、坑道内に灯る明かりはともすれば暗闇に呑まれてしまいそうなほどに極めて頼りない。
「声聞こえて戻って来たんやけど……なんや、座敷童と違うんですか」
暗い坑道にふわりと光が揺れ、行燈を手にした黒髪の少女が現れた。座敷童とも見紛うような着物の少女は、ならばと逡巡さえ見せず踵を返す。
「ああ、僕も行こう」
藍の羽織の裾を翻して続くは、同じように扉を潜って来た
音羽 紫鶴
。
(夕さんは豪快だな)
闇が魔物の如く蹲る坑道の何処かで引っ掴んだらしい行燈を片手に、恐れげもなく道を進む夕の傍ら、紫鶴は続く。
「進むしかなさそうね」
振り返った背後に広がる闇を見、焔は息を吐いた。同意を示して円も頷く。
「……だね」
潜って来たはずの扉はどこにも見当たらず、ただ漆黒の闇が視界を塞ぐばかり。
その闇に一条光が差す。目を射る光はけれど一瞬のうちに消え、
「なんだここ、炭鉱……?」
蒼い黒髪の少年と、赤銅色の髪の少年が姿を現した。少年たちに小さく会釈して後、円は焔と共に闇の奥へと歩み始める。ともかくも、進むしか道はない。
先に進み始める少女たちと、その少女たちより先を行く夕ともうひとりの黒髪の少年を闇に慣れぬ瞳でうっすらと捕えながら、
来島 アカリ
は震える指先を拳に握り込む。這い寄って押し包んでくるような暗闇の密度に思わず深呼吸を繰り返す。
繰り返しても繰り返しても胸が詰まるような気がして、知らず歯を食いしばる。
「流石にこの雰囲気は気味が悪いな」
傍らに立つ
獅子目 悠月
が、いつだって嫌になるほど自信家なクラスメイトがぽつりと零した言葉に何だか梯子を外された気分になって、アカリは思わず毒づく。
「なんだ獅子目、こえーのかよ」
「……っ別に、誰が怖いと言った」
吐き出した自分の声が坑道内に大きく響いて、悠月は低く声を落とす。
「怯えているのは来島、お前の方じゃないのか?」
言いながら、強気な笑みを殊更に浮かべて見せながら、身を守るように腕を組む。
いつか迷い込んだ、あの黄昏の町のようにどこか生活感のある感じならば、祭りのように賑やかな雰囲気であれば、どれほど恐ろしげな容姿の妖が徘徊していようと怖くはなかった。けれど、ここは恐ろしく暗い。ナニカが、例えばひとを恨み呪うようなナニカが潜んでいるようなおどろおどろした雰囲気さえある。
怖くないと言えば嘘になる。
「べ、別に怯えてなんてねーし!」
アカリが震える声で言い放つ。暗闇でも分かる震える指先で悠月を示し、
「自分が怖いからって俺までそうだって思ってんじゃねーぞ」
くるりと踵を返す。そのままひとり歩き出そうとして、立ち止まる。
肩を怒らせたまま、黙って立ち尽くすアカリの隣、悠月は並んだ。視線は合わせず、けれど肩が触れ合うほど近くを並んで歩き、ふたりは奥を目指す。
辿り着いた坑道の奥、一際闇の濃い箇所に向け、夕が行燈の光を掲げている。
揺れる光に照らし出されて、何かに薙ぎ払われたかのように横倒しとなった神棚。黒く煤けた白木の神棚から転がり落ちたらしい丸い鏡が砕け、行燈の光を赤く乱反射させている。
「……ずいぶん荒れてんな」
神棚から落ちて割れた白陶磁器の花瓶から撒き散らされ、朽ちて腐った供花の傍、アカリはしゃがみこんだ。
「こんな惨状じゃ、奉られてるカミサマも怒っちまうんじゃねーの……?」
「……かもしれないな」
割れた鏡を視線の端に入れながら、悠月は頷く。ここに祀られていたものが何なのかはわからないが、神棚が倒れたがために祀られ鎮められていたものが解き放たれ、あの家で悪戯を繰り返しているのかもしれない。
(とりあえずこの辺りをキレイにしてみて反応をみるか)
「そうね、せめて直してあげたいわね」
少年たちに賛同し神棚に手を掛けようとする焔を止めようとして、円は息を吐く。焔に伸ばそうとした手を引き戻し、不安に震える視線を周囲に彷徨わせる。
(あの子は……?)
倒れた神棚も、砕けた鏡も、何もかもがあの時と同じだった。
(夏美)
あの日、あの坑道でナニカに身体を乗っ取られた友人の名を呟く。
(ここは、)
ここは、本当にあの日友人たちと潜り込んだ坑道なのだろうか。
(でも)
あの日の廃鉱に、行燈など灯されていなかった。
(でも、)
それでも、ここはあの場所ととてもよく似ている。よく似せようとしている。
「ねぇ、夕さん」
荒れ果てた神棚を、それを前にそれぞれの行動を取る人々を目前にしながら、紫鶴は黙して立つ夕に言葉を掛ける。
「この家に住むのなら、この神棚も綺麗にしない?」
夕は行燈を地面に置き、考え込むようにしゃがみこむ。
「元々ここは彼女の住処だった」
そこに君たちが来た、と諭されるように言われ、夕は小さく頷く。
いきなり知らない人が来て、自分の住んでいた場所が色々と変えられてしまった。
「怖くなってしまった部分もあるんじゃないかな」
「……そうかもしれません」
神棚の向こうの闇をじっと見据え、夕は息を吐いた。その様子に紫鶴は淡く笑む。彼女たちもきっと気付いてはいたのだろう。対立したままではどうしようもないことに。
「まずはお互い歩み寄ってみるのも良いんじゃないかな」
無理そうだったら、と紫鶴は事もなげに言ってのける。
「僕が引き取っても良いけれど」
不可思議な力を持っているとは言え、小さな少女ひとり。音羽家で養うことなど造作もない。それに、部屋は無駄にある。ナニカが住み着いたところで大した問題はなかろう。
「夕さん」
考え込む夕の傍ら、円が並ぶ。同じようにしゃがみこみ、お久しぶり、と笑いかける。
「うん、お久しぶりです」
ほんの少し気まずそうに笑う夕にもう一度笑いかけ、円は夕の着物の端をそっと掴んだ。
「この家はあの子にとっては大切な場所で、それで、」
振り払われないことに安堵して、今度は夕の指先を掴む。
「取られないかって警戒して必死なんじゃない?」
「必死なんは、……ようわかっとります」
「自分の家で安心出来ないと怖いじゃん」
ね、と顔を覗き込まれ、夕は困ったように目を伏せる。
「必要なのはさ、お互いを知る事かもって」
ちらりと首を傾げて考え、円は夕と繋がぬ方の手を上げる。人差し指を立て、
「今だと、怖いお姉さんと、座敷童で」
夕をさし、暗闇をさす。
「あ、手紙にあったコワいヒトって」
「うちのことです」
焔の言葉に憮然とした表情を見せる夕に悪戯っぽく笑いかける。
「それを、夕さんと、座敷童の――名前、知ってる?」
「ああ、……いえ」
夕は嘆息した。
「名も聞いてへん。あきませんね」
着物の肩を落とす夕が、坑道に入った当初のように怖い顔をしていないのを見て取り、円はひょいと身軽に、跳ねるように立ち上がる。
「……ッ!?」
「……ってナニかいる!?」
神棚の体裁を整えようとしていた悠月と焔がほとんど同時に声を上げた。夕が行燈を手に素早く立ち上がり、光を差し伸ばす。
照らし出されたのは、坑道の奥から這い出て来た煤けたナニカ。
「なんだこいつは」
芋虫じみた胴にでたらめに植え付けた十数本のひとの手足を、貼りついた幾つもの顔を、慣れぬ動作で蠢かせるナニカに、悠月は知らず全身を怖気立たせる。
「って何あの化け物」
円は思わず呟いて、呟いてから気付いた。あの日、こんな化物は見ていない。けれどもし、本当にあの廃鉱の奥にこんなものが潜んでいたのだとしたら。座敷童がその力であの廃鉱を、あの廃鉱に埋まっていたものを完全に再現しているとしたら。
ナニカの恐ろしげな容貌に怯えて逸らしそうになる瞳に力を籠める。知らず歪む瞳に、それでも必死にナニカを映す。
確かめたかった。ナニカの胴体に貼りついた幾つもの顔の中に、あの子の、友人の夏美の顔がありはしまいか。
(それとも)
廃鉱には、幾人もの子供たちが人柱として埋められたと聞いている。貼りついているのは、生きたまま埋められ怨霊と化した人柱の子達の顔なのだろうか。
胸を詰まらせながら見遣ったナニカの胴に、けれど友人の顔は見つけられなかった。
(……なら)
小さくか細く、円は歌う。あの時、あの坑道で友人が歌った歌を。
事情を知る祖父の前で口にした途端、祖父が顔色を一変させたあの童謡を。
震える声で童謡を口ずさむ円の様子に何事かを感じ取ったのか、夕が円の前に立つ。行燈を掲げながら、もう片手で円の手を掴む。
夕の冷たい掌に勇気を得た。恐怖すら呼び起させるあの歌を口にしても、目前のナニカは耳を傾ける仕草すら見せなかった。
違う、そう確信する。
今目の前にいるこれは、あの日友人を奪ったあれとは違う。
(ボクから聞いた話から再現したのかな?)
それとも、あの百物語に聞いた話をもとに別のナニカを再構築させたのかもしれない。
(……この家に起こる『色んな怪異』っていうのは)
いつかのように寝子島の人々を集めて語らせた話を己の力とし、家を媒介にして発現させたものなのだろうか。
「あそぼう」
幼子の声で、ナニカが笑う。
「あそぼう」
「ッ、なんだあれ、」
神棚の一番近くで花瓶に手を触れさせた格好のまま、身動ぎも出来ずにアカリは呻く。目にした途端、闇から生まれたナニカから目が離せなくなった。自分のものとも思えぬほどに嗄れた声を吐き出し、後退ろうとする。一歩後ろに下がって、足がもつれた。剥き出しの岩肌に尻をつく。
(バケモン)
円の呟きが心に大きく響き渡って、瞬間、闇に蠢くナニカの胴体に貼りついた子どものひとりと眼が合った。
無邪気な顔で子どもが笑う。数本の腕が地面を掻く。泥に汚れた爪先がアカリを向く。
「やめ、こっちくんな」
息が詰まる。声が震える。早く逃げなくてはと立ち上がろうとして、
「ひ……っ、」
出来なかった。腕は震えるばかり、足は力なく地面にもがくばかり。
「あそぼう」
視界いっぱいに子どもの顔が映る。ナニカの細い腕が幾本と伸びてくる。いくつもの小さな指先が頬に肩に腕に足に触れる。氷のような指先が腕を掴む。肩を掴む。目前に迫る顔が大きく赤い口を開く。
「あ、やだ、」
心臓の音ばかりが耳の中で爆ぜている。額から流れた冷たい汗が頬を伝い顎から落ちる。その感覚ばかりが身体を支配して動けない。己を捕まえようとする細い腕を振り払いたいのに、振り払おうとしているのに、身体に力が入らない。
「来島!」
背後に悠月の声が聞こえる。聞こえるのに体が言うことを聞かない。
このままでは目の前のナニカに取り込まれてしまう。
「たすけ――」
「来島!」
竦んで動けぬアカリの腕を、悠月は掴む。もう片手でアカリに絡みつくナニカの腕を鋭く払いのけようとする。
「ッ……!」
(合気道だけで助け出すには分が悪いか)
腹に息を落とし、刃の如く吐き出す。落ち着かねばと思うのに、心は焦る。化物じみた目前のこれに呑み込まれてしまえば、アカリはどうなるのだろう。
(放っておくのも寝覚めが悪い)
焦るあまり無闇に喚いて暴れだしたくなる心を、拳を握り込んで抑えつける。
「夕ちゃん! ……だっけ?」
闇の奥から現れたナニカと悪戦苦闘する悠月の背を見、焔は傍らの夕に呼びかける。
「はい」
「アレ何とかかわしてあの向こう側の神棚を直したいんだけど」
「ひきつけときます」
ほとんど無表情にナニカを見据えていた瞳を瞬かせ、夕は事もなげに頷いた。手にしていた行燈を隣に立つ円に預け、無造作にナニカに近づく。着物の裾を引かれるも腕を掴まれるも構わず、ナニカの前にしゃがみこむ。
「僕も手伝おう」
ひらり、白い手を振り、紫鶴が微笑んだ。軽い足取りで闇へと踏み出す。
悠揚とした態でナニカの前に立ち、ナニカが助けを求めるように、襲い掛かるように伸ばしてくる指先を軽々と掴み取る。
「あそぼう」
「外で遊ぶなら良いよ」
円が行燈の光を高く掲げる。ナニカの胴に貼りつく何人かの顔が眩し気に顔をしかめ、何人かが夕と紫鶴を見る。
(遊び相手は選びたいわよ)
ナニカの関心が己に向かぬことを確かめ、焔は地を蹴る。
(それに)
光に照らし出されて尚更濃くなる闇に紛れ、ナニカの背後、倒れた神棚の元へと駆け寄る。
(帰ってゲームで遊びたくて来てるんだし)
毒づきながらも、神棚を立て直す手に惑いはない。煤けた花瓶を拾い、散らばる鏡の破片を集める。
「それを!」
「これ?」
呼びかけられて呼びかけて来た悠月を見遣れば、集めた鏡の破片に向けて必死の形相で手を伸ばしている。
悠月の意図を読み、焔は小さく頷いた。集めた破片のうちに一番鋭い切っ先持つ欠片を伸ばされた手に差し伸ばし、手渡す。
近づく者全てを小さな手に掴み取り込もうとするナニカの腕から間一髪に逃れ、焔はたたらを踏むように後ろに下がった。
焔が逃れたことを眼の端に確かめ、悠月は渡された破片の先をナニカへと向ける。冷たい鏡を掌に感じた途端、心は氷のように冷えた。
「悪いがそいつは玩具じゃない」
言い放ち、アカリを掴む細い腕を破片で切りつける。
「返してもらうぞ」
傷つけられた腕から赤い血を撒き散らし、ナニカが喚く。
「し、獅子目……?」
ナニカが怯んだ隙を突き、悠月は掴んだアカリの腕を引く。よろけるように立ち上がるアカリを半ば引き摺るようにナニカから引き剥がす。幾つもの口から吐き出される喚き声と共、混乱気味に振り回される幾本もの手足を、その手足に込められた力を利用して払いのけ、捌き、受け流し、ナニカの傍を離れる。
恐怖に口を噤んで大人しく庇われ、怯え乱れた呼吸を整える余裕もなく服の裾を控えめに掴むアカリの手を、悠月は片手で掴む。
「離れるな」
振り返らず、ただ低く告げる。
行燈の光を掲げる円の隣に至って、悠月はアカリを背に庇う格好で唇を引き結んだ。守ってやる、という言葉の代わり、清冽な清水にも似た声で聖歌を歌う。ろっこんを発動させ、己を中心として半径一メートルに及ぶ半透明の障壁を作り出す。
「ええ加減にしなさい」
子どもを叱りつける口調で、夕が首や胴にしがみつく腕を叩く。着物の袂から匕首を取り出し、無造作に切り裂く。
「ああ、着物が汚れてしもうたやないの」
不満げに唇を尖らせながらナニカの腕を逃れ、隣の紫鶴の手を引く。整えた神棚の脇に立つ焔の傍まで退く。
容赦の欠片もない夕の様子を見ながら、悠月のろっこんに守られながら、アカリはようやく息を取り戻した。
(……俺、なんも出来ねーんだなぁ)
己を庇って立つ悠月の背を見つめる。知らず、視線が己の爪先に落ちた。
(こんなんじゃ)
戦うどころか守られるだけ。誰かを守るどころか守られるだけの自分は、
(ただのお荷物、だ)
自身を断罪して歪めた瞳に、悠月が片手に握りしめるようにして持つ鏡の破片が映った。
「……なぁ、獅子目」
何も出来ぬ無力感に苛まれた心をどうにもできず、助けられた礼を口にも出来ず、アカリはただ悠月が手にする鏡に指先を触れさせる。
「ちょっとその鏡、貸してくれないか?」
神棚に置いてあった鏡であるのなら、何か不可思議な力がふるのかもしれない。例えばあれを封じ込めるような力が。
割れてしまっていてはそんな力を望むべくもないが、
(あのバケモン、違う姿に見えないかな、って……)
真の姿を映し出したりはしないものか。
前後を挟んで立つ人々のどちらを襲おうか迷っているのか、痛みを与える存在に怯えているのか、ナニカは身動ぎもしなくなっている。そのナニカを見据え振り返らぬまま、ろっこんを発動させ続けるために歌を唇から紡ぎ続けるまま、悠月は鏡の破片を掴む力を緩めた。
受け取った鏡を手に、アカリは一歩踏み出す。悠月と肩を並べる。
円の持つ行燈の光を頼りに、鏡の破片を掲げる。
白銀の鏡の面に映し出されたものは、
「人形、か……?」
「うん、人形だね」
アカリが呻き、円が安堵したように笑う。
鏡を巡らせ見てみれば、人形の周りにはでんでん太鼓に水笛、剣玉、子どもの玩具がそこかしこに散らばっている。
「ここ、本当はキミの玩具の部屋なんだね」
円が過去に話した物語の力を得て、化け物の幻を纏うた座敷童の玩具たちに向け、円は穏やかに語り掛ける。
「……で、そもそもの発端の座敷童のコはどこかしら?」
赤毛の頭を掻き、焔は息を吐く。集めた鏡の残りを神棚に据え、朽ちた供花を花瓶に活け直し、
(あたしクリスチャンだけど)
神棚向けて柏手を打つ。
(こういうモノは大事にしないといけないと思うのよ)
例えこれが、座敷童の見せる幻であったとしても。
「あそぼう」
か細い声で、正体を見破られたナニカが呟く。
「良いよ、遊ぼう」
恐ろしげな幻纏うナニカに向け、紫鶴が恐れげもなく再び近づく。
「僕だけじゃなく、皆ともね」
大丈夫、と腰をかがめ、手を差し伸べる。縋り付くように伸ばされてくる幾本もの腕に、くすくすと笑う。
「ほら、怖くはないだろう?」
「あそぼう」
それしか言葉を知らぬかの如く、ナニカは繰り返す。
「いきなりで驚いてしまったんだね」
もう片方の手を伸ばし、ナニカの胴に貼りついた子どもの頬に触れる。幼子にするように、座敷童本人にするように、穏やかに諭す。
「ここは君の家だったのに、知らない人が来て、色々と変えてしまって、……怖かったんだろう」
でも、と力づけるように微笑む。
「閉じこもっていたら、余計に怖くなってしまう」
縋り付く泥と血に汚れた腕も、芋虫のような胴に面のように貼りついた幾つもの子どもの顔も、何もかもを胸に抱きしめるように大きく腕を広げる。
「行こう、みんなと一緒に外へ」
紫鶴に抱きしめられた途端、恐ろしげな姿したナニカは霧のように解けた。
あとに残るは、幼子が片手に抱えられるほどに小さな、着物纏うた日本人形。
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3人まで
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日常
冒険
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年08月18日
参加申し込みの期限
2016年08月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年08月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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