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扉のその向こう
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花の香と冷えた空気に身を包みこまれ、
呉井 弦月
は雪雲色した瞳を瞬かせた。足元を流れる乳白色の霧を見下ろす。霧の粒がくっついて濡れた指先を持ち上げ、同じく濡れた頬を擦る。
噎せかえるような甘い花の香帯びた風が吹き寄せる。
霧が夏の小川のように煌いて流れれば、そこに広がっていたのは山百合が咲き乱れる花の渓谷。
(何か手掛かりがないかと)
とりあえず左の扉を潜ってはみたけれど、
(まさか)
こんな光景が広がっているとは思ってもみなかった。
濃い緑が茂る急峻な山に挟まれた遥かな空は、白霧に覆われてはいるものの、霧を透かせて鮮やかな払暁の青が見て取れた。
霧が雫の珠となって宿った柔らかな下草を踏み、ぐるりを見回していて、背後に揺れる懐中電灯の光を見つけた。
「弦月じゃん」
電灯の光が一条、霧を輝かせて過ぎるのを思わず追っていて、電灯の主に親し気な声を掛けられた。風が過ぎて、霧が流れる。白霧の向こう、茶色の髪を霧に濡らして立っていたのは、以前、家出した際に潜り込んだこの家で出会ったことのある、
「……楢木さん」
楢木 春彦
の姿に、弦月は目を丸くした。
「よっ、こないだぶり」
戸平の向こうを埋めているかもしれない暗闇を警戒して廊下から拝借してきた懐中電灯を振り、春彦は屈託なく笑う。以前出会ったのと同じ場所で、友人の弟とまた出会うとは思ってもいなかったけれど、
(ココでまた会ったのも何かの縁だろ)
「一緒に行こうぜ」
夏草色の瞳を明るく和める兄の友人に、弦月は素直に頷いた。
「霧で先あんま見えねぇな、気ぃつけて進んでこう」
手にした電灯の光を山百合の渓谷へと伸ばし、春彦は先に立って歩き始める。
兄よりも少しだけ高い背を見上げ、弦月は兄の友人の後に続く。歩きながら周りに視線を巡らせる。艶やかな葉に宿った水滴を霧にきらきらと光らせて、そこここに霧よりも白い花を咲かせる山百合。背よりも高く伸びたものから、腿の高さほどのものまで、様々の丈で開く花の一株のもと、弦月は足を止める。
「ん、どうした」
「……つんでいってもいいのかな」
思案する弦月に対し、春彦は気楽にひらひらと手を振る。
「イイんじゃねー」
「座敷童の子に山百合を贈るのはどうかなと、思ったんですが……大丈夫でしょうか」
「花貰って悪ぃ気のするヤツも少ねぇだろ」
振り返って笑う春彦の人好きのする笑顔に励まされ、弦月は笑みを返した。手を伸ばし、花を一輪折り取る。
花を大切に抱える少年を肩越しに確かめ、春彦は急がぬ足取りで先へと進んだ。草を分けて進んだ先、不意に板を敷いただけの簡素な道が現れる。草露と霧に濡れた靴で左右を山百合に囲まれた板敷の道を進んで、辿り着いたのは黒い大岩が数多転がる澄んだ渓流。
「こういうトコお約束だと上行けばなんかあったりするよな」
「なんか、ですか」
「うん、なんか」
大した確信もなさそうな割に楽しそうに河原を遡り始める春彦の横顔を見上げ、弦月は金色の睫毛を伏せる。
兄の友人と、こんな形で再会するとは思ってもいなかった。
思い出すのは、初対面のあの日。あの時、この家の広間に見た兄の幻に対し、弦月は暴言を吐いた上に蹴りまで叩き込んでいる。
思い出せば思い出すほど、兄弟の中の悪さが露見してしまう行動をとってしまった己が気恥ずかしくて、弦月はますます瞳を伏せた。
「ん、どうした?」
なんかあったっけ、と心底不思議そうに春彦から問われ、弦月は眉を寄せる。
「あの、この間、……」
口ごもる友人の弟を見遣って後、春彦は不意に噴き出した。どこまでも明るく笑いながら、ひょいと手を伸ばして弦月の金の髪の頭を無造作に撫でる。
「この間のコトで気にするコトってなんもねーだろ、弦月は気ぃ回しすぎだって」
困ったような顔して俯く弦月の頭から手を離し、春彦はそっと苦笑する。弦月は怒るかもしれないけれど、
(気にしやすいトコも似たもの兄弟ってか)
くすくすと笑う春彦を見上げ、弦月は赤くなっているかもしれない頬を手の甲で擦る。
「楢木さんは……」
意を決して隣に並んで歩く春彦を見る。
「兄から僕の事を聞いていますか?」
「まぁ、喧嘩してるつーくらいかな」
ゆっくりと慎重に、川のせせらぎを脇にふたりは歩を進める。
所々苔さえ生やした砂利に足を取られぬように気をつけつつ、弦月は小さな息を吐いた。
喧嘩中だということは話していても、それ以上のことは言っていない。
「相変わらずですね、あのバカ兄は」
知らず悪態が口をついて出て、思わずもう一度息を吐き出す。こうなれば、この人に全部ぶちまけてしまおうか。
そういう気持ちになったのは、肩を並べて歩く兄の友人がひどく優しく強い瞳をしているからだろうか。
「バカ兄、なぁ……」
そう言って楽し気に笑う彼が、兄に対しても己に対しても真っ直ぐな瞳を向けてくれると感じているからだろうか。
「兄は、隠し事や不安な事があってもすぐに隠すんです」
捉えどころのない笑顔で微笑み、はぐらかす。心配をかけまいとしているのは痛いほどに分かるけれど、でも、そうされた方の歯痒さを、兄は知らないだろう。
(ずっと)
己が幼い頃からずっと、兄はそうだった。
そんな兄に、ずっと腹を立てていた。
(僕のせいで)
過去に、自分のせいで兄は大怪我をした。その時でさえ、兄は自分のことを二の次にして此方の心配ばかりしていた。痛いはずなのに微笑もうとさえした。
あの笑みを思い出そうとすると、今でも心臓を掴まれたように胸が痛む。吐き気すら催して胃が痛む。
これは怒りなのだと、弦月は信じる。
「いつも僕は頼りにしてもらえなくて……」
兄が将来ピアニストになるのかも、――兄の夢でさえも、兄は弟である己になかなか話してくれなかった。
「弦月」
唇を噛んで俯く友人の弟に向け、春彦は淡く微笑んで爆弾を落とす。
「オマエ実はお兄ちゃん子だったんだな」
「お、お兄ちゃん子……」
絶句する弦月の様子に、春彦は大きく頷く。
「ホントはアイツのコト凄ぇ好きだろ」
「違います、兄の事は別に好きではないです」
むきになればなるほど墓穴を掘る気がして、弦月は口を噤んだ。俯いたまま、ただひたすらに上流を目指す。
先に立つ少年の背を苦も無く追いかけ、春彦は首を捻る。
(だってアイツに頼って欲しいんだろ?)
言えばまた怒られそうな気がした。
(兄貴のプライドからしたら弟にはイイ格好したくなったりすんだろーなって思わなくもねぇケド……)
考えていて、ふと友人の笑顔を思い浮かんだ。顔つきのせいなのか、いつだって笑っているようにも見える、友人の顔。
「でも、そうだよな」
友人を思いだした途端、弦月の感じている悔しさや、怒りにも似た悲しさに思い至った。それは、時折己も感じることのある想いなのだと思う。
「隠されてばっかじゃ腹立つし。一人抱え込まれてソレ気付いてもなんも手出し出来ねぇのが嫌なんだよな」
背後から響く春彦の言葉を耳に、弦月は深く伏せていた瞳をもたげる。霧のたゆたう渓流を見渡す。
「そうですね、……気付いた時には遅かったというのは何度もありましたし……」
兄がひた隠しにしていた兄の苦しみを思い、それにその時気付けなかった己の不甲斐なさを思い、足が竦んだ。
悔恨に身動ぎも出来ず、今にもその場にうずくまってしまいそうなほど丸くなる弦月の背を、春彦は柔らかく叩く。
「大事なヤツだからこそ苦しんでるの見てるだけなのは辛ぇんだろ」
弦月も、友人も。互いにそこのところに思い至っていないように、傍からは見えた。
「で、弦月はその気持ちアイツに伝えたりしてんのか?」
背中を擦ってくれる兄の友人に言われて、初めて気付いた。
兄に対し怒りを示したことはあったけれど、自分の気持ちを伝えたことはなかった。
(何も知らないでいるのは辛い)
胸を塞ぐ怒りの帳がスッと音立てて引かれる。後に現れたのは、
「ああ、なんだ……」
目の前を覆い隠す霧が悉く吹き払われたかのような気がした。
(僕の方こそ、肝心な事を話せてないじゃないか……)
駄目ですね、と悲し気に、けれど胸のつかえが下りたように微笑む弦月の頭を、春彦はもう一度ごしごしと撫でる。
「こりゃ話し合いが必要そうだな」
仲直りしないと、と友人も言っていた。兄弟が互いにそう思っているのならば、ふたりを知る己が一肌脱がずに誰が脱ぐ。
「弦月がその気になったら機会作るぜ」
任せろ、と胸を叩いてみせる。
「はぐらかしたり誤魔化すようなら俺が殴ってやるし」
「楢木さんは兄に容赦ないですね」
力強く請け負ってくれる兄の友人の言い方に少し噴き出して、弦月は息を吐くように淡く淡く、笑んだ。
「いつでも言えな」
「はい、兄とはまた話し合えるよう気持ちの整理をしておきます」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年08月18日
参加申し込みの期限
2016年08月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年08月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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