this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
眠れない夜に <冬>
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
13
つぎへ >>
怯えるように、そっと息を吐き出す。
知らず震えた息が白く凍り、夜空に散る。
(寒いな……)
コートの肩を滑り落ちて胸元に揺れる、月光よりも白い髪を緋色の手袋をはめた指先でつまみ、背中に払う。
色素をほとんど持たぬゆえに血の色を透けさせる瞳に白い睫毛の影を落とし、口元に寄せた手袋の指に息を吐きかける。
陽の光を浴びればたちまち火傷のように熱を持つ白の肌を持つせいで、
桜 月
の外出は大抵が陽が落ちてから。それでさえも日傘は手放せない。
閉じた傘を片手に思うがまま空を仰げるのは、だから月の輝く夜となったこの時間。
以前にも歩いたことのある深夜の時間は、けれど、
(やっぱりこの時間は寒い)
ただ、空気が乾燥しているのか澄んでいるのか、それとも島自体が寝静まっているからか。
(空が綺麗だ)
真白に輝く月を、色とりどりにさんざめく星々を、群青よりもなお蒼く暗い夜空を血色の瞳に映し取れば、思わずその瞳に笑みが滲んだ。
空気は恐ろしく冷たいけれど、この空の美しさが見られるだけで、この真夜中の散歩に価値を感じられる。
静まり返る星ヶ丘の住宅地をのんびりと一人きりで歩く。
閑静な住宅街を真夜中に彷徨うことは以前から時折していた。少し前までは一人きりも散歩も全く平気だったのに、月明かりも闇も誰も居ない道も、目に映るもの何もかもが楽しかったのに、
(寒い、な……)
月光に照らし出されてアスファルトの道に黒く伸びる自分の影に視線が落ちる。
足が止まる。
ひとりきりが、寂しかった。
(前は平気だったのに)
冬の真夜中の空気よりも、胸を締め付ける寂しさの方が酷く冷たい。
影を見下ろす。あの夜、日傘が曲がるまで滅多打ちにした己の影。
あの夜以来、ろっこんを使うことを躊躇っている。己の影を呼び出せずにいる。
(分かっている)
呼べば、影は以前と変わらず己の隣に寄り添ってくれるだろう。己の思うままに動き、寂しさに震える手にその影の手を重ねてくれるだろう。
(でも、……呼べない)
心には、今もまだあの夜に張り付いたきり拭えぬ後ろめたさがある。
己の影から視線を引き剥がす。寂しさや悔恨、己の胸の内に溜まって膨れ上がる様々な思いを吐き尽くしたくて、深い溜息をつく。
夜空に白く広がる己の思いを突き退けるように、己の影からは逃れられぬと知りつつそれでも逃れるように、再び歩き始める。
何も考えぬよう、凍り付いた空気の中を足早に進むうち、
「……?」
月影にふわりと浮かび上がる、温かな色の光を見た。
小さく瞬く。足元を丸く照らす街灯の白い光とは違う、頼りなくも優しい光に惹かれた。思わず足を向ければ、そこは去年の秋に訪れたことのある小さな植物園。光が灯っているのは、園内に片隅に位置する小さな小さな温室らしかった。
「……『ランプの夜』?」
硝子張りの扉に掛けられた小さな看板を見下ろし、月は紅色の瞳を瞬かせる。色鮮やかな翠に溢れた室内のあちこち、暖かそうな火の灯されたランプが設置されている。
入り口付近の小さなカフェカウンターで退屈そうにしていた店員が、嬉しそうな満面の笑みで手招きをした。どうやら今日は深夜営業らしい。
零れる息の白さに、胸に蟠るどうしようもなく重たい気持ちが蘇った。心を淀ませる思いを振り払うように、扉を押し開く。ふわり、暖かな空気と咲き乱れる花と繁る草の甘い香が溢れて頬を撫でた。
店員に招かれるまま、カウンター席に腰を下ろす。
待ちかねたようにすぐさま出される振る舞いの熱いハーブティーに思わず微笑み、礼を口にしながらカップに唇をつける。
花の香のする甘いミルク入りハーブティーは、冷えた身体に染み入るようで心地良かった。
真冬の夜に冷え切った身体をハーブティーと温室の温かさで人心地つけ、月は椅子から立ち上がる。店員にもう一度礼を言い、ランプの光に彩られた温室内の黄色い煉瓦道を辿り始める。
蓮池を渡る石橋の欄干には、花の意匠のランプが置かれている。天井硝子から降り込む夜陰と月光にランプの光が混ざり、花の水面に揺れる。
蓮池を渡りきり、真夜中の温室のあちこちを照らすランプの光に導かれるように歩を進めるうち、ふと灯のない葉陰に迷い込んだ。
月影よりも暗く視界を奪う樹陰を不気味に感じながらも足を止める。真冬の寒さに冷え切って固まっていた体と心が、温室の湿度と温度にいつのまにか緩んでいる。
和らいだ視線をもたげる。
己の傍ら、己の影がいつか立っている。
(呼んだつもりはなかったんだけど)
意識もせぬうち心に強く呼んでしまったことに思い至って、月は静かに静かに、優しい息を吐いた。
草花とは別の異質でおぞましい気配も、光を吸い込む深い闇の色して表情も見えない姿も、何もかもがいつもと変わらない影を月は見つめる。
「ごめん」
小さく、呟くように謝る。
影は反応を示さない。ただいつものように、何事もなかったように、月の傍に在り続ける。
反応を示さぬ影をけれど消さぬまま、寄り添うたまま、月は影と共に真夜中の温室の森を再び歩き始める。
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
13
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
眠れない夜に <冬>
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年06月02日
参加申し込みの期限
2016年06月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年06月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!