【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

　朝に比べて、武道場も一般客が増えてきていた。第５試合は、午後一番に行われる。
『やるからには、全力でがんばろうね！』
　小山内海がスケッチブックに気持ちを書くと、チームメイトの二人も力強く頷いた。出場を決めた日から、ずっと特訓をしてきた成果を見せる時だ。

「桜庭が燃えている……」
　朝練に放課後特訓もする、という桜庭円の決意を聞いたときは、御剣刀も燃えた。
「勝負事なら俺も負けるつもりはない。とことん付き合うぜ！」
『ちゃんと動けるように、札もがんばって覚えよう』
　海がスケッチブックに意思表示をすると、円はさらに乗り気になった。
「そうそう、決まり字も覚えて、意識しながら取らないとね。個人の時間も暗記カード使って覚えよう！」
「二人とも歌を覚えるつもりか。なら俺も一緒に……何とかなる、はず……」
　こうして札の暗記から始めた3人だったが―――

「百枚も覚えるのは無理だ！」
　暗記が得意でない刀は、早々にギブアップした。
「俺は今まで鍛えてきた速さで勝つ！」
「それなら、ボクたちも分担しよう。一応全部覚える気だけど、ボクは6枚から16枚札を重点的に。海ちゃんは1枚から5枚、6枚あたりまでを中心に覚えよう」
『1枚札の“むすめふさほせ”はかくじつに取りたいものね！』
　作戦が決まると、あとは猛特訓だ。躊躇うことなく、迷わず動けるまでを、実際に遊びつつ練習した。
「どんな遊びでも、ボクたちはみんな実際に遊びながら覚えていく。これはかるたも一緒だよねー！」

　対するトリコロールチームでは、試合前に神嶋征一郎がある提案をしている。
「やるからには勝つつもりだが……自分たちの中でも、取った札の枚数を競争しねぇか。一番多く札を取った者に、他の二人が何か奢るんだ」
「チーム内競争か。随分本気だね、神嶋」
　ロベルト・エメリヤノフの言葉を、征一郎はすげなく否定する。
「更にやる気が出ると思ったからで、自分が乗り気なわけじゃねぇ。あくまで相手チームに勝つためだ」
「いい考えだ。チームであるからには、当然勝ちを目指したいところだ。勝負事だしな」
　内藤武諭が賛意を示した。
「誰だって、奢るよりも奢られたい。故に、個人戦も負ける気はないぞ」
　一方のロベルトは、少し考えている。
「うーん。競技かるたは、僕は初心者も初心者なわけだけど……」
「自分も、お前に唐突に誘われた初心者なんだが？」
　征一郎に言われて、ロベルトも気持ちを決めた。
「そうだね、ここにいる人はみんな同じだよね！大体の人はそのはず、うん」

　このチームの戦術は明快だ。武諭がチームメイトに確認する。
「競技かるたは、集中力と直感がモノを言う。俺とロベルトは速さ重視で直感と運に頼る。それを神嶋がフォローするというトリコロール戦術だ」
「戦術名の意味はわかんないけど……」
　ロベルトが苦笑いしながら言った。
「チームとしてもちろん優勝を目指す、勝ちは狙う！けど……奢りはやだな。せっかくなら奢られたい！というわけで、個人としても頑張るよ」