【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦｜リアクション

【星幽塔】第一階層　サジタリオ城攻略戦

【竜の最期】

　逆鱗に星の矢が突き刺さったことで、竜の回復能力は停止した。
　だが、いまだ竜の身体に癒着したオーブに火を灯すためには竜の息の根を完全に止めるしかなさそうだった。
　しかし、ここに至り、竜が文字通りに死力を尽くして暴れだしたために、生半な覚悟で近づくことはできなくなった。
「よし、今度こそ俺の出番だな」
　と、舌なめずりをして前へ出たのは菅波リナだった。
「俺が巨大化して、奴をホールドする。そうすりゃ、さしものあいつもそう好き勝手暴れられないだろ」
　リナがあえて回復せずに放置していた傷口から滴る血液を舐めとり、一気に巨大化しながら竜の身体に組みついた。
『!?!?!?』
　竜は咆哮を上げながら、じたばたと暴れる。
　ときには火の玉を吐き、ときには尻尾を斧のように振りまわしながら、大地が震えるような声を上げ続ける。
「おら！　大人しく、しやがれ！」
　リナがゆっくりと竜の身体を締め上げていく。
　すると、竜が苦しみまぎれに吐き出した火球に混じって、中にいた骨削瓢も口の中から飛び出してきた。
「「「……！？」」」
　よもや竜の腹の中から知り合いが飛び出してくるとは思っていなかったのか、瓢を知る者の多くはその姿に目を剥いた。
「……にしし……作戦……成功ですか……ねぃ……」
　一方、当の本人である瓢は、竜の体内という特異な状況で体力を使い果たしたのか、その場でバタリと倒れてしまった（ちなみに彼は最後まで金貨と宝石は放さなかった）。
「……まったく相変わらずだな」
　呆れたように言いつつ、倒れた瓢の横を素通りして、御剣刀がリナがホールドする竜のもとへ走った。
　まだ息の根がある竜に、最後の一撃を食らわせるためだ。
（そのために今回はなるべく体力を温存してたんだ……！）
　地面を蹴る勢いを強める――。

「――しっかり押さえててくれ！　これで終わらせてやる！」

　刀が頭の中で撃鉄を落すイメージをつくる。
　刹那、刀の身体が《加速》し、さらにろっこんの進化能力によって形成された見えない足場を蹴るようにして、刀は見る見るうちに竜が立っていたときに頭があった程度の高さまで空へ駆けあがる。
　そこから、刀は急降下とともに、逆鱗があった場所――今、オーブが見え隠れしている箇所へ星の力が実体化した刀を振り下ろす。

「俺の全体重に重力加速度、さらに鍛えた身体と星の力の合わせた一撃――喰らいやがれぇええええええええええ！！！」

　さながら流星のように流れ落ちる斬撃が、竜とオーブのしがらみを断ち切る――。

『！？！？！？』

　刹那、一際大きい竜の悲鳴が大地を激しく震えさせる。

「……っ！？」

　誰もが耳を塞がずにはいられないような、そんな苦しげな悲鳴が長く響いた後――。

　ついに竜がピクリとも動かなくなり、そんな竜の身体からポロリとオーブが零れ落ちた瞬間、

「あ……」

　オーブに自然に火が灯ると同時に、それまで暗かった空に不意に満天の星が輝き出したのだった。

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