【お正月】日が落ちるまで｜リアクション

【お正月】日が落ちるまで

「初詣とは違うお願いごとだけど～……とっ～」
　まだ人が集まる前の、朝早い寝子島神社。
　軽快に柏手をたたきながら願を立てる回田はつなの姿があった。
「後は2か所目か～」
　鳥居をくぐり外に出た彼女。
「う～ん」
　しばし考え込んで、きょろきょろと周りを見渡し――そして、空を見た。
「高いところかな！」
　誰に語りかけるともなしにつぶやくと、笑みを浮かべた彼女。
　登山道入り口駅へと向かう道へ、足を踏み出していった。

「と、到着～！　うひ～、私にしては頑張ったよ～」
　はつなが九夜山の山頂についたのは、日がまだ中天に至る少し前の頃合いだった。
　ロープウェイをおりて、展望台を横目に、できるだけ高いところを、その一念で歩いた道のりは、決して楽なものではない。それでも、山頂にほどちかいやや開けた場所で、彼女は空を見上げて立っていた。
「それでも、お空って遠いんだ……」
　普段浮かべる笑みは消え、少し寂しそうな、ぼんやりとした表情で見上げるはつな。
　その脳裏に浮かぶのは、父母のこと。

『お父さんに心配かけないようにね。あなたはいつも笑顔でいなさい』
　それは、はつなの母の言葉。
　はつなの母は、自身がなくなるその直前まで、父のことばかりを考える母だった。
　そんな父に恋する母の姿は微笑ましくて、はつなはそんな母の様子を見るのも、父の話を聞くのも好きだった。
「お母さんは、私を見てなかったけど……ね」
　周囲に誰もいないとの思いからだろう。小さく言葉が口から漏れ出てくる。
　高いところなら、少しは、空や雲を見るたびに思い出す父母に近づけるのではないか。
　それが、はつなが高いところを目指した理由。
「お空、もっと近くならないかな～」
　ん～、と思いっきり天に手を伸ばし、つま先で立つ。
「あ……れ？」
　不意に、眩暈が襲い、バランスを崩す。
「いったいな～」
　尻餅をついたはつな。ふぅ、とため息をついて上を見上げる。
「まだ完全に回復してないのか～……島に来てから本調子に戻ったと思ったのにな～――って、あ！　肝心のお願い忘れてた！　しなきゃ！」
　今度は立ちくらみを起こさぬよう、気を付けて立ち上がる。
　中天に差し掛かった太陽と、青い空。澄み切った冬の空気を感じながら、はつなは小さく言葉をつむぐ。
「ずっと、笑顔でいられますように」
　どんなときでも――誰にも心配かけちゃ……いけない、もんね」
　笑みを浮かべながら、心中で言葉を紡ぐ少女の周辺で。
　不意に、小さな花弁が舞いだした。まるでそれは、笑みを忘れぬことを誓う少女への、父母からの贈り物のようにも思えるもので――。
　ふわりふわりと舞う花を視界におさめ、はつなは笑う。その笑みは、とても健やかな、それだった。

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あとがき

担当マスター：蒼李月
ファンレターはマスターページから！

お待たせいたしました。

　みなさま、年頭の様々な思いをぶつけていただきありがとうございます。

　久しぶりのゲームマスター業で勘が中々戻っていなかったり、
　初めて書くキャラクター様ばかりで一つ一つ設定を見てはうんうんうなったり
　色々な設定がまだまだよくわからなくていちいち調べるのに時間がかかったり、
　その場所のこれまでの経緯がわからなくって本当にこれでいいのかと、
　いちいち手探りしながらの執筆でした。
　とても新鮮な気持ちで作業しつつ、はじめてのリアクションを執筆させていただきました。

　まだまだ力足らず、知識足らずな面もある中で、今ある精いっぱいでやらせていただきました。
　もしまたの機会がございまして、参加してもいいなと思っていただけるような出来でありましたら、
　うれしいです。

　今回はご参加いただきありがとうございました！

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