「……ねぇ、知ってる?」
年の瀬も押し迫ったある日のことだ。
寝子島駅から参道商店街へ向かう道すがらを歩いていた時に、耳に入ってきた女子高生のたわいもない話。
「お正月の間だけ、お願いするとほんとに叶うかもしれないんだって」
「あ、聞いたことある」
すぐ後ろを歩いているらしき彼女らの、声のやりとりに、ほんの少し、意識が向いた。
「あれでしょ、朝日がのぼると同時に、寝子島神社でお願いする……んだっけ?」
聞いたことがあると答えていた側が、うろ覚えとわかる自信のない声で問いかけていた。
「それだけじゃだめなの。そのあとね、その日の夕方、日が落ちるまでにもう一か所へ行って同じ願いをしなきゃいけないんだって」
……もう一か所?
「え、めんどくさ」
ごもっとも。
「でもなんかそういうのってほんとっぽくない?」
「んー、でもさ、もう一か所ってどこなの?」
せやな。まずはそれな。
「わかんない」
なんでやのん。
「意味わかんないし!」
思わずツッコミを心の中で入れたが、片割れは物理的に突っ込んだらしい。
背中の後ろで、「いたいよぉ」という情けない声が聞こえた。
「なんかね、もう一か所も、島のどこからしいんだけど、わかんないんだって。神社ってことで落神神社って説もあるんだけど、先輩は違うってゆってたしぃ……」
「あやふやだなぁ」
うんうん。
「でもさでもさ、おもしろくない?」
「何が?」
ほんとなにが?
「なんか自分だけのお願いスポット見つけるみたいで! 他人を出し抜いて! 正月一発目のお願いを気持ちよくするの! なんかすっごいかないそう! ――ってああっ! このお店かわいくない?」
「わ、ほんとだかわいー」
一緒の歩調で歩いていたはずの二人組は、何かお店を見つけたらしい。タイミング的に新しく開店した雑貨屋さんだろうか。
くだらない噂話。
でも、学校でも少しだけ噂になっていたのを小耳にはさんだような。そうでないような。
それが本当かどうかはわからない。
ただ気になることは確かで――だから僕は、正月早々朝早くから寝子島神社にいるわけだ。
「意外と、人くるんだな……」
初詣の人が大多数だろう。けど、この中には自分と同じ目的の人もいるんじゃないか、そう考えると少しわくわくするのも事実だ。
もう一か所がどこかは結局わからなかったけど、多分――あそこなんじゃ、ないか、なぁ……。
こんにちは。はじめまして。
初めてシナリオをご提供させていただきます、蒼李月(そうり・ゆえ)と申します。
らっかみの中ではまだ1月(ぎりぎり上旬)というわけで、新年といえばやっぱり初詣、初詣といえばやっぱり願望にあふれた神頼みだよね! というシナリオをご用意させていただきました。
シナリオにおいて皆様は寝子島神社で、1月上旬の任意の日において、願を立てるところから始まります。(ここまではアクション中で特段の希望がなければ描写されません。)
その後、皆さまはそれぞれの考えた理屈で、「二か所目っぽいところ」へ向かっていただきます。
(1)そこ(2か所目)はどこだと考えるのか
(2)何故そこだと考えたのか
(3)何を願うのか
(4)願掛け以外の目的があるのか
(5)その他(結局探せなかった、場所は想定したけど行きつけなかったなど必要があれば)
をアクションにはご記入いただければと思います。
その過程とお願いごと(今年度の目標を盛大に打ち立てるのもいいかもしれませんし、従来ずっと秘めていた願い事を願うのもいいかもしれません)や、その際の心情等をリアクションでは主要に扱いたいと考えております。
(※心情等は必要があればアクション内にご記載ください)
新人MSに対して、「こんな場所もあるのよ」なノリでマイナーな場所を指定していただいてもかまいません。
調べてわかる範囲内においては、どうにか対応できればと思います。
参加者様の自宅などパーソナルなエリアである場合、どんな様子の場所か、手がかりだけでも教えていただけると対応しやすくてうれしいです。
グループ参加も可能でございます。(4)にありますように、ただデートしたい、宝探ししたい、気になるあの人の後をつけたいつけられたい(?)など願掛け以外の目的への対応も可能な範囲では可能としたいと思います。
初のシナリオご提供ではありますが、楽しんでいただけるよう頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
※「2か所目がどこなのか」、正しい答えは、皆さまの思いの数だけあると思っています。