【星幽塔】その希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】その希望に火を灯せ！

　扉からある程度距離を置いた場所で、黒影が出てこない間に扉が開いている部分を塞いでしまおうと、八神修がろっこん『分解』を使って扉へと砕いた岩を飛ばしていく。その様子を、謎の生物は面白いといった風に飛び跳ねては楽しんでいるように見えた。

「あのゴンちゃん……」
「ゴンちゃん？」
「あ……衛さんが、そう呼んでましたので……」

　御巫時子の呟きに、鮫ノ口礼二郎が首を傾げたのでそう説明すると、礼二郎はそうかと頷く。

「本当に何者なのでしょう……私達の邪魔をするでもなく見ているだけですね……」
「皆目検討も付かないが……何一つ答える様子もないからな。っと、黒い影のやつがくるぞ！」

　群れから外れるように、黒影がこちらへ２体向かってくるのが見えて、礼二郎は両手斧を構える。

「すまない、もう少しだから頼む」

　修はちらりと目線を送ると、またろっこんの力を操る事に集中した。
　任された、とばかりに礼二郎が前に出ると、時子がその後ろからサポートをするかのように赤い和傘を構える。黒影の攻撃を礼二郎が両手斧を使って防ぎ、力の加減を覚えたのか時子がタイミングよくつむじ風で吹き飛ばしていく。
　そうしている間に、修のろっこんで扉の開いた部分には人が通れない程に岩が積まれていた。

「よし、そろそろいいだろう。エインズワース、頼む！」

　修がエレノアに向かってそう叫ぶと、ロングコートの裾をはためかせてエレノアが走る。それを邪魔するように、黒花が数匹飛んできたが、エレノアは愛用の水鉄砲をコートのポケットから抜き撃ちしてガンマンのように撃つと、ろっこんを発動してその動きを奪った。
　そして、扉の手前で積まれた岩に水を撒きろっこんを発動させたのだった。

「出て…これないみたいだ」

　影人を足止めさせる作戦は成功したみたいだと、湊弥がそう確信した瞬間だった。岩を積みきれない扉の上の方から黒い手が伸びたのは。
　それはまるで、出れないのならばこうしてやろう……そんな意志すらも感じさせる動きで、少し離れた崖に群生する黄色の花へと押し寄せていく。

「そいつはちょっと甘すぎるんちゃうか！」

　けれどそれを予め予測していた者達がいる。ろっこん『有翼人-高林-』を発動し、浅沼柳司が崖近くの上空でそう笑った。そして魔風の力でつむじ風を起こし、花に触れようとする黒い手を押し返す。
　それと同時に、如月庚がろっこん『青にして蒼穹』を発動し、その蒼く輝く右手で更に額の傷跡をなぞると、超人的な身体能力を発揮し崖に向かって跳躍し、

「砕けオラァ！！」

　と、花に向かって伸びていた黒い手を粉砕してみせたのだった。
　そして、黒い手が扉から伸びるのを見た瞬間に走り出していた者がもう1人いた、卯木衛だ。
　阻もうとする黒影をろっこん『月面ラビット』で跳んで避け、扉へと走る。庚によって粉砕された手とは違う黒い手が、衛へと向かってくる。けれど、衛は止まることはなかった。

「俺にはこれくらいしか、できねぇからな！」

　そう叫ぶと、自分に向かってくる黒い手を紙一重で避けてろっこんの力で跳んで一気にオーブまで間合いを詰める。

「届けええええええっ！！！」

　着地と同時にそのままスライディングを決め――――衛はオーブへとその手を伸ばした。

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