this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
家出日和な冬の日に
<< もどる
1
2
3
4
5
…
10
つぎへ >>
雪見窓の向こう、坪庭の皐月に宵闇が落ちている。
祖父の遺した台本の頁を捲る手を止め、
鴻上 彰尋
は墨色の瞳に束の間瞼を落とした。端座した膝に古びた台本を置き、疲れた瞳を指で擦って、ふと陽の絶えた坪庭を見遣る。
(……もうそんな時間か)
零れた息がうっすらと白い。
読み止しの台本を閉ざす。畳に積み上げた幾冊もの台本の上に重ねて置き、背筋を伸ばして立ち上がる。
日暮れにも気づかず読み耽っていた台本は、今は亡き祖父が舞台役者をしていた頃のもの。祖父の手跡による書き込みに溢れた台本は、読み込めば読み込むほど、舞台演劇の世界にのめりこめた。
祖父が生前書庫として使っていた離れの灯りを点けようとして、空腹にも気が付いた。電灯の紐を引こうとしていた手を止める。ここはこのままにして、とりあえず夕飯にしよう。
冷たい廊下を渡り、母屋に戻る。
冬休みを利用して訪れた都内の祖父の家は、住人が絶えた今も丁寧な管理の手が入っている。だからこそ、時折訪れても大した掃除もせずに滞在することが出来る。
祖父が生きていた頃は、古くからの馴染みの家政婦さんが通ってくれていた。祖母を早くに亡くして広い日本家屋に一人で住む祖父が台所に立つ姿を見かけた記憶はあまりない。
彼女の作る食事はいつも温かくて美味しかった。
――坊ちゃん
ふくふくとした家政婦さんが己を呼ぶときの柔らかな声が不意に耳に蘇って、彰尋は薄暗がりに僅かに苦笑する。
祖父の家に上がり込んでは離れで台本を読み耽る己を、彼女はそうして呼びに来てくれた。
――坊ちゃん、ごはんですよ
(そうだ)
今日は彼女が教えてくれた肉じゃがにしよう。わけぎと薄揚げのぬたも作ろう。
祖父も家政婦も、今はもういない古く広い家の台所に明かりを灯し、慣れた手際で食事の用意にかかる。
――ああ、こんなに寒そうなお顔をして
ひとつ思い出せば、次々と記憶が蘇った。
料理をしながら瞼の裏に浮かぶのは、そう言って覗き込んできた家政婦さんの心配そうな顔。
(確か弟妹が生まれる少し前だから)
あれは、八つか九つの頃。
能楽者である父の己を見下ろす瞳が冷たくなったのはいつからだっただろう。兄と違いお前には才がないと面と向かって言い放たれたのも、どれだけ稽古に励もうと一瞥すら向けてくれなくなったのも、その頃だった。
――妾の子
父の弟子のひとりに投げかけられた言葉の意味は、今になれば分かる。
祖父の血を引く母は、――あの頃母だと信じていた実母の妹は、あの頃腹に父の子である双子を抱えていた。容赦なく体力を奪い、ともすれば危険な状態に陥りがちな胎児たちに、いつも辛そうな顔色をしていた。
自分は必要のない存在ではないのかと考えた、八つか九つの、ある冬の日。
あの日、初めて家出をした。
(家にはいられない)
吹き付ける北風に打たれながら、力の限り走って走って、息が切れた。
肩で息をしながら、頬を伝う涙とも汗とも知れぬ冷たい水を掌で拭う。
誰にも顧みられない自分の境遇が嫌で嫌で、とうとう考えなしに家を飛び出したけれど、歩くうちに日が暮れた。黄昏色に染まる道は、知ってる道のはずなのに無闇に不安を掻き立てた。歩けば歩くほど知らない道に迷い込んだ。知らない場所に立つことが怖くて、怖いからこそずっとずっと歩き続けて、
「坊ちゃん?」
祖父の家で見かけたことのある家政婦さんに声をかけられた。
「坊ちゃん! どうしたんですか、こんなところで……」
祖父の家に向かう途中だった家政婦さんに声を掛けられて、初めてそんな遠いところまで歩いて来ていたのだと思い至った。
呆然と立ちすくむうち、何かを察した家政婦さんが泣き出しそうな顔で冷たい頬を両手に包んでくれた。
「ああ、こんなに寒そうなお顔をして」
抱きかかえられるように祖父の家に連れて行かれ、台所で熱いお茶をもらった。
お茶を飲んでいるうち、祖父と家政婦さんが何事か話をし、そうして祖父が父のいる家に電話を掛けた。
この子は暫く預かる、と電話口の父に抑えた声で伝えた祖父の言葉が心底嬉しかった。電話をしながら己の肩をきつく包む祖父の手が、お前は必要だと言ってくれている気がした。
今になって思う。
(兄さんや母さんに相談すれば良かったのに)
兄や母、祖父や家政婦さん。気にかけてくれる人達に心配を掛けてしまった己の行動が今になってひどく恥ずかしくて、彰尋は目元を赤く染める。
けれど、後悔はない。
家出をしなければ出会えなかった世界があった。
手を引いて連れて行ってくれた祖父の掌の厚みと熱と共、今も鮮やかに思い出せるあの舞台。
闇の中に浮かび上がるライトの眩しさも、役者たちの輝きも、何もかもをはっきりと覚えている。あの舞台に立ちたいと願った。あの世界に生きたいと憧れた。
あの憧憬の炎は、今も変わらず、むしろ強さを増して己の胸に宿っている。
<< もどる
1
2
3
4
5
…
10
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
家出日和な冬の日に
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年04月13日
参加申し込みの期限
2016年04月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年04月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!