天使と悪魔のロマネスク｜リアクション

天使と悪魔のロマネスク

果樹園『チエノミ』（６）

　ジェレミアがねこたちの喉をくすぐってやると、彼らは気持ち良さそうに目を細め、ごろごろと喉を鳴らしてご満悦。
「君たちが大切に、大切に果樹のお世話をしているおかげで、美味しい実が食べられるんだね。ありがとう」
「ニャあ～ん。それほどでもニャいニャあ～ん」
　ごろごろごろ。
「さ、まだまだ食べまくるわよー！　おらおらー！」
「バカになるって楽しいわね♪　あらっ、今あたしのこと、バカって言ったのは誰ー？」
　深夜子、アリサもまた、この素敵な夢を堪能すべく、ぱくぱくぱくり。とろけるように甘くて美味しい実は、いくらでも食べられてしまいそう。

　文緒が食べたのは『髪の色が変わる実』であり、きらきらと透き通る神秘的な虹色のセミロングは天界の光景に大いに映え、無事に欠片が見つかった、との報を受けやってきた彼らの目を大いに惹いた。
　興味深そうに、文緒が手のひらの上に乗せたそれを覗き込みつつ、あまり事情が良く分かっていない太陽は、
「なんか良くわかんねッスけど、文緒ちゃんお手柄ッスねー！」
「ありがとうございます、南波先輩。先輩も頑張ってたんですね、お疲れさまでした」
「もち、堪能したッスよー！」
　満足げな太陽の言葉に、まもるは、はふうっとため息ひとつ。ちなみに、彼はまだ女の子ボディのままだ。
「なんか、心が汚された気分だよ……にゃんこたん、ポニテで癒してくれよ～」
　ぺちーん！　タルトはポニテビンタを一発。
「あーあ、どうせなら、男のムッシュくんと太陽先輩の濃厚な絡みが見たかったなぁ。なんてね♪」
「そんなことになったらオレ、いよいよ立ち直れないよ？」
　むう、と覗き込んだ久雨もまた、その顔は赤みが差したまま……注目されれば再び、ぼわっ！　となるのだろう。
「で……これに触れれば、浄化できるのだったな。私も手伝おう」
「ま、乗りかかった船ってヤツで。あっしも手伝いやしょ」
　世平も、くねくねうにょーん。揃って、ぺたりと欠片へ手を触れる。
　テオの話によれば、複数人でこうして触れてやれば、悪魂石を白魂石へと変えることができるのだという。
「はいっ、みんな触って触って～☆」
　ひびきの明るい声も相まって、彼らは進んで次々に石へと触れていく。隙間なく石を手のひらで覆ったり、時には交代したり。
「……どのくらい、触れていればいいのかしら？」
　能美子が、フルーティな香りとともに首を傾げて、
「うーん、どのくらいだろ……」
「あっ、段々白くなってきたよー！」
　雅人……とアホ毛が揃って言った、直後に。
　カッ！　と白い閃光が天へ向かって迸り、まほろの手のひらの上で、石は真っ白く、そしてぼんやりと輝く、美しい白魂石へと変わっていた。
「私も……お役に、立てたかな……？」
「おうっ、もちろんだぜ！」
　びし！　と勘三郎はサムズアップ。まほろはふわり、微笑んだ。