１２月の★ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の★ハッピーバースデー

★神木直樹のＢＤ（昼：森蓮）

　クリスマス・イブ。人が溢れるシーサイドタウンで、森蓮は待ち合わせ場所にいた。
（まだ後１０分ありますね……）
　だからと気にする様子もなく、蓮は街行く人々を穏やかな瞳で興味深く眺めている。
　そこに、少年が駆けてきた。
「ご、ごめん。待った？」
　色白の少年が頬だけ赤くし、息を切らして言う。蓮が待ち合わせていた相手、神木直樹だ。その様子に少し心配そうに蓮が答える。
「いえいえ、まだ待ち合わせ時間ではないですよ。私が早く来ただけですから。返って急がしてしまいましたね。すみません」
「待たせてないなら良かった～」
　ほっとした様子で直樹が言う。そして２人は連れだって歩き出した。

「何か買い物があるって森君言ってたよね。何買うの？」
「今日はですね、直樹さんの誕生日プレゼントを購入しようかと思いまして」
　直樹の問いに歩きながら蓮が答える。え、と直樹の足が止まった。
「僕の……誕生日？」
「ええ。今日でしたよね？　お誕生日おめでとうございます」
　蓮の真正面からの祝福に、直樹の頬がぽっと赤くなった。
「あ、ありがとう……」
「どうしましたか？」
　斜め下を向いてしまった直樹に蓮が問い掛ける。
「うん……、僕、引きこもってた期間が長かったから、こういう風に友達に言われるのって慣れてなくて」
「ご迷惑でしたか？」
　心配げに眉を寄せた蓮に直樹は顔を横に振った。
「ううん、嬉しかった。ありがとう」
「良かったです。では、直樹さんが見たいお店に行きましょう」
「え、ほんとにいいの？」
「もちろんです」
　にっこり笑う蓮に、ありがとうと微笑む直樹。そしてまた２人はシーサイドタウンを歩き出した。

　級友達のお陰で学校に通い始めた直樹。「今は本当に色々な事に興味があるんだ」と、楽しそうにシーサイドアウトレットのたくさんのお店を、蓮と２人で見て回る。そして２人は休憩がてらアウトレット内の喫茶店に入る事にした。

「今、Cat Islandはどうなっているんでしょうか」
　頼んだ昆布茶を啜りながら、蓮は向かいに座っている直樹に訊いてみる。直樹も紅茶を一口飲み、答えた。
「うん。関東全域からアクセス出来る様にしたからね。色々大変だけど、僕１人で回してる訳ではないから、大丈夫だよ」
「関東全域ですか。凄いですね」
　情報機器一般にうとい蓮には仮想空間そのものがどうしてもピンとこない。けれど、Cat Islandという場所が、色々な人に求められている場所なのだという事は漠然と理解出来る気がした。
「そうそう、お役に立つかわかりませんが……」
　ふと気が付き、蓮はカバンから手帳を取り出した。
「最近スキーキャンプに指導補助として参加したのですが、小中学生からの感想を伺ってまとめましたので」
「スキーキャンプ？」
「ええ。Cat Islandでスキー場や子供のマヌカノイドを作る際、参考になるかもしれません」
　その言葉に直樹は瞳を輝かす。
「それは凄く助かるよ。ありがとう、森君」
「いえいえ」
　直樹は興味深そうに手帳を見ていたが、つとその手を止めた。
「……何か森君にはいつも手伝ってもらってるね。僕に出来る事はない？」
「いえ、私は好きでやってるだけですから。……ああ、そいう言えば」
　蓮は以前Cat Islandの命名で電子マネーを貰った事を思い出した。携帯電話すら持っていない蓮。使う機会がない事を直樹に言ってみる。
「Cat Islandだけじゃなくて加盟店とかウェブサービスでも使えるよ」
「しかしネットそのものが苦手でして」
「ああ、じゃあ！」
　そうだと直樹は自分のスマホを取り出した。
「今僕と一緒にネットショッピングすればいいよ。どんな店が見たい？　色々あるよ～」
「え？　え？」

　嬉しそうにスマホを操作する直樹と、くるくる変わる画面に目を回す蓮。
　友人同士の時間が楽しく過ぎていくのであった。