１２月の★ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の★ハッピーバースデー

「さ、まずはバースディケーキとディナーだ。真央が蝋燭を消してくれないと始まらないよ」
　修は真央の背中をそっと押し、食堂の中央まで彼女を連れて行った。そこには。
「すご、凄いのだ～～～！！！」
　真央が驚嘆の声をあげる。テーブルの上には八神家のシェフが腕を振るったご馳走が並べられ、その中央には大きな大きなバースディケーキがあった。綺麗に飾り付けられたケーキの前で、全員仲良く記念写真を撮る。
　そして修が楽しそうに真央に声をかけた。
「さあ、真央、蝋燭を吹き消してくれ」
「わ、わかったのだ」
　他の４人がハッピーバースデイの歌を歌う中、真央が大きく息を吸った。そして頬を膨らませてふーっと勢いよく吹くと、見事に全部の火が消えた。その姿にまた大きな拍手が起こる。
「……うれしいのだ～！　みんな、ありがとなのだ～！」
　そう言うと真央はみんなとそれぞれ本気のハグをする。そして全員が着席をし、楽しくご馳走を食べ始めた。

「シュー君トコの料理はちょー美味しいのです！　なんという至福。天国ですかここは！」
　もぐもぐと嬉しそうに食事を頬張る美咲紀。その横で清一郎も楽しそうだ。
「いや～、別嬪さんばかりで食事も美味いなぁ！　なんやねん、八神は普段からこんな美人に囲まれてるんか」
「確かにみんな綺麗だし、可愛いよ」
　照れもなく真顔で返す修に、美咲紀や月が照れてしまう。真央は食べる事に夢中だ。そこにケーキも切り分けられて運ばれてきた。清一郎は悔しそうにそのケーキを１口頬張る。
「羨ましい限りやなぁおい。こんな綺麗な女性に声をかけんなんて失礼や！　どや、常闇さん、よかったら今度一緒に遊びに行かへん？」
　足下でじゃれつくブラックの喉を撫でていた月が、突然声をかけられきょとんとする。
「遊びにですか？」
「そや。バイクに乗ってどこへでも連れてくで～」
「バイク……ではみんなは乗りませんよ。今度新聞部でウインタースポーツをしようと話してますから。それにご一緒されればどうですか？」
「うっ！　違う、俺はみんなはいらないねん～！」
　ぐおぉと胸を押さえる清一郎。そしてそれを相手にもせず月は美咲紀とケーキの美味しさについて語りあう。何だかコントのようなその光景に、思わずくくっと修は笑ってしまう。そして食べる事に夢中な真央に話しかけた。
「味はどうだ？　真央」
　修の言葉に真央はつと手を止め、じっとテーブルの上を見つめると、小さな声で答えた。
「ゴハンも、ケーキも、うまうまなのだっ……」
　そしてまた夢中で食事を掻き込み始める。
「……そうか。良かった」
　修は彼女に静かに微笑んで、自分もまた食事を続けた。真央の目尻に光っていたものには気付かないふりをしながら。