１２月の★ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の★ハッピーバースデー

　八神宅の食堂のドアの外で、真央は修の猫１匹と一緒に、ぽつんと佇んでいた。修達４人と他の猫達は食堂に先に入っていた。真央は彼らにここでちょっと待ってて欲しいと言われたのである。
『……ほんとにすぐだから。怖がらなくていいよ。猫を１匹残しておこうか』
　自分はどういう瞳で彼を見ていたのだろうか。寂しがり屋の猫に話す様に、修は真央に優しく言葉を残した。だから今、真央は１人でも怖くない。猫さまもいるし。……これだから、修ちゃんには敵わない。
　と、突然食堂のドアが少し開くとともに、明るい声がした。
「よっしゃー、いいで後木。待たせたな！」
「もういいのだ？！　よかったのだー！」
　清一郎に促された真央は猫をそっと床に放すと、思い切り食堂のドアを開けた。

「「「「ＨＡＰＰＹＢＩＲＴＨＤＡＹ　真央！！！」」」」

　―――パーン！　パーン！
　クラッカーの弾ける音と共に、修、美咲紀、月、清一郎４人の声が真央を出迎えた。猫達も負けじとにゃーんにゃーんと大合唱だ。
「え……え？」
　ドアを開けたまま真央は立ち尽くした。その無防備な首筋に美咲紀が両腕でかじりつく。
「真央ちゃんお誕生日おめでとーなのですです！」
「たん……じょうび？」
　美咲紀の熱烈な歓迎にも呆然としたままの真央に、清一郎と月も祝福の言葉を贈る。
「おめでとさん、後木！」
「お誕生日、おめでとうございます。……びっくり、しますよね。私も同じでした」
　その言葉にも真央はまだコクコクと頷く事しか出来ない。そんな彼女の前に修が静かに歩み寄った。
「実は今日はみんな真央の誕生日を祝うために集まったんだよ。会議じゃなくてね」
「そう……なのだ？」
　瞬きも忘れ真央は修を見つめる。その肩を修はそっと叩いた。
「ハッピーバースデイ。産まれてきてくれてありがとう、親友」
　真央の唇が小さく震える。
「だって……真央ちゃんの誕生日はイブイブで……いつもクリスマスと一緒だったのだ……！　こんなの……マヂ……サプライズなの……」
　その小さな最後の声は聞こえなかった。真央が下を向いてしまったからだ。そんな彼女を清一郎と月も温かく見守る。真央の横で美咲紀が目尻の涙を拭いながら呟いた。

「サプライズ、大成功なのです……！」