暴走世界からこんにちは｜リアクション

暴走世界からこんにちは

【千切っては投げ千切っては投げ】

　尾鎌蛇那伊は荒れ狂う竜巻や、それに吹き飛ばされたレンチなどを必要最小限の動きで回避していた。
「……どうやら状況はあまり良くないみたいね」
　呆れまじりの溜息とともに、蛇那伊が呟く。
　すでに二人が別の世界へ退場させられ、
「遠慮なんかしていられないわ。ここは協力して、一気呵成で畳み掛けるわよ！」
「うん、わかった！」
「まかせとけ！」
　蛇那伊の言葉に、雨寺凛と近石簾の二人が応じた。
　それを見て、蛇那伊は頷く。
　そして、次の瞬間には行動を開始している。
　蛇那伊は地面を蹴ると荒れ狂う竜巻の合間を縫うようにして、瓢のそばまでやってきた。
「おや？　おたくもあっしと心中がお望みですかぃ？　あいにく男と心中する趣味はあっしにゃ――」
「――奇遇ね。あたしもこんなところで死ぬのはゴメンよ。だから、飛んでちょうだい？」
　そのときには、すでに蛇那伊のしなやかに鍛え抜かれた指が瓢の襟首を掴んでいた。
「どっせぇえええええええええええええええええええええええええええええい！」
　刹那、蛇那伊が裂帛の気合とともに竜巻の一つに瓢を投げ飛ばした。
「おやぁ？　なんだか空が落ちてきてるように見えますよぃ？」
　瓢には、一瞬自分の身に何が起こったのかわからなかったようだった。
　ただ漠然と空と自分との距離が縮まったような感覚を抱き、
「……って、ぎゃああああああああああああああ！？」
　その次の瞬間には、瓢は竜巻に乗って、空の裂け目に消えていった。
　見れば、多面体状の空の向こう側に映る別の世界でも瓢は同じように自分の竜巻、あるいは別の世界の自分の竜巻に巻き込まれて飛んでいる。
　それに、
「うわぁ……。大丈夫かなぁ、あれ？」
　凛は少し心配そうに首を傾げ、
「……骨削、同級同寮のよしみで骨は拾ってやるからな」
　と、簾は少し悲しげな声で呟いた。
　それぐらい暴走した瓢の竜巻は厄介で、周囲に甚大な被害をまき散らす類のものだったのである。
　それゆえに、これ以上無駄に竜巻が増えることを阻止した蛇那伊の判断はおそらく正しい。
「さあ、これでもう竜巻が増える心配はないわ！　残った竜巻に巻き込まれないよう十分注意しつつ、一気に高橋を潰すわよ！」
「う、うん！」
「お、おう！」
　蛇那伊に一喝され、凛と簾はそれぞれに自身のろっこんで活路を見出すべく行動を開始した。