「やあ、こんにちは。元気かい?」
は?
「どうだい、元気なのかい?」
はあ?
近石 簾は、猫鳴館の近く、九夜山の森の中で真っ黒な顔の男にニコニコと話しかけられた。
「なあなあ、元気なのかってばよー」
簾はいぶかしがりながらも、仕方なく答える。
「ああ、元気だけど……あんたこそ元気なのか?」
簾が聞くのも当然だ。
よく見ると、顔が黒いのではなく、顔いっぱいに黒いトゲか何かが突き刺さっているように見える。
「元気も元気、スーパー元気だから、君達を殺しに来たんだよ!」
興奮したのか、顔に無数に刺さったトゲが1本、ピンッととんだ。
簾の足下に落ちたそれを拾ってみると……鳥の羽のように見える。もしかして……?
「あんた、何者だ?」
「何者って、高橋くんだよ。君たちもれいびを殺してしまうように言われてね~」
はあああああ?
いろんな敵がいるものだけど、まさかこんなに堂々と目の前から現れて、しかも名乗りをあげて、そして殺害宣言までするとは……たまげた。
が、同時に8mm径のレンチをポケットから出し、ギュッと握りしめながら様子を窺う。
簾のろっこんは、レンチを自分の身長より巨大化させるというもの。いざとなれば大きくして相手に激突させるなり、振り回すなり、やりようはある。
「高橋くん。なんかよくわかんねーけど、あんたマジ冗談にしては面白くねえな~」
「そうだろうね。冗談じゃないもの」
どん!
これ以上の会話は無意味と、簾がろっこん発動!
目の前の高橋くんにめがけてレンチが巨大化して延びる。
まずは一発、高橋くんにお見舞いだ!
が、レンチは身長どころではなく、ずずずずずずずず~ん、と巨大化。
5階建てのマンションと同じくらいの高さに成長してしまった。そのてっぺんには高橋くんが乗っていて、おーい、と呼んでいる。
「こ、こんなに大きく? どうなってんだ……?」
戸惑う簾が振り向くと、灰色猫のテオが困り顔で立っていた。
「テオ、どうなってんだこりゃ?」
「どうやら、あの高橋くん。相手のろっこんを暴走させることができるらしい」
「おいおい、世界をバシッと切り分けちゃった方がいいんじゃねえか?」
「ああ、そうなんだがな……」
テオはうーん困ったと言いながら何もしない。
一体どうしちゃったというのか……。
「なあなあ、高橋くんって結構厄介な奴なんじゃねえの?」
「ああ、厄介だ」
「じゃあ世界を切り分けちゃった方がいいんじゃねえのかって言ってんだけど?」
「ああ、その通りなんだが……既に俺の能力も暴走しちまってるんだ」
見上げれば、世界が多面体のようになっていて、天井にも壁にも自分たちが立っていて、次々といくつもの世界が無駄に作られていく暴走状態のようだ。
「うわあ!」
今度は簾が手に持った別のレンチがドバドバッと大量に増えた。
「おいテオ、こいつは厄介だぜ」
「だからそう言ってるだろ。お前ら、なんとかしてくれ」
マジか……こりゃあ確かに厄介だ。
あなたは、テオが作った(作らされた)『増え続ける謎世界』の中にいます。
いつの間にか、巻き込まれたようです。
高橋くんの顔に刺さっているのは、ご存知クローネの羽根です。
あれがビンビンに作用して、高橋くんのろっこん『念じると、相手の能力を増強させる』が暴走して、
みんなの能力も、どんどん暴走させられてしまうようです。
◇
暴走の仕方は様々で、威力が強くなったり、数が増えたり、発動条件がなくなったり。
どのように暴走するかは高橋くんも分からないので、PCさんが狙って暴走させることはできません。
運がよければ、高橋くんを倒すような暴走になる……かも?
PCさんは狙えませんが、PLさんはアクションで暴走内容を狙って書いても大丈夫です。
ただし、狙い通りに暴走させられるかどうかはわからず、狙いとは違う暴走も十分あり得ます。
また、狙い通りに暴走したところで、うまく倒せるかどうかはわかりません。
そしてあなたは、他の仲間たちの暴走の影響を受けるかもしれません。
何が起こるか分からないので、これはほとんどアドリブです。避けることはできません。
また、あなたが制御しきれない能力が、仲間を傷つける可能性もあります。
◇
高橋くんは、倒すべき敵であることは間違いありません。
倒しても簡単には死なないと思うので、殺される前に倒しましょう。
高橋くん自身の能力の暴走は、どうにかすればおさまることでしょう。
とはいえ、コメディタッチな場面も多々あるでしょうから、
あまり気にしすぎずに、気軽に参加してみてください。
相手をカツラにするろっこんとか、とんかつを出すろっこんとか、
そういった、一般的に戦闘に向かなさそうな能力の方も、ぜひ!