推理ゲーム『ねこじま人狼』｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』

●三人の占い師：四方堂真矢の主張

「私は冒頭陳述の通り『占い師』であり、占いの結果、齋藤さんが『人狼』であると主張するわ」
　四方堂真矢は強気に続ける。
「なぜ齋藤さんを占ったのかというと、『最年長、更に僧職である事を鑑みれば例えゲームは不慣れでもその人生経験において油断出来ない』と思ったから。それで人狼判定が出たのは私も正直驚いたけれど、出てしまったからには、らっかみの可能性はあるにせよ『齋藤さん＝人狼』だと主張せざるをえない」
　真矢は齋藤智照に向かって強気に揺さぶりを掛ける。
「斉藤さん、あなたは『人狼』ね？」

「困りましたねぇ……」
　指差しされた智照は、頭をつるりとひと撫でした。

「疑われましても『島民』である、としか言いようがありませんのでねぇ……」
　法衣を纏い、扇子と数珠を手に、智照は眉を下げて困り顔をし、逆に真矢を見つめ返す。
「先ほどの八神さんではありませんが、私としましては『島民』である私を人狼と言う四方堂さんが怪しいと思わざるをえないのですがね……」
　すると真矢はすぐさま反論した。
「私は小細工はしていないわ」
「斉藤さん」
　口を挟んだのは修である。
「僧侶である貴方にお尋ねしたいのですが、仏の教えでは嘘は良くないとされてますね」
　智照は意図を計りかねるという顔で修を見つめ、咳払いをひとつしてから答える。
「確かにおっしゃる通りです」
「喩えゲームでも、嘘を付いた場合仏道に反しませんか？」
　この修の質問には、卯木衛が苦笑いする。
「ちょっと待った。僧侶だろーが神父だろーが今は関係ないぜ？　どんな善人も役職によっては騙る必要のある『ゲーム』なんだ。普段の様子や職業を持ちだすのはナンセンスだぜ？　じゃないと嘘をつかなきゃいけない陣営の人たちが元々悪い子みたいだろー。もっと論理で殴り愛しよーぜ」
「……そうだな。斉藤さん、失礼しました」
　修は智照に頭を下げる。
「いえいえ……お気になさらず。そういうゲームですからね。それにしてもいやはや……疑われるというのは緊張しますねぇ」
　智照は紅茶を含んで喉を潤し、改めて真矢を見た。
「というところなのですが？」
「わかりました。斉藤さんはあくまでも『島民』だと主張するのですね」
　真矢は智照の主張を繰り返して確認する。
「その通りです」
「では、論点を変えます」
　そう言って真矢は、今度はサキリと衛を見た。
「私が本物である以上、対抗占い師であるサキリ・デイジーカッターさんと卯木衛さんは間違いなく偽物……人外陣営の公算は高いわ。ふたりに言いたいのだけれど、仮に村陣営が騙ってるなら、今からでも遅くない、撤回を勧める」
　衛は後ろ頭を掻きながら、議論が楽しくて仕方ないと言った顔つきで真矢を見つめる。
「君が占い師だというなら当然の主張だね。でも俺は撤回はしないよ」
　紅茶を飲んでいたサキリも「同じく」と答える。
「そう。ということは、ここから議論の進展はないというわけね。では」
　と真矢は全員を見回して言った。
「私はここで、『怪盗』のカミングアウトを求めます！」