進路相談、君等の道【２,３年生限定】｜リアクション

進路相談、君等の道【２,３年生限定】

●熊先生の特別面談

【本宮虎治の場合】

　時は遡る。
　――午前中、学校では個人面談が行われていた頃。
　進路希望調査票未提出の上に、面談そのものからも逃走した２年２組本宮虎治は、調査票を片手に祖母の墓前で座り込んでいた。面倒事を考えるときは、ついここに来てしまう。
「はぁ……めんどくせぇ……。まだ２年だし、来年考えれば良くねぇか、コレ……。したいこともできることもよくわかんねぇしなぁ……」
　線香から上がる煙を眺めつつ、ため息。
　そうこうしているうちに幼馴染の遠藤龍司から着信。
　無下にも出来ず出てはみるが、「今どこ？」と聞かれ、「墓」と一言。そのままプチっと切ってやる。
　龍司の苦笑いが脳裏に浮かんだ。
「アイツはやっぱ音楽続けんだろうな……昔からお兄さんとやってきてるし……なにより音楽やってるときは楽しそうだしな……うらやましい限りだぜ……」
　龍司が好きな道を行ってくれるのは、虎治も嬉しい。
　嬉しい一方で自分は、と思うと、何も考えていなかったことが何気にショックだ。
「……マタ大、寝子島キャンパスできるんだっけな……そこでもいいか……あー……そしたら学部選びか……あーめんどくせぇ……」
　祖母の墓前でぼんやりと空を見上げる。
　太陽が真上まで昇り、そろそろ腹も減ったなあと思った頃、虎治の視界をのっそりとした影が遮った。
「本宮ぁ、ようやく見つけたぞ」
「げ、熊……じゃねえ、吉田先生」
　吉田先生は、まず墓前に手を合わせた。
　それから逃げ出そうとしていた虎治をひっ捕まえると、頭を両手で挟んでぐりぐりする。
「面談逃げ出すとはいい度胸だ、このバカタコがっ！」
「すんません」
　てっきり一発喰らうかと思った虎治の前に差し出されたのは、可愛い仔猫を模したころころ小さな丸いおまんじゅう「こねころころ」の箱だった。
「まーなんだ。飯時まで探させやがって。とりあえず食え」
　虎治は、土産物屋で「こねころころ」を買う熊先生の姿を想像して、うわぁ、と思った。
　思ったが、腹も減ってるし熊先生も恐いので、つぶあん味の白こねこを摘まみあげるや、ぽいっと口に放り込む。猫は若干苦手だが、口に入れば普通の饅頭だ。
　熊先生も、つぶあん、こしあん、カスタード、チョコの４種類をひとつづつ口に入れる。そして、人心地ついたところで「それでなあ」と語りかけた。
「本宮お前、高校卒業したらどうするか、婆ちゃんと相談したか？」
　……虎治は、婆ちゃんから貰った右腕の数珠に目を落とす。
「あと１年あるし、まだ道は決められねぇけど、……今んとこ、とりあえずマタ大」
「とりあえずマタ大か。よーし、婆ちゃんに誓えよ。はっはっは！」
　熊先生は、墓前にも「こねころころ」を供えてもう一度合掌。
　それから皐月晴れの空に向かって、「あー、お茶が欲しいのう」と叫んだのだった。

　虎治は熊先生と学校に戻り、２、３年生の進路相談な一日は、こうして幕を閉じた。
　最後に、ジャン先生が黒子に贈ったこの言葉を、寝子島の素敵な高校生のみなさんに贈ろう。

　「――グッド・ラック！　君等の道に幸いあれ！」

　＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ゲームマスターを務めさせていただきました、笈地行（おいちあん）です。
ご参加くださったみなさま、夢や、事情や、諸々お聞かせくださってありがとうございます。
進路相談については、リアクションがすべてになります。
故に今回個人コメントはほとんどございません。ご容赦くださいませ。

さて、１年生のクラス別授業シナリオが進行中ですね。
ちょっと寂しく思ってらっしゃる先輩の皆様方、
今後の２、３年生のイベントとしては、
らっかみ！タイムの５月中に３年生の修学旅行、６月には２年生の遠足があるようです。
こちらもどうぞお楽しみに！
（……と運営様の代わりに宣伝してお暇させていただきます）

それでは、またの機会がございましたら、お会いしましょう。笈地でした。

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