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【クリスマス】メリークリスマス、旧市街
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縄暖簾の前で、コートに被った雪を払う。
ビールケースに半分隠れた格子戸を潜った途端、ふわり、石油ストーブと炭火の熱気に冷えた頬を撫でられ、
志波 高久
は淡く笑んだ。
「今晩は」
「ああっ、志波さん! 良かった、来てくれた!」
カウンター越しに一人の老翁と差し向かい、焼酎の一升瓶を挟んで睨みあっていた熊じみた容姿の店員が嬉しそうな声で高久を迎える。
「誰も来ないかと思ってました」
「先客が居るだろう」
カウンターの奥の席で空のコップ片手に焼酎瓶を見据える老翁に軽く会釈しつつ、高久は店員に参加費を手渡す。
「あと、これ。時期的に、な」
差し入れだ、とカウンターに置いたのは、旧市街にある和菓子店で包んでもらったクリスマスモチーフの練り切り。
「ありがとうございます。……僕に足りないのはこういう気遣いなんですよね」
包みを受け取るなり大真面目な顔でぼやく店員に、奥席の老翁が焼酎のお代わりを要求する。
「ああ、飲みすぎです、山田の爺ちゃん」
「ああやっぱり、居た! じいちゃん!」
渋い顔をする店員の声に重なって、勢いよく格子戸が開いた。と同時、嗄れた大声が店内いっぱいに響き渡る。
勘三郎、と奥の席の老翁が陽気に笑う。
「さっきまで家族みんなで楽しんでただろ」
きつく叱ってもめげない祖父にこっちに来い、と手招きされ、
山田 勘三郎
は戸口で仁王立つ。秘蔵の焼酎が気になって気になって、家に帰る家族の輪からこっそり抜け出して『ハナ』に舞い戻ったのだろうが、
「貼り紙してあるだろ、おひとりさま、って!」
「先立たれて『独り身』だそうです」
「そうやって無理矢理入り込んで!」
店員の言葉に勘三郎は腕を組む。とは言え、祖父の顔は真っ赤っ赤。女将主催のクリスマス会でも上機嫌で呑み、更に飲み会の方でも盃を重ね、もうすっかり出来上がっている。腰を据え切り、帰るつもりは毛頭ないらしい。
明日一番暇だからと迎えに来させられたものの、この様子では帰宅までまだまだ時間がかかりそうだ。
どうしたものかと戸口に立ち尽くしていて、ぽん、と肩を軽く叩かれた。背後に立っていたのは、長い黒髪を雪風に揺らす明朗な笑顔の女性。
「ま、保護者同伴ってことでゆっくりして行けばいいんじゃないの、少年」
妖艶なお姉さんに肩を叩かれ、女の子に弱い男子高校生は思わず頬を赤らめる。しばらく視線を泳がせた挙句、
「いいから中入れてくれないかな、外は寒くて」
おどけた様子で自身の肩を抱いて震えて見せるお姉さんにこくこくと頷き返す。返事を言葉で返すのも照れくさくて、
黙って笑顔でサムズアップしてみれば、お姉さんは明るい笑い声を聞かせてくれた。
「いいね、少年」
「勘三郎君です」
「そーかそーか、勘三郎! あたしは
真境名 アリサ
、よろしくねー」
店員の言葉に大きく頷き、ついでに勘三郎の背を押して一緒に店内に入り、アリサはカウンター席しかない店の真ん中に腰を下ろす。
「今晩は、お兄さん、お爺さん」
木天蓼市内の水着ガールズバーにキャストとして勤める職業病か、先客の山田翁と高久にも惜しみない笑顔を振りまく。
さっきまでは勤め先でビキニサンタとしてお客と一緒になって大騒ぎをしていた余波か、気持ちの外側は無性に浮ついている。この冬の初めの頃に遭遇したような、キャストの女の子を巡っての客同士の喧嘩も、今日のところは幸い起こらなかった。
(チーフもさあ)
先だっての騒動で苦労をかけたから、と妙な気を回してイブの夜に早番に回してくれた店のチーフの顔を思い浮かべる。仕事が早く終わるのはありがたいと言えばありがたかったが、クリスマスイブの今日は、おかげで客からの誘いをあしらうのに苦労した。
(……ったく、いつから聖夜は性夜になっちゃったのかなあ……)
浮ついた心の底には、泥のような疲れが溜まっている。旧市街の家に帰ってベッドに潜り込みたい疲弊感はあったけれど、それを上回って、クリスマスイブの夜を仕事だけで終わらせるもったいなさようなものがあった。
だからこそ、ついこの前見つけたばかりではあるものの隠れ家のような佇まいが気に入って時折立ち寄るこの店に足を向けた。向けたはいいものの、入り口に貼りつけられたやけっぱちな『飲み会しましょう』の文字に、やれやれな気分になってしまった。
(要するにクリスマスを呪いつつ飲んだくれるという)
思いっきり負け犬根性丸出しの後ろ向きな飲み会、即ち、
(クルシミマス飲み会)
うっかり零れた溜息は、店員がお通し代わりに、と出してきた雪だるま型の練り切りを見た途端に華やかな笑みに変わった。
「可愛いわね」
「志波さんの差し入れです」
「ありがとうね、お兄さん」
にこやかに話しかけて、高久の心底不思議そうな眼と眼が合った。
「ん?」
「ああ、いや、不躾だった。すまない」
同じように目を丸めて見せると、高久は一言詫びてから考え込むように首を捻った。
「クリスマスイブに一人なひとには見えなくてな」
「なあに、ナンパ?」
「まさか」
笑い飛ばす高久に向け、アリサはあっけらかんと笑う。スポーツでもしているのだろうか、どこかストイックな雰囲気を纏った男ではあるけれど、
(天然タラシな感じね)
ブラック企業に始まりガールズバーに至って、お金と男を見る目がシビアになったアリサは、隣に座す高久の人となりをそう判断する。
「一人も一人、立派なおひとりさまよ」
威張るように胸を張る。
高校のときに恋人はいた。けれど、卒業して就職のために沖縄から本土へ出たため、関係は自然と切れた。悲しむ間もなく就職先はブラック企業、惨憺たる目に遭って何とか辞められたと思えばその後もなんだかんだとすったもんだで色々あった。恋どころではなかった、というのが正直なところ。
仕事柄、誘惑は多い。心が揺れる時もある。一夜の恋に身を任せたことだってある。それでも、大抵はそれっきり。
「文句ある?」
「いいや、無いさ」
おどけて喧嘩腰に言って、屈託ない返事を返された。
カウンター向こうの店員が、コップ酒をあおりつつ焼き鳥を焼きつつ、合間に分厚いハムフライや卵入りのポテトサラダやモツ煮込み、スズキの塩昆布和えやホタルイカの沖漬けに穴子と胡瓜と若芽の酢の物にしらすの卵とじにと、どんどんとおつまみを出してくる。
「勘三郎君はコーラをどうぞ」
お代わり自由だから、と目の前に二リットルのペットボトルと山盛りの焼き鳥をどんと置かれ、勘三郎は小さく頭を下げる。退路を断たれたかたちになってしまった。
(しょうがねぇ)
絶好調に酔っぱらいな祖父とは反対側の戸口に近い隅っこの席に腰掛け、勘三郎はなるべく目立たないように小さくなってもそもそと焼き鳥を食べ始める。そうしながら、人生の先輩方の話に耳を澄ませる。
「そうだ、寝子島駅前のイルミネーションは見て来たか?」
「見た見た、綺麗だったわ」
「シーサイド駅のミニスカサンタは?」
「帰りがいっつもこの時間だからね、見たことないわ。この時期は色んなサンタが居るわよね」
正直なところ、隣とその隣に座ったスポーツマンなお兄さんと美人なお姉さんが独り身だとは到底信じられなかった。とは言え、わざわざクリイマスイブに独り身飲み会に参加しているということは実際そうなのだろうとは思う。思うけれど、偶然隣り合っただけでこうも途切れず話が出来るのが大人というものなのだろうか。それとも酒席というのはこういうものなのだろうか。
(……勉強になるぜ)
最近の行事に関して尽きぬ話題を提供しながらゆっくりと盃を重ねる高久の精悍な横顔を窺いながら、勘三郎はコーラを啜る。それにしても、とカウンターの中で黙々と焼き鳥を焼き黙々と焼酎をあおる店員の姿を見てしみじみ思う。
(……俺の将来を見てるようで……)
勘三郎に見られているとも気付かず、店員は煤けた壁に掛けられた柱時計を見遣って肩を落とす。
「どうかしたか」
高久に問われ、店員は真剣な面持ちで悲しく笑う。
「今年もサンタさんは恋人を連れて来てくれそうにありません」
冗談なのか本気なのかも分からぬ表情で言いつつ、高久のコップに秘蔵の日本酒を一升瓶から直に注ぐ。
「恋人が出来たら一緒に呑むつもりだった、月下美人の花麹で造った酒です。花の香はしませんが、辛口で旨いです」
「しょっぱいわね」
茶々を入れるアリサのコップにも、店員はなみなみと酒を注ぎ入れる。
「サンタか、いつまで信じていたか……」
「割りと長いこと信じてる振りしてたわね」
店員秘蔵の酒を勢いよくあおり、お代わりを要求するアリサの隣、高久は鷹揚な笑みを零す。サンタクロースを信じていたのは、九つの頃までだっただろうか。
(きっかけがあったわけではないな)
両親の様子や、両親に欲しいと言ったものが置かれていたりという段階を経て自覚していった覚えがある。弟たちが生まれてからは、弟たちが熟睡したことを両親に知らせ、『サンタクロース』の手伝いをしたこともあった。
二杯目の秘蔵酒をもう一度きゅーっと飲み干し、アリサの目が据わる。二十一歳のイブも仕事で明日も仕事で、しかもイブの夜は居酒屋でクルシミマス飲み会と来れば、
(……なんだかアホらしくなってきた)
「今夜はもう徹底的に飲むぞ!」
「っス! 独り身がなんだー!」
アリサの気勢に便乗し、店員が今まで大事にお取り置きしていた白桃果実酒を喉に流し込む。
「仕事? そんなの知るかー!」
「っス! そういう夜もある!」
「独り身だからこそ出来ることも多いだろう」
やけ気味に盛り上がるアリサと店員に、高久は穏やかな笑みを向ける。向けながら、ふと考える。
(俺も身を固めたら……)
独り身でない己の想像がつかず、高久はそっと苦笑する。
「それはそうなんですが、……そうなんですが!」
「君もあまり悲観的になるな、逆に逃げていくぞ」
めそめそと独り身を嘆く店員を諭し、空になった店員のコップに逆に酒を注いでやる。カウンターの上には、店員が今日までに溜めこんでいたらしい、普段は店に見かけない甕入り焼酎や日本酒、海色したワインまでがズラリと鎮座している。酒にはわりと強くはあるが、今日はこれをどれだけ呑めるだろうかと内心のわくわくを隠さず破顔する。
「野郎同士でのんだり遊んだりも、またいいものだと思うがな」
それに、と隣席のアリサを見遣る。
「今日はこんな美人が居る」
「天然タラシだわ、天然タラシがここにいるわ!」
「志波さん実はモテるでしょう! 畜っ生、いいなあ!」
アリサと店員に酒の勢いで絡まれても、天然たらしな上に兄貴気質な高久は動じない。折角のクリスマスイブ、楽しんだもの勝ちというもの。
(楽しければ、それは最高のクリスマスの思い出となるだろうさ)
静かな呑みも、賑やかな呑みも、どちらも歓迎しようとばかり、高久は絡み酒なふたりに一升瓶を差し向ける。
「さぁ、のめのめ。今夜はとことん付き合おう」
「そう来なくっちゃね!」
「呑みましょう、酒もつまみもたくさんあります!」
なんなら勝負しますか、と店員に吹っ掛けられ、高久は迷わず勝気に唇を引き上げる。
「九州男児舐めるなよ」
大盛り上がりに盛り上がり、深夜も深夜に及びそうな酒宴たちの席をそっと外れ、勘三郎は酔いつぶれた祖父に肩を貸して立ち上がる。格子戸の曇硝子の向こうは相も変わらず雪が降り続いていて、夜道はすっかり白く染まっている。
(遭難したくねぇし)
人生の先輩方の酔っ払い話に聞き耳をたてていたくはあるけれど、これ以上長居すれば下手をすると朝まで帰れなくなってしまうかもしれない。
「勘三郎とお爺ちゃんはもう帰っちゃうの?」
焼き鳥片手のアリサに問われ、勘三郎は照れ笑いのままに頷く。
「気を付けてな」
「ありがとうございます、面白かった!」
天然たらしで兄貴な高久にも頭を下げる。
ふらふらに酔っ払いながらも、店員に二人分の会費を渡すことを忘れない祖父の背を支え、勘三郎は雪降りしきる店の外に出る。
(あーあ)
外に出た途端、吐き出す息が真っ白になった。
(ホワイトクリスマスも夜のイブもくそもねぇよ……)
祖父とふたりで歩き出して、ちらり、明るい光の灯る居酒屋を振り返る。
(けど、)
酔っ払いたちの明るい笑い声を背に、再び歩き始める。
(なんかちょっと悪くねぇよな。こういうのも)
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
49人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年02月06日
参加申し込みの期限
2016年02月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年02月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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