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滅びの呪文の夢現
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本当は、普段より早く帰宅の予定だった。
無理に無理を重ねて倒れた末に与えられた療養期間が明けてまだ間もない。いいから早く帰りなさいと口を揃えて言ってくれる看護師たちに気を遣いつつ、帰ろうとした途端に急患が入った。
――病み上がりの身で無理をして
看護師たちに叱られながら、それでも放ってもおけないと応急処置を施して後にもなんやかやと用をこなし、追い出されるように退勤したのが、結局午後九時。
ひとりきりの自宅に戻り、真っ暗な家に電気をつけることを思えば少し気が滅入った。ひとりきりの食事の準備に取り掛かる気にもなれず、気が付けば細い路地の果てに輝く赤提灯に引き込まれるように馴染みの居酒屋『ハナ』の縄暖簾をくぐっていた。
「いらっしゃい、深倉さん」
「あっ、お疲れさまです!」
いつもより遅めに訪れようと、いつもと変わらぬ女将と店員の笑顔を受けて、
「今晩は」
寝子島総合病院内科医、
深倉 理紗子
は淡く笑む。
コートを壁のハンガーに掛け、端の席に着く。入れ替わりに出ていった酔客が居なくなれば、客は理紗子ひとりきりとなった。
「お酒つけましょうか?」
里芋と烏賊の煮つけのお通しを出しながら言う店員に、緩く首を横に振る。
「倒れてから飲んでなくて。盛り合わせをお願い」
「はい、ありがとうございます」
女将が出してくれた熱いほうじ茶を啜りながら、里芋に箸をつける。焼き鳥を炭火で焼く匂いが漂い始める店内に、つけっぱなしのテレビから聞こえるは、元気のいい少年の声。
胸躍る音楽と共に映し出される、龍のような稲妻駆け巡る雷雲の中の城塞都市。
(また放送してるのね)
店員が届けた焼き鳥をのんびりと齧りながら、見始めると案外目の離せなくなるアニメ映画を眺める。
食事をするうちに宣伝を挟みつつも話は進み、テレビ画面には悪漢に追いつめられ、手と手を重ね合わせる少年と少女が映し出された。
(『ニャルタ』って都合五回は見てるのよね……)
『――ニャルス!』
途端、店内の電気が全て消えた。
「ッ?!」
いきなりの停電に、理紗子の元々小さな肝は一気につぶれた。声にならない悲鳴を上げて、思わず席から腰を浮かす。
止まりそうなほどに轟く胸に一息に蘇るのは、過労で倒れる前、宿直勤務でひとりで病棟を巡回した時のこと。
ごくり、喉が鳴る。その癖カラカラに喉が渇く。
必要以上に緊張していた。周囲へ気を張り巡らせ、針の落ちるささやかな音にすら総毛立たせて過敏に反応してしまいそうだった。
(……あの夜は本当に怖かった)
気づかぬ間に手首を擦っていたことに気付き、思わず苦笑する。あの時についた痣は、数日のうちに跡形もなく消えた。
「大丈夫? おかしいわね、懐中電灯もつかないの」
蝋燭を手に現れた女将に気丈な笑み浮かべて頷く。
ここには女将も店員も居る。驚きはしたけれど、流石に怖くはない。
「露天営業しましょう、露天営業。七輪と灯油ストーブ出しますよー」
何だか無闇に楽しそうな店員に言われるがまま、コートを羽織って外に出る。
「うわお、停電だー!」
「街よ、オレ色の闇に染まれー!」
普段から不気味に明滅する猫鳴館の裸電球やら切れがちな廊下の電灯やらが揃って一斉に光を失った途端、初手から薄っぺらい壁を突き抜けて、変わり者が多いと評判の猫鳴館寮生たちの歓声が聞こえた。次いで、次々に部屋のドアが開く音。うっかりするとあっさり抜ける廊下を賑やかに駆け抜けて、寮生たちが外へと出て行く。真っ暗闇な室内よりも、月明かりや星明りのある外の方が明るいということを、彼らはよく知っている。
ちょくちょく雨漏りする同じ屋根の下に暮らす寮生たちの楽しげな声を耳にしながら、
後木 真央
はけれど両手に動かないスマートフォンを握りしめて身動ぎもできずにいた。
布団の上に座り込み、真っ暗なままのスマホ画面を見下ろして、瞬きをひとつ。
突然の停電と共に電源の落ちたスマホの電源スイッチをもう一度押す。
もう一度。
もう一度。
「……えーと、」
呟いた声は恐ろしく嗄れていた。
「何でなのだ?」
ねこったーにも繋がらない。メールだって電話だって、電源が入らなければ誰とも繋がれない。
(何をすればいいんだろう)
頭の中が真っ白で、何も考えられなかった。
「えーと、……」
ねこったーのタイムラインには『大空の町ニャルタ』の実況で溢れていて、この様子ではもしかするとまたサーバーが落ちるかなとは思っていた。でも、停電になるとは思ってもいなかった。そもそも停電するにしても、
(スマホまで動かないのは何故だろう?)
暗闇に占めれた自室で身動ぎもできない真央を置き去りにして、楽しそうな寮生たちの声が玄関のあたりに集まる。誰かが探検に行こうぜとでも言い出したのか、ざわめきが固まって動き出す。遠ざかる。
闇と一緒になって、夜の静寂が圧し掛かってくる。
スマホは動かない。
脳裏に頼りになる友達の顔が浮かぶけれど、その誰にも連絡ができない。せめて笑える動画や心を明るくしてくれる音楽でも再生しようにも、それもスマホが動かなければどうにもならない。
しん、と寮の中が静まり返っている。
もしかするとここにはもう誰もいないのかもしれない。どれだけ耳を澄ましても誰の声も聞こえない。
(ひとりだ)
胸が、寂しさに轟く。
「あ、あ……」
孤独を抱え込んだ胸が苦しくて喘げば、泣き出しそうな声が零れ落ちた。
「あぁああぁぁあ~~」
堪らず喚く。闇に響き渡る自分の声にさえ怯えて、片手にスマホ、もう片手に戸口に置いた赤猫リュックを引っ掴み、部屋を飛び出す。玄関まで駆けることも忘れて窓をぶち破る勢いで開き、そのまま外へ駆け出す。
星明りを頼りに、獣道じみた細道を駆けに駆ける。
息が切れて足がもつれて、転がり込むように道端の大木の下に座り込む。
「にゃにゃにゃがおー!」
孤独の毒を消す、今はたったひとつきりの呪文を口にする。震える両手を丸めれば、目前の木の根にぼとり、福々しい三毛猫が現れた。
「がおー!」
咄嗟に逃げ出そうとするでぶ猫を両腕で抱きすくめる。
「がおーがおーがおー!」
もそもそもがく三毛猫がおーを力の限りぎゅうぎゅう抱きしめる。猫の温かさが頬に感じられるまで。腕の中の柔らかい生き物の心臓の音が感じられるまで。ひとりきりじゃないと理解できるまで。
猫を抱いたまま、熱帯びた息を吐き出す。星屑が綿飴みたいに引っかかって見える樹の梢を、冷たい風が鳴きながら渡っている。
「習慣恐ろしいのだ」
自分の居るのが九夜山の森の中であること、寝子島神社へ続く道であること、うっかり朝のランニングコースを走ってきてしまったことを認めて、真央は立ち上がる。あったかいがおーを身体の前に抱えたまま、旧市街に至る山道を辿り始める。
予感があった。
今から星ヶ丘に向かっても、きっと誰もいない。
(それなら)
このまま旧市街で誰かに会えないか探した方がいい。探しに行って会えないよりも、探し方が悪くて会えない方がいい。
(その方が)
寂しくなくて、ずっといい。
旧市街でこの時間に向かえそうな場所を考えてみる。
「今からお好み焼き、……はダメそうなのだ」
ガスの点火には電気が必要なのを思い出して首を横に振る。きっともう店じまいしてしまっている。
「うー……」
翡翠色の瞳に暗いばかりの夜道を映し、真央は真っ暗な旧市街に迷う。街灯の光も家々も店舗の光もない街並みは、まるでたったひとりきりで違う世界に彷徨っているようで怖かった。怖いと思ってしまうことさえ怖くて、抱きしめたがおーのもふもふの首に頬を埋める。
「……あれ?」
真っ暗な路地の果て、ぽつり、頼りなく揺れる赤い光。いつもなら見過ごしてしまうほどに小さな光が、今はとても心強かった。しぼんだ胸に冬風を満たし、真央は光目指して駆け出す。
駆け足に揺さぶられたがおーが、にゃあお、と不満の声をあげるとほとんど同時、真央は赤い光の元に辿り着く。
「あら、今晩は」
灯油ストーブにかけた小鍋へアルミ製ちろりを沈めながら、割烹着姿の女将が微笑む。
「こんばんはなのだ」
「お散歩? 暗い中大変でしょう」
ひらひらと手招きされるがまま、真央はストーブの前に置かれた長椅子に腰を下ろす。胸の前に抱いたがおーが、ストーブの熱に心地よさげに目を細めた。
山道を駆け降りる間に感覚を失くすほどに冷えた爪先や指先が、炎の熱にジリジリと痺れるように温まって、真央は小さな息を吐いた。ひと心地ついてぐるりを見回せば、傍らの席に物静かに座す黒髪の女性。
穏やかに笑む女性に頭を下げ返し、真央はストーブから離れた位置で七輪で焼き鳥を焼く店員を見遣る。
「モツとレバー、何もつけないで焼いて下さいなのだ」
がおー用なのだ、と付け足す。店員は得心顔で頷いた。
「真央ちゃんは焼鳥と、」
手羽先とモツとレバー、と続けようとした言葉を呑み込む。
「……出来ればのんびり焼いてほしいのだ」
心の中で謝りつつ、チビチビ頼むことにする。出来るなら、閉店までここに居座らせてもらおう。そう決めてしまえば、ずっと苦しかった心が少し楽になった。
「お待ちどおさま、深倉さん」
女将がちろりを届け、理紗子のコップに熱燗を注ぐ。
「一本だけでいいの?」
「久しぶりだから、一本だけで。……ありがとう」
倒れてから口にしていなかった酒のコップを両手に包み、理紗子はコップの縁に唇を寄せる。ふわり、湯気と共に上る酒の匂いに思わず口元が緩んだ。熱と共に喉に流れ込んだ酒は身体にスーッと染み入る気がした。
酒の熱帯びた息を吐き出し、もう一度、今度は喉を湿すほどに酒を含む。焼き鳥を齧りがら空を仰ごうとして、停電の夜に相席となった女子高生の横顔が視界の隅に入った。ふくふくとした猫をお守りのように抱きしめた少女の顔が、内科医である理紗子の瞳にはひどく心細そうに見えて、
「停電のせいか、今夜は星空がとても綺麗よね……」
思わずそっと話しかける。
話しかけてしまってから、物思いの邪魔をしてしまったかしらと不安になりはしたけれど、少女はどこか救われたような顔つきで、先に空を見上げる理紗子の視線に導かれるように空を仰いだ。
「綺麗なのだ」
「ね」
少女に微笑みかけて、理紗子は記憶にある限りの星座を数え始める。電気がいつ戻るかは分からないけれど、今はこの満天の星空の下、星を数え続けよう。静かな暗闇を楽しもう。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
16人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年01月20日
参加申し込みの期限
2016年01月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年01月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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