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- 00月00日生 00歳
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滅びの呪文の夢現
ニャルス、とねこったーの書き込み画面に打ち込んで、送信ボタンを押すか押さないかのその瞬間。
頭上の電灯が、テレビ画面が、手にしたスマホの画面さえもが、ナニカに断ち切られるように消えた。
己を取り巻く世界が一気に暗闇へと沈んで、
(おや？)
音羽 紫鶴はけれど声もあげず、ただ物静かに薄墨色の瞳を瞬かせる。
自室内どころか障子の向こうの外にも光の気配は窺えず、小さく首を傾げつつ膝立ちになる。着物に羽織の腕を伸ばして障子を開けば、外の庭にも庭向こうの塀を越した辺りにある街灯の光も、全てが闇に沈んでいる。
(これは……)
常夜灯の光も絶えて、庭に咲く椿を艶やかに照らすは月と星のさやかな光のみ。
(何か起こったみたいだね)
「へぇ」
黒髪に飾られた白い頬を楽しげな笑みに緩ませて立ち上がる。
こんな異変が起こる夜は、決まって何か面白い事がある。
齢十四にして日々の退屈に倦む少年は、それ故に『面白いこと』を求める。
障子を開く。暗闇と冷気に沈む廊下を過り、窓を開け放つ。使用人は床についているのか、周囲に人の気配はない。
沓脱石に揃えて置かれた草履に足袋の爪先を通し、その右足で地面を三回叩く。そうすれば、己が背に白の翼が宿る。
この島を訪れてより手に入れた、不思議の力。
『面白いこと』目指して真っ直ぐに飛んで行ける己がろっこんに微笑み、地を蹴る。翼を軽く羽ばたかせるだけで、少年の身は星月の空に舞い上がる。
「さぁ、行こうか」
身を包む北風の冷たさは、空に輝く満天の星を瞳に映した途端に消え去った。
(これだけ綺麗な星空は初めてかもしれないな)
地表を見下ろせば、常ならば煩いほどに灯の煌く島のどこもかもが闇に押し包まれている。あえかな月明かりに瞳を凝らせば、どうしようもなく頼りなく灯る炎の色もぽつりと見えた気もしたけれど、
(静かだ)
今は、空に輝く星月の方が眩しい。
耳元に渦巻く風の音にすら笑みを零し、少年は空に舞う。
(これはなかなか楽しいね)
白鶴の翼を広げる。風と共に空を自由に渡り、星の光映して地表よりも明るく見える海上に流れ着く。星の光を空に追ったその先に、音もなく浮遊する不思議の島。
先ほどまで視聴していた『大空の町ニャルタ』のような空の城に、紫鶴は瞳を細める。やはりこれも、ろっこん絡みの『面白いこと』なのだろう。
紫鶴は迷うことなく翼に風を掴む。
島を目指し、風を纏って進む。その空の道の途、翼の起こした風に煽られ、小さな雀が小さな翼の平衡を崩した。
「おや」
己の翼が起こした風に飛ばされ、くるりと宙返りさせられ、夜の海に落ちそうになる雀を伸ばした掌に包み、紫鶴は黒い睫毛を伏せる。
「ごめんよ」
つぶらな目を大人し気に瞬かせるばかりの冬雀のふかふかの喉元を指先に撫でて詫び、紫鶴は雀をそっと空に放つ。小さな翼を羽ばたかせ、雀が空に躍る。雀を迎えるように、暗褐色の翼広げた鷹が夜空に飛び出し雀と並ぶ。夜鷹だろうか。
再び空の城を目指しながら、紫鶴はちらりと首を傾げる。夜鷹は雀を襲わないのだろうか。雀は夜を飛べただろうか。
夜空に舞い飛ぶ白鶴の翼持った少年の背を見送りながら、ろっこんの力で雀の姿となった御巫 時子は、キョキョ、と詫びるように短く鳴くヨタカさんに応じてチチ、と笑うように鳴く。
(突然の停電は困りましたが……)
何が原因なのかを探るため、夜鷹のヨタカさんと共、空の散歩ついでに空へ飛んだ。鳥と会話するだけでなく、鳥に変身できる今は、以前と違って揃って空を駆けることができる。こういうとき、進化したろっこんの力はとても嬉しい。
今は雀に変化した服のポケットの中には、以前海の冒険で出会った雷鶏さんも居る。元の力を失ってひよこの姿となった雷鶏さんは、夜の今はうとうとしていたけれど、眠たいのを我慢してまでついてきてくれた。
(すぐ戻ると思ったのですが……)
冬風の中に地表を見下ろす。月星の光が降ってはいても、電灯の一切絶えた町には、まるで吸い込まれそうな闇ばかりが地面にわだかまっている。海岸には数人ばかりの人影が見えた。見知った顔も居たように思うけれど、ろっこんで鳥の姿になれることは、親しい鳥たち以外にはまだ内緒にしている。
警戒するようにヨタカさんが鳴いて、時子は小さな翼を羽ばたかせる。
白鶴の翼持つ少年が起こしたよりもずっと強い風を撒き起こして、雀の姿した時子の脇をナニカが凄まじい勢いで落下していった。風に流され、崩れそうになる体勢を必死に立て直しつつ空を仰いで、時子は目を見開く。
星月を背に、空に浮かぶ城。
(そういえば停電する前に観てたテレビにも同じようなお城があったような……)
停電の原因が空に浮かぶ城にある気もして、白鶴の翼持つ少年の後に続く格好で、時子は空の城を目指す。
頭上の電灯が、テレビ画面が、手にしたスマホの画面さえもが、ナニカに断ち切られるように消えた。
己を取り巻く世界が一気に暗闇へと沈んで、
(おや？)
音羽 紫鶴はけれど声もあげず、ただ物静かに薄墨色の瞳を瞬かせる。
自室内どころか障子の向こうの外にも光の気配は窺えず、小さく首を傾げつつ膝立ちになる。着物に羽織の腕を伸ばして障子を開けば、外の庭にも庭向こうの塀を越した辺りにある街灯の光も、全てが闇に沈んでいる。
(これは……)
常夜灯の光も絶えて、庭に咲く椿を艶やかに照らすは月と星のさやかな光のみ。
(何か起こったみたいだね)
「へぇ」
黒髪に飾られた白い頬を楽しげな笑みに緩ませて立ち上がる。
こんな異変が起こる夜は、決まって何か面白い事がある。
齢十四にして日々の退屈に倦む少年は、それ故に『面白いこと』を求める。
障子を開く。暗闇と冷気に沈む廊下を過り、窓を開け放つ。使用人は床についているのか、周囲に人の気配はない。
沓脱石に揃えて置かれた草履に足袋の爪先を通し、その右足で地面を三回叩く。そうすれば、己が背に白の翼が宿る。
この島を訪れてより手に入れた、不思議の力。
『面白いこと』目指して真っ直ぐに飛んで行ける己がろっこんに微笑み、地を蹴る。翼を軽く羽ばたかせるだけで、少年の身は星月の空に舞い上がる。
「さぁ、行こうか」
身を包む北風の冷たさは、空に輝く満天の星を瞳に映した途端に消え去った。
(これだけ綺麗な星空は初めてかもしれないな)
地表を見下ろせば、常ならば煩いほどに灯の煌く島のどこもかもが闇に押し包まれている。あえかな月明かりに瞳を凝らせば、どうしようもなく頼りなく灯る炎の色もぽつりと見えた気もしたけれど、
(静かだ)
今は、空に輝く星月の方が眩しい。
耳元に渦巻く風の音にすら笑みを零し、少年は空に舞う。
(これはなかなか楽しいね)
白鶴の翼を広げる。風と共に空を自由に渡り、星の光映して地表よりも明るく見える海上に流れ着く。星の光を空に追ったその先に、音もなく浮遊する不思議の島。
先ほどまで視聴していた『大空の町ニャルタ』のような空の城に、紫鶴は瞳を細める。やはりこれも、ろっこん絡みの『面白いこと』なのだろう。
紫鶴は迷うことなく翼に風を掴む。
島を目指し、風を纏って進む。その空の道の途、翼の起こした風に煽られ、小さな雀が小さな翼の平衡を崩した。
「おや」
己の翼が起こした風に飛ばされ、くるりと宙返りさせられ、夜の海に落ちそうになる雀を伸ばした掌に包み、紫鶴は黒い睫毛を伏せる。
「ごめんよ」
つぶらな目を大人し気に瞬かせるばかりの冬雀のふかふかの喉元を指先に撫でて詫び、紫鶴は雀をそっと空に放つ。小さな翼を羽ばたかせ、雀が空に躍る。雀を迎えるように、暗褐色の翼広げた鷹が夜空に飛び出し雀と並ぶ。夜鷹だろうか。
再び空の城を目指しながら、紫鶴はちらりと首を傾げる。夜鷹は雀を襲わないのだろうか。雀は夜を飛べただろうか。
夜空に舞い飛ぶ白鶴の翼持った少年の背を見送りながら、ろっこんの力で雀の姿となった御巫 時子は、キョキョ、と詫びるように短く鳴くヨタカさんに応じてチチ、と笑うように鳴く。
(突然の停電は困りましたが……)
何が原因なのかを探るため、夜鷹のヨタカさんと共、空の散歩ついでに空へ飛んだ。鳥と会話するだけでなく、鳥に変身できる今は、以前と違って揃って空を駆けることができる。こういうとき、進化したろっこんの力はとても嬉しい。
今は雀に変化した服のポケットの中には、以前海の冒険で出会った雷鶏さんも居る。元の力を失ってひよこの姿となった雷鶏さんは、夜の今はうとうとしていたけれど、眠たいのを我慢してまでついてきてくれた。
(すぐ戻ると思ったのですが……)
冬風の中に地表を見下ろす。月星の光が降ってはいても、電灯の一切絶えた町には、まるで吸い込まれそうな闇ばかりが地面にわだかまっている。海岸には数人ばかりの人影が見えた。見知った顔も居たように思うけれど、ろっこんで鳥の姿になれることは、親しい鳥たち以外にはまだ内緒にしている。
警戒するようにヨタカさんが鳴いて、時子は小さな翼を羽ばたかせる。
白鶴の翼持つ少年が起こしたよりもずっと強い風を撒き起こして、雀の姿した時子の脇をナニカが凄まじい勢いで落下していった。風に流され、崩れそうになる体勢を必死に立て直しつつ空を仰いで、時子は目を見開く。
星月を背に、空に浮かぶ城。
(そういえば停電する前に観てたテレビにも同じようなお城があったような……)
停電の原因が空に浮かぶ城にある気もして、白鶴の翼持つ少年の後に続く格好で、時子は空の城を目指す。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年01月20日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年01月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年01月27日 11時00分
