奇妙なお掃除｜リアクション

奇妙なお掃除

　時同じく、別の場所では。

「ひゃっはあーーーー！」
　テレビで外の様子を知った白真白が、元気いっぱいドアを開けて玄関から飛び出していた。
「おー、いるいる！　テレビのとおり！」
　額のところで手庇しをして、ふよんふよん宙を漂いながら空から降ってくるもこもこした丸い発光体を見て、真白はにんまり笑う。そして手近なところにあったヒンポン玉大のやつを指でつっついてみた。
「あー、やっぱりもふもふふわふわしてるね。
　特に害はなさそうだけど、たしかにこんなのがいっぱい道に落ちてたら邪魔にはなるなぁ。うーん……」
　つんつん。
　つんつん。
　そんなことをつぶやきながらつっついてたら、何かの拍子にパンッと爆発してしまった。
「わっ！」
　驚きはしたけど、小さかったせいか、そんなには痛くはない。
「これって結構簡単に消えるんだなあ」
　粉塵みたいなものになって宙に散ったそれが空気に溶けるように消えるのを見守っているうちに、真白はピン！　ときた。
「これってつまり、無双系のゲームのごとくひたすらこの白いのをつぶしてまわれと。そういうことだね！
　なら気合入れていくよ！」
　しゅるん、と髪をまとめていたリボンをほどき、腕からリボンに向かって力が流れ込むのをイメージする。
　真白のろっこんは薄いは堅い。このリボンのような物質を高質化することができるのだ。
「やるぞーっ！」
　目標は、某無双ゲ―のように一騎当千目指して1000体斬り！
　でも、手堅くまずは小目標100体から、ということで。
　鋼の剣のようになったリボンを手に、手当たり次第、目についたものを斬ったり、蹴り飛ばしたり、硬化を解いたリボンで鞭みたいにしてひっぱたく。爆発に巻き込まれないように駆け抜ける真白の後ろでは、斬られたもっふぁーのたちが爆発し、ついで、近くにいたやつも衝撃で誘爆して、なかなかのスペクタクルシーンとなっていた。
「ふっふっふ。完・璧！」
　肩越しに振り返り、その様子を満足げに見ていると。
「きゃっ！」
　曲がり角から黒い影が飛び出してきたと思ったら、何かがズボッと頭からかぶせられた。
「あっ、悪い！」
　虫取り網をかぶった真白を見て、かぶせた風雲児轟がとっさに謝罪を口にする。
「もー、何これー！」
　せっかくのいい気分がだいなし！　と網の向こうでむくれている真白に、轟は笑って網をどけた。
「悪い悪い。あいつらを捕まえるのに夢中で、気づかなかったぜ」
　全然悪びれない様子で笑っている轟には悪意のかけらも見出せず（ただし、本当に悪いと思っているのかも分からなかったが）、真白はひとまず溜飲を下げることにした。
「捕まえるって、それで？」
「そ。いい案だろ？　まあ、焼け石に水もいいところだけど、やらんよりはマシだと思ってさ。
　でもこれが意外と難しくて。あいつら、あんな見掛けしてるくせに、避けるのがうまいんだよ」
　ほら、と見せるように轟は壁の上でふよふよ漂っているもっふぁーのに向かって虫取り網をふるって見せた。しかしもっふぁーのはするりと網の通り道を抜けて、空振りに終わってしまう。
「ほらな」
「……避けてるっていうより、あなたの振りが速すぎて、起きた風に乗ってるんじゃない？」
「おお、なるほど！」
　真白の洞察に、ぽん、と手を打って納得する。
　心持ち、もう少し振り切りをゆっくりにして振ってみると、虫取り網のなかにもっふぁーのは収まった。
「やった！」
　網のなかのもっふぁーのを見て、思わずニカッと笑ったとき。

「いやーーーーーっ！！　だれか助けてーっ！？」

　女性の悲鳴が聞こえてきて、真白と轟は同時にそちらを振り返った。