怪人セブンの選択｜リアクション

怪人セブンの選択

　一方、日登美は高笑いをしていた。
「はっはっはっはっは！　これは鏡を奪うより面白い展開になった！」
　日登美は目の前で嗚咽を止めない恵御納を見て歓喜している。
　恵御納は蝿の大群が御剣を押しつぶした光景を見て、自分の中の感情に制御できなくなっていた。
「う、うぁあ……、うわあぁぁぁぁっ！」
　操られていた以上、正気に戻すには仕方が無かったのかもしれない。
　だが、それでも、恵御納は自分が被害を被った蝿の攻撃のトラウマを思い出してしまう。
　全身に集られて血を吸われ、耳元では気に障る羽音が蘇る。
「泉月花ああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」
　爆発したのは、『憤怒』だった。
　そして、なぜ今ままで感情を抑えていたのか、その『怠惰』を後悔する。
「お前だけは……！　お前だけはああああああああああああああっ！！！」
　恵御納は強く願う。
（力が欲しい！）
　恵御納のろっこんは進化能力を得て応用が効くようにもなった。
　しかし、純粋な攻撃系ではないのがネックだった。
　ゆえに、心のどこかではそれを『嫉妬』していたことに気が付く。
（あいつを倒せる力が、今すぐ欲しい！　それが『強欲』でもいい、ぶちのめしたいんだ……！）
　願えば願うほど、手が、足が、身体が、願いに適した体になっていく。
「これでいい……。これでいいんだ。僕は『傲慢』にも身の程を知らない願いをしたのだから……」
　その報いは、受けなければ。
（僕等や寝子島に害為すものを、食らい尽くしたい……！　僕が、皆が、フツウに生きる為に……！）
　彼女は月に吠えた。
　その身は既に人に非ず。
　両手両足には鋭利な爪が生え、牙は口元からのぞき、全身の金毛が月に照らされて畏怖を発する。
　ギョロリと大きな琥珀色の両目が獲物を狙い澄ます。
「叢雲が持つ器・欲・力等も、与える恐怖も……！　僕は、『暴食』でも構わない……！　これは……この姿は……」
　二足歩行の金色獅子は、涙を流しながら決断的に叫んだ。

「これが僕の罪だ！」