怪人セブンの選択｜リアクション

怪人セブンの選択

　灯斗南は静かに義憤を燃やしていた。
「見付けた……」
　目当ての人物を目視すると、迷わず行く手を阻んだ。
「ビリオン、聞きたいことがある」
「灯……！」
　退っ引きならない灯の様子に、風雲児がすぐさま立ち塞がる。
「退け、風雲児。用があるのはビリオンだ」
「もうビリオンは俺たちに協力すると約束してくれた。叩きのめすつもりなら、もうその必要はないぜ」
　灯と風雲児が睨み合う。
「……もしそうならビリオン、僕の質問に答えろ」
「いいだろう、なんなりと答えようじゃないか、赤毛の少年」
　ビリオンの返答に、灯の表情が一層険しくなる。
「……お前は、大の虫を生かすためなら小の虫を殺すのもやむを得ないのか？」
　つまり、九重の企てた計画は犠牲を払ってまで成し遂げる価値があるのか？
　それを灯は問うているのだ。
　これに九重は淀みなく答えた。
「もちろんだ。この世に犠牲を払わずに成し遂げられる業績など存在しない」
　これには庇っていた風雲児、後ろで聞いていた七緒と壬生も面喰らう。
「アンタ、さっきの反省の態度はどこいった……？」
　七緒が思わず苛立ちを声に出す。
「安心したまえ、璃音君。だからこそ被害を未然に防ぎ、俺の計画を潰してもらうように君たちへ協力しているんじゃないか」
「物は言いようだねぇ？　やっぱムカつくかも……」
　顔には出さないが、壬生も主導権をなかなか渡さない九重に不快感を示す。
　そして、九重の言葉は灯を激昂させた。
「……生憎、大の虫も小の虫も全部生かすのが”ヒーロー”ってものだ……！」
　食って掛かりそうな勢いの灯を、風雲児は身を呈して制止する。
「灯、ビリオンはもう全て知っている！　予言のことも、何もかもな！」
「だからなんだ……？　風雲児、僕はこいつを信用していない。可能性の芽がある限り、僕はその芽を摘む、いや、“焼き払う”つもりだ……」
「灯、落ち着け！　このポンコツトナカイを殴ったところで何の解決もしねぇぜ！？」
　ナチュラルに九重を蔑む風雲児に九重は肩を落とす。
「事実だからしょうがなくね？」
　七緒の言葉に九重は諦観の念を抱かざるを得ない。
「やめなよー、喧嘩してる場合じゃないよねぇ？」
　壬生もこのやりとりにうんざりしているようだ。
「……おかしいよ、どうして仲間同士でいがみ合うの……？」
　今まで黙っていた十文字も顔を強ばらせながら灯に問い掛ける。
「……灯、今は振り上げた拳を収めてくれ。頼む……！」
　風雲児が頭を下げる姿に、灯は侮蔑の目を向ける。
「それが答えか、風雲児。……いいだろう。僕は僕のやり方で裁く」
　踵を返して遠ざかる灯。
「おーい、単独行動はあぶねーぞー！？　死ぬぞー！！」
　七緒の忠告を無視して、灯は廊下の角を曲がって姿を消した。
「行っちゃったねぇ……」
　壬生がどうしよ、と言いたげに仲間を見遣る。
「……あいつとは、いつか分かり合いたいんだがな。仕方がない、俺たちは１Ｆへ急ごう」
　九重が４Ｆのプールに装置を仕掛けたことを打ち明けていた。
　彼らは灯の無事を祈りつつ、４Ｆへ向かった