悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

「……そうですか、ここがかの有名な『彼』のいる所なのですね」
　普段は寡黙な常闇月が口を開いた。
「この場に満ちた空気は、私が思い出したくない過去をいやがおうにも思い起こさせてきますね」
　秘めた過去を持つ彼女にとって、連続猟奇殺人犯との対決は、ひどく因縁めいたものを感じるらしかった。
「クリスマスの時期にちなんで、今回はキリスト様の誕生に立ち会えるかもなんて思って期待してたのに、切り裂きジャックだなんて……がっかりですよっ！」
　クルジッカは頬を膨らませた。
「おまけに、哲さんに怪我までさせるとは……許すまじですよ！」
美咲紀は、緊張した面持ちで言う。
「あの有名な切り裂きジャックですか……洒落にならない相手ですね。リーダーに従ってチームで動かないと、私たちマジで生命が危ないのです！」
「各自の能力を生かした策を立てたい……まず奴をおびき寄せるには？」
　修の言葉に、美咲紀が手を挙げた。
「私が囮役を買って出ましょう。この時代の人を使ってもその人が危険です」
　クルジッカが口を挟んだ。
「ふむ、既に5人の犠牲者が出ているということは、仮に6人目が襲われてしまうと歴史改変が起きてしまいます。ワタシは出歩いている民間人を探して、護衛をしたいです。ジャックの注意をひく囮も兼ねて……」
「囮作戦を取るなら、娼婦の衣装が必要だな。時計を代金にして、借りてこれないか。アジトになる場所も確保したいし」
　修が提案するが、哲が答える。
「おそらく、それは難しいだろう。ここの住民は、今不審者に対して相当気が立っているはずだ。いつもと違って、僕が官憲の偽書類なんかを用意してくる余裕もない」
「ともかく、危険が迫っているのは確かなんだ」
　風雲児轟が口を開いた。
「この近辺には人がいなさそうだし、さっき築地を刺したってことはかなり興奮してる可能性もあるから、犯人は見ればすぐわかるんじゃねえかな？まずは周囲を捜索すべきだと思うぞ！」
「ボクもそれに賛成だ」
　新井すばるも同意する。
「奴がまだこの付近にいるとは……しかも他者の影響で見境なしに襲ってくるなんて、そりゃいかにもまずい」
「道端で、時々野良猫を見かけたわ。捜索なら、私のろっこんが役立つかも」
　神野美野梨が申し出ると、ブリジット・アーチャーも賛成した。
「夜行性の猫なら、ジャックの犯行を見ている可能性はあるものね。美野梨の能力には期待できるわ。なにか手がかりでもつかめれば、次の犯行を防げるかも知れないしね」