悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

「……さて」
　衰弱した築地哲を、廃材置き場の材木の影に隠した御剣刀は、人気のない表通りに出た。
「切り裂きジャックの名前は聞いたことがあるけれど、実際はどんな奴なんだ？具体的に分からないと戦いようがない」
　哲を傷つけた犯人は、そう遠くにはいないはずだ。足止めと様子見を兼ねて一度迎え撃ち、適当なところで逃げることにしよう。
　通りを歩き始めてまもなく、刀は殺気を感じて刃引き刀に手をかけた。背後から近づいて来る人影が目に入る。人影の手に光るものが見えたとき、刀は反射的に戦闘態勢に入った。
　
　黒いコートを羽織ったその男は、無言で鋭利なナイフを構えた。刀は、防御しやすいように一旦間合いを離して、相手に全神経を集中させた。視線や呼吸、肩やつま先の動き、気配や重心のバランスから、相手の動きを読み取る。恐ろしい程重心にぶれが少なく、隙がない。
　男が飛びかかってくるより一瞬早く、刀は攻撃を見切った。相手の死角に回り込むように体をひねり、突き出されたナイフをかわす。一瞬の隙を見出した刀は、刃引き刀を袈裟懸けに振り下ろした。

「―――馬鹿なっ！」
　手応えはあったはずなのに、相手はまだ二本の足で立っている。相当頑丈だ―――何かしらの強化を受けているのか？
　刀の体勢が戻る前に、男はナイフを振りかざした。まずい、と思った瞬間―――
　鈍い音のあと、ナイフが転がる音がした。相手が体をよろめかせるのが見える。

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