悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

　切り裂きジャックは、煮えたぎるような怒りを覚えた。この程度の攻撃で動けなくなることはないが、自分を小馬鹿にしたような相手の動きが気に入らない。
　灯斗南の放った炎が、またジャックを足止めした。さっき追い詰めたはずの相手も、息を吹き返したように向かってくる。形勢は逆転してしまったのだ。
　その矢先、彼の後頭部に小石がぶつかった。もとよりダメージを受けるはずもないが、その石を投げた主が見当たらないとは―――？

　仲間が危険そうになった時を狙って、十朱此方はまたジャックの背後から石を投げた。彼女の姿は、ろっこんによって見えなくなっている。相手がもっと混乱するよう、人が隠れられそうな場所からもあえて投げるようにした。姿が見えなくても、ジャックは気配を察知して攻撃してくるかもしれない。動作をよく見て、警戒を忘れない。
「あたしは逃げない。逃げたくない」
　姿を消して戦うということは、もしかしたら逃げなのかもしれない。それでも、そのほうがジャックに勝てる可能性があるなら―――こうして戦うべきだ。
此方は、石を投げる手にさらに力を込めた。

　応戦を続けるジャックの眼前に、突如奇妙な服装をまとった男が姿を見せた。

「お前が切り裂きジャックだな！俺は『ザ・ストレイト』だ！」
　ろっこん〈戦衣着装〉によってヒーローとなった風雲児轟だった。苛立ちを募らせている殺人鬼にとって、正面から向かってくる敵は願ってもなかった。相手が突進してくるのを見て、轟は彼が目的の人物であると確信する。
「やっぱりそうか、ここでお前を止める！」
　轟は拳一つでジャックにぶつかっていった。相手は刃物を持っているため、リーチでは不利になりかねない。だが、味方にはろっこんで有利になれる者、ナイフよりリーチのある武器を持っている者もいる。攻撃は彼らに任せ、轟はジャックを引き付け、仲間を攻撃しにくくさせる役に徹した。
「歴史を変えるのはいけねえことだけど、このままじゃ死ななくてもいい奴らが殺される。一緒に飛ばされてきた島の皆も危険だ―――そんなことは絶対許さねえ！」
　フットワークを活かして左右自在に動き回り、ジャブを突き出して牽制した。隙あらば、距離を詰め、右ストレートを叩き込むことも厭わない。轟は思い切り啖呵を切った。
「武器がどうした！凶器が怖くてローカルヒーローがやれるかぁ！」