悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

　教会裏手の袋小路に追い詰められた灯斗南は、肩で息をしながら相手を睨みつけた。ろっこんの炎で牽制できるためさっきの頬の傷だけで済んでいるが、こちらからも有効的な攻撃を加えられずにいる。失神していた偽ジャックは、息を吹き返して逃げたようだ。せめて、あの女の人だけでも守れたら―――
　斗南が覚悟を決めたとき、こちらに向かってくる足音が聞こえた。切り裂きジャックも、ナイフを振り上げたまま背後を気にした。一人や二人ではなく、大勢の仲間が走って来ているのが分かる。よかった、間に合ったか―――

　切り裂きジャックのもとに真っ先に到達したのは、常闇月だった。教会の外壁のでっぱりをわずかな足場として確保するや、月は殺人鬼の右手に向かって鋼糸を射出した。丈夫な鋼糸で利き手を拘束する算段だ。
　鋼糸はジャックの右手で弾かれるが、月はなおも手を緩めず、反対側の壁に猫のように飛び移った。
「―――改めて自己紹介を。ジャック・ザ・リッパー」

　高所を縦横無尽に飛び回りながら、月は切り裂きジャックに向かって名乗る。
「私はウルフズベイン（鳥兜）……あなたを、倒すものです！」

　鈴野海斗は、ジャックの注意が月に集中したのを見切った。
「突撃準備よし！」
　掛け声とともに、海斗はろっこんを発動させ、ばねじかけのようにジャックに向かっていった。迷うことなく、渾身の力をもって足から腰にかけての部分を横払いに殴りつける。
　スコップを持った右手に手応えを感じつつ、その勢いを利用していったん相手から離れる。月の攪乱からジャックに隙ができると、海斗は再びスコップで一撃を狙った。動きを阻害するため、狙うは手足、難しければ肩や鎖骨、腰あたりにダメージを加えたい。