悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

　目の前に立っていたのは、奇妙な仮面をかぶった男だった。手のひらからは、煮えたぎる怒りを示すかのように激しい火柱が立っている。
「なんだ、お前は！」
　たじろぐ凶漢に向かって、仮面の男は答える。
「仮面の始末人、とでも」
　仮面の男はそう言って、更に勢いを強めた炎を凶漢に噴出した。相手が身をすくめた瞬間、仮面の男の拳が鳩尾に入る。凶漢はたまらず地面に伸びた。
「……やけにあっさりとしてたな。君、怪我は？」
　仮面を外した下から現れたのは、灯斗南だった。
「ありがとう、私は大丈夫よ。ここは一体？」
「19世紀末のロンドン、切り裂きジャックのうろつく街だ」
　寧々子は驚いて言った。
「まさか！それじゃこの人が……」
「そう―――だけど」
　斗南は倒れている男をじっと見つめる。
「黒のコートは特徴に合ってる。でも、何かおかしい―――」
　斗南は切り裂きジャックの犯行について思い出す。娼婦が抵抗する間もなく殺されている……おそらく、客として近づいて油断したところを襲ったらしい……そう、被害者の女性に抵抗されるような隙を全く見せていない！
「―――ということは、こいつは……」