悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

『目撃猫』から集めた情報を元に、美野梨は切り裂きジャックの特徴を整理した。
「20～30代ほどの男性、身長は175センチ程度、やせ型、身なりはきちんとしており黒系統の上着―――信憑性のあるジャックの特徴はこんなところかしら」
「さっき刀っちや尾鎌くんの話していた特徴とも合致するね」
　すばるが言い添えると、美野梨が正統派の推理を始める。
「誰かれかまわず襲って来ると言っても、一番危ないのはやはり娼婦でしょうね。確かに、追うよりも囮を使って待ち伏せるのは理にかなっているわ。あとは、ジャックが今どのあたりにいるか……もっと聞き込みをしないと」
「ああ、これ以上の殺人はもういらない。意図のない殺人が史実に混じれば、丹念に織られた布も台無しになる。奴を止めなきゃ……ブリジットさん、いいね？」
　ブリジットが、すばるの言葉に答えた。
「でも、私や美野梨は荒事が苦手だから、いざとなればすばるに任せるわ」
「もちろん、二人のことはボクが命に代えても守るよ。約束だ」
　すばるがきっぱり答えるのを聞いて、ブリジットは微笑みながらスマートフォンを取り出した。
「ありがとう。当然、私もバックアップはするわ。19世紀の人間には、小さな板から音や光が出るなんてわからないでしょうからね。ホームズのドラマの動画が入ってるから、警笛の音を抜き出して警察が来たように思わせることもできるわ」
「ふふっ」
「どうしたの？」
　すばるは、笑いを漏らした理由を説明した。
「史実に猫の情報を加えてジャックを追える日が来ようとはね……ああ、ボクはダメな人間だ。わくわくしてしまっている」
　知的興奮を隠せないすばるに、ブリジットと美野梨は顔を見合わせて笑った。