悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜｜リアクション

悠久の時の彼方へ～切り裂きジャックの嗤う夜

「そういうわけで、切り裂きジャックを捕らえる協力をお願いしたいのです」
　八神修は、保護したジェニーに対して事情を説明した。娼婦に化けるための衣装と、捕縛のためのロープを借りられないか。紫と、大事を取って哲を夜明けまで家に保護してもらえないか。警戒されないよう、紳士的な振る舞いや話術に気を使った。
「古い服でよければ、貸してもいいわ。あんたたちも無茶をするわねぇ」
「目立ちたくないから、男物の服も欲しいんだけどもな。労働者でもいないか期待したけど、街にはほとんど誰もいないべ」
　海斗が言うと、ジェニーが申し出る。
「うちの爺様のボロ服ならあるわよ」
「ありがたいべ。オラのジャケットとネックウォーマーを、お爺さんのジャケットと帽子と交換してほしいべ。ずっと良質な生地で、防寒性にも優れてるから得だと思うっちゃ」

　ジェニーの下宿にあった服を借りて、囮役は衣装替えをする。
「白人であることが、ここで生かされましたね」
　クルジッカ・ヘルマゴルは自分の服装を確認した。コルセットの上に着込んだドレスは、古びていて派手な色目だが決して下品ではなく、ヴィクトリア朝の女性らしさをよく表していた。
「新入りの娼婦で、この辺りのことがよく分かっていないように振舞いましょう。そうして相手の油断を誘います」
　椿美咲紀も、同じく着替えを済ませた。
「綺麗な衣装ですね……胸の大きさ等、セクシーさは本物に負けますけれども！それっぽい格好をすればそれなりにですよ。……ぐぬぬぬ」
　服の仕立てから、ジェニーとの体型の差を察知した美咲紀だった。
「コルセットの下には、古雑誌やシーツなど、防御できそうなものを詰め込みました」
　実は胸囲の部分もかさ上げしてあるが―――