変態の軍隊 Revolution ～葉っぱ１枚でも寒くない～｜リアクション

変態の軍隊 Revolution ～葉っぱ１枚でも寒くない～

【生徒会長とスケバンの思惑】

　この日、俺達は思い出した……。
　神魂という名の恐怖を、らっ倫の壁にとらわれ……

「って、ちょっとタンマ！　何だこの謎ナレーション！　俺が呟いたの、ねえコレ！？　ネタ的にアウトじゃねコレ！？」
　志波武道は珍しく取り乱していた。
「志波先輩、落ち着いてください！」
　御剣刀が志波の左頬に躊躇せず平手打ちを放った。
　志波の伊達眼鏡が５ｍほど吹き飛んでアスファルトの地面に激突、右のレンズが粉砕した。

『がはっ……！　お、お前は死ぬなよ、左のレンズ……』
『いやぁぁぁぁ！　右のレンズゥゥゥゥーッ！！！』

　そんな幻聴が聞こえた志波は、砕けた右のレンズの最期の言葉に涙した。
「どうですか？　落ち着きましたか？」
「……ウン、スゴク落チ着イタ……伊達眼鏡デ、ヨカッタケド……マタ、買イ直サナキャ……」
　相手の行為に悪意がないだけに、怒ろうにも怒れない志波だった。
　床に転がった眼鏡を、風紀委員の稲場舞が拾い上げた。
「志波先輩。眼鏡属性は不憫属性といいます！　この先の戦い、眼鏡を掛けた志波先輩は真っ先に不憫な事案に巻き込まれるのは必然なのです！」
「ほうほう、それは困るナー。で、舞ちゃん、俺の眼鏡をドウスルキナノカナ？」
　志波が一抹の不安を抱きながら稲場に尋ねた。
　すると稲場は自信たっぷりにこう告げた。
「私は風紀委員として、皆さんを変態の魔の手から守る義務があります！　ですから、そのリスクを減らすためにも、こうするのです！」
　稲場は眼鏡を床に叩き付けると、その足で左のレンズを踏み砕いた。

『マスター、ごめんなさい……。私……粉々になっちゃった……』
「うおおおおおォォォ！　左のレンズゥゥゥゥゥゥゥーッ！！！！！」

　またしても幻聴が聞こえた志波は絶叫した。
「フレームは形状記憶合金だったから良かったけど、ちょっと酷くないか、この仕打ち！？」
「志波先輩、属性は重要です」
　御剣が神妙な顔で口を開いた。
「俺なんて、女子がそばにいると自分で望んでなくても勝手にラッキースケベが発生したり、勝手にハーレム要因が増えたと揶揄されたり、勝手にクルミを割らせろと襲われるんです……。最近は変態ポジションとまで言われて、散々ですよ……」
　そばにいた稲場が無言で御剣から２ｍほど離れた。
　御剣は肩を落とす。
「稲場、露骨すぎだ……。春から起こってる一連の不運は、俺の意志とは違う、何か別の意志が働いてる気がします。よく分からないですけど『御剣君はァ不憫属性でェ～鈍感ハーレム属性のラキスケ体質でメシウマだよね～！』とか訳の分からないことも言われました。だから志波先輩。自分の不利な属性がつく前に、不安材料は粉砕すべきです！」
　御剣は志波から眼鏡フレームを奪い取ると、猫又川へ向かって思いっきりぶん投げた。

『ここでサヨナラだ……。君と暮らした日々……忘れないぞ！』
「フレームゥゥゥゥゥッ！！　カンバァァァァァァァァックッッッ！！！」

　ポチャン、と冬の川底へフレームが沈んでいった。
「これで志波先輩のブーメランパンツが剥ぎ取られる心配はなくなったな、稲場！」
「そうですね！　生徒会長はよく人前で脱衣する時点で色々と倫理観スレスレですけど、流石にブーメランパンツまでなくなったら擁護できませんから！」
　御剣と稲場は硬い握手を交わした。
　２人は大仕事をやり遂げた満足気な顔だった。
「……ウン、俺の尊厳を守るために伊達眼鏡は犠牲になったんだ。お前の犠牲は無駄にしない！」
　涙をこらえた志波が２人に向き直った。
「そろそろ本題に入ろう。あと２人とも弁償な？」
「「アッハイ」」
　２人はその場で深々と頭を下げた。