変態の軍隊 Revolution ～葉っぱ１枚でも寒くない～｜リアクション

変態の軍隊 Revolution ～葉っぱ１枚でも寒くない～

【裏生徒会粛清部の暗躍】

　場面は変わって、ここは寝子島高校の関係者でもごく一部にしか知られていない秘密の場所。
　具体的には学校から徒歩15分圏内の何の変哲のない雑居ビルの地下に存在する創作和食の食事処だ。
　店に至るための階段の壁には、様々な文言が書かれたポスターが所狭しと貼られていた。
　その内容は、一般人なら恐怖で階段を踏み出すことはおろか卒倒するだろう。
　なぜなら、

『高級スシ』
『時価テンプラ』
『ソバもヤバイ値段』
『安心な産地』
『会員制スゴイ』
『ひやかしは囲んで棒で殴る』
『カネ払え』

　などの脅迫めいたものばかりなのだ。
　だが、裏生徒会のメンバーはこの程度のプレッシャーに揺らぐことはない。
　むしろ対変態戦闘における強靭なマインドをここで養うのだ。
　ここを通過できるものが選ばれた戦士であり、倫理の守護者になるのだ。
　誇りを持って階段を下りた先の重い鉄の扉を開けると、裏生徒会の憩いの場がそこにある。
　今宵、３人のエージェントが裏生徒会長……すなわちシトラスガムダンから直々に招集命令を受けて馳せ参じた。
「裏生徒会長に呼ばれた、エージェントの矢萩咲だ」
　咲は裏生徒会所属の証である『桃を食らう鬼』の意匠の金バッジを見せた。
「同じくエージェントの哀坂極夜です。ご確認ください」
　極夜も同じように、入口に立つボーイに金バッジを見せた。
「俺もエージェントの……って、おい！　なんで俺を取り押さえんだ！？」
　七峯亨だけが強面のボーイ２名にがっちり両腕を掴まれてしまった。
　するとボーイの１人が亨に告げた。
「お前はＰＥＣ隊員だろう？　なぜここにいる？」
　どうやらＰＥＣ隊員の面は裏生徒会関係者の隅々に知れ渡っているようだ。
「待ちなさい。亨君は咲の恋人だ」
　咲はボーイの１人の空いている腕をアームロック！
「……咲の大切な人から手をどけろ！」
「も、申し訳ありません、矢萩様……！」
　ボーイ２人が慌てて亨から離れた。
「ほら、金バッジだ！　桃色スーツを着ていないのに不審者扱いかよ？　せっかくスーツ着込んで泊がついたと思ったらこの扱いかよ……！」
　亨は掴まれた両腕を交互にさすりながら咲へ礼を述べた。
「咲、助かったぜ」
「いいの、亨君。咲は今夜、２人の恋人と一緒にいられて幸せなんだもの……。無粋な真似をする輩は、咲が止めるわ」
　スーツにロングコートと、まるで映画のスパイのような姿の亨。
　彼がここに来るためのケジメでもあった。
　そしてシックなワンピースドレス姿の咲もメロメロになっていた。
「私の姿にも何かコメントもらえると嬉しいですね……」
　負けじと極夜も黒のスーツ姿だ。
　ここへ入るためのドレスコードは正装。
　学生ならば学生服でもいいのだが、彼らはエージェント。
　エージェントは形から入るものなのだ！
　咲は極夜の顔に手を添えてにっこりと微笑む。
「今夜もとても凛々しくてかっこいいわ、極夜君……」
「ありがとうございます。ああ、女性が苦手な私でも、咲先輩に触れられると心が躍る……！」
　極夜と咲がイチャつくと、亨が咲の手を握って前へ進み出た。
「咲、シトラスガムダンの旦那を待たせてるんだから急ぐぞ？」
「あっ、そんな強引な亨君も好き……！」
　咲はデレデレのまま亨に手を引かれていった。
「……やれやれですね」
　極夜は苦笑いしながら後を追う。
　三角関係のまま恋愛成就するという稀有なケースが起き、３人は晴れて恋仲になった。
　１人の女性を２人の男性が愛を注ぐといういささか歪な関係だが、３人の関係は良好のようだ。

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