サンタクロースの贈り物～ニャンタクロース♪～｜リアクション

サンタクロースの贈り物～ニャンタクロース♪～

「随分唐突よね」
　木天蓼大学寝子島キャンパスの構内で、城山水樹はニャンタクロースに遭遇していた。
「その割にはあんまり驚いていにゃいのニャ」
「細かいことは気にならないのよね。そのリストの人々を助ければいいんでしょう？」
「そうニャ。この大学にも困っている人がいるのニャ」
「この大学に？　どのあたりかしら」
「たぶん、あっちのほうな気がするのニャ」
　ニャンタクロースが、指差す方角には、家庭科室と図書室と、それに視聴覚室がある。
「近いところから順に見て行きましょう」
「手伝ってくれるニャ？」
「丁度暇だったしね。お手伝いもたまにはいいでしょ」
　それに、なんだかいい事をすると、巡り巡って自分も幸せになれそうな気がするしね。
　水樹はそんな事を思いつつ、一番近かった家庭科室を覗いてみる。
「誰もいないかしら？」
「いニャいようだニャ」
「一応中を見ておきましょうか」
　水樹が一通り、家庭科室をチェックしてみる。
「あら、危ないわね」
　コンロのひとつにスイッチが入っていた。
　火は出ておらず、ガスも止まっているが、あまり良い状況ではない。
　くるっとつまみをひねり、きっちり止める。
「チェック漏れかしらね。他のコンロももう一度見ておきますか」
　水樹が再チェックをしてみると、危なかったのは一つだけだったようだ。
「困っている人も猫もいないから、ここは偶然？」
「そのようだニャ」
「まぁよしとしましょう。次は、図書室よね」
　水樹は階段を上がり、図書室へ向かう。
「……人がいないなんて珍しいわね」
　図書室につき、水樹は首を傾げたが、すぐにその理由を察する。
「あぁ、そういえば、今日は司書の先生と図書委員が読書感想会だから、夕方は閉鎖だったわ」
　入り口の横に張り紙があったのだ。
　貸し出しは出来ないが、返却は出来るようにドアの鍵は開いているようだった。
「そうなると、ここもハズレかな」
　一応、水樹は図書室を見て回る。
　どこも異常はなさそうだったが、なんとなく、水樹は資料室に足を踏み入れた。
　その瞬間、水樹唖然とした。
「あっ」
「わわわわわっ？！」
　見たことのある青年が床に散らばった資料を涙目でかき集めていた。
　資料室の本棚のひとつが倒れ、隣の本棚に引っかかっている。
「これは一体？」　　
「ああああっ、教授じゃなかった！　ええっと、助けてください、これ、倒しちゃって……っ」
　パニックを起こしている青年は、おろおろと両手に資料を抱えたまま動けない。
　水樹はぬいぐるみの振りをしているニャンタクロースに、こそっと耳打ちする。
「これ、どうにかしてあげれる？」
「任せるニャ。水樹に、パワーを授けるニャ」
　くるっとニャンタクロースが杖を振ると、水樹の身体に力が湧き上がる。
「あなた、そっち側を押さえてね。私はこちら側を押さえるわ」
　青年に指示を出し、水樹は本棚の下にもぐりこんで両腕に力を込める。
　まだ大量の本が詰まった本棚が、ぐぐっと揺らぎ、元の位置に何とか立った。
「さあ、あとは資料を片付けましょう。大丈夫、すぐに終わるわ」
　青年に見えないよう、ニャンタクロースがクルクルと杖を回しているのだ。
　適当に資料を本棚に詰め込んでも、いつの間にかきちんと順番どおりに並んでいる。
「教授がもう戻ってくるところだったから、本当に助かりました！」
　涙目でお礼を言う青年。
（ニャンタクロース、最高ね）
　水樹はニャンタクロースを抱きしめながら、ふふっと笑った。