サンタクロースの贈り物～ニャンタクロース♪～｜リアクション

サンタクロースの贈り物～ニャンタクロース♪～

　今日も綾辻綾花は本屋に足を運んでいた。
　学校帰りに寄る事はほぼ日課となっていて、毎日本棚の本を眺めていると、気持ちが落ち着くのだ。
（今日の新刊は寝子島出版の『猫のいる街角で』と『猫と暮らす２７の方法』ですか。二冊とも購入してしまうべきでしょうか）
　本の中を少し覗いてみると、口絵部分に写真が何枚も掲載されていた。
　猫好きの綾花にとって、この本は買いだった。
（ん？）
　ふと。
　足元に柔らかい気配を感じて、綾花は本から足元へ視線を移す。
　その瞬間、息を飲んだ。
「ニャンタクロースにゃん♪」
　にこっ。
　二足歩行でサンタ服着用の猫が、ニコニコと前足を上げて挨拶する。
「可愛いです」
　即座に抱きしめた綾花は、無類の猫好きだった。
　寝子島に住むすべての猫の姿を猫手帳に納めているといわれるほどに。
「さすがニャ。俺達を見ても驚かないのニャ」
「喜びで胸が一杯です」
「うんうん、そういって貰えると、ニャンタクロース冥利に尽きるのニャ。大抵皆、驚くのニャ」
「二足歩行でしょうと、人語を解していようと、猫であることですべて正義です」
「言い切ったニャ。大物ニャ。実は、お願いがあってきたのニャん」
「猫のお願いなら何でもお伺いします」
「このリストにある、お手伝いを必要としている人々を、助けてあげて欲しいのニャん」
「肉球リストですか。私のいる寮にも野良猫ちゃん達が遊びに来ているんです。その子達のお願いも書いてありますか？」
「もちろんニャん」
「ぜひうちの寮に来てください。炬燵もあるんです」
「炬燵！　最近めっきり減ってしまったのニャん」
「ええ、そうですね。エアコン主流ですよね。まずは温まりましょうか」
　笑顔でニャンタクロースと話しながら、綾花はふと、鞄から猫手帳を取り出す。
「でもその前に、少し、メモを取らせてください」
　綾花の猫メモに、ニャンタクロースが記された。

「あったかいニャん♪」
　ぬくぬく、ぬくぬく。
　綾花の部屋で、ニャンタクロースは炬燵にご満悦。
「煮干もどうぞ」
「天国ニャん」
　ゴロゴロ喉を鳴らし始めたニャンタクロースの横には、同じように喉を鳴らす猫達が。
　寮に遊びに来ている野良猫達を、暖かい部屋に招きいれたのだ。
（お外は寒かったんですね）
　綾花も隣に座り、まぁるくなっている野良猫の背を撫でる。
　ふわふわもこもこだし、寮のみんなで毛布やらなにやら暖を取れるように裏庭に用意してあるのだが、それはそれ、これはこれ。
　炬燵で温まるのは、人も猫も至福の贅沢なのだ。
『暖かい炬燵でまぁるくなりたい』
　それが、寮に遊びに来ていた野良猫達の願いだった。
「実は、プレゼントも用意してあるんですよ」
　綾花が立ち上がり、クローゼットにしまって置いた丸い籠を取り出す。
　瞬間、野良猫達の瞳がきらきらと輝いた。
　炬燵からジャンプする勢いで、丸い籠に飛び乗る野良猫たち。
　二匹で一杯一杯なところを、強引に三匹乗り込んだ。
　籠を持っていられなくなって、綾花は炬燵の上に籠を置く。
　上から見ると、まさに猫団子。
「炬燵なら、いつでも入りにきてくれていいんですよ。窓を覗いてみてくださいね」
　綾花が野良猫達に話しかけると、ニャンタクロースが即座に翻訳。
　野良猫たちが嬉しそうに鳴いた。
「それと、こちらはニャンタクロースさんに」
「ニャんと！　ニャンタクロースにプレゼントにゃっ？」
「えぇ。猫缶です。結構人気なんですよ？」
「こ、これはっ、高級猫缶にゃんぷちニャっ。嬉しいのニャ。ありがとうニャ～ん♪」
「来年もまた、来てくださいね」
「もちろんにゃ。ニャンタクロースはいつでもみんなのそばにいるのニャん」
「最後に……一緒に写真をとってください」
「いいのニャ」
「ありがとうございます」
　ぎゅう♪
　ニャンタクロースを抱きしめて、綾花は今日は沢山の野良猫たちと暖かく過ごした。