Xmasの奇跡☆　物語の素敵な１日 in 寝子島！｜リアクション

Xmasの奇跡☆　物語の素敵な１日 in 寝子島！

●金の斧

　サキリ・デイジーカッターがアーサー王と別れ、三夜湖のほとりまで戻ってきた時、そこにはある人物がいた。
「こんちは。おたく、面白い人と一緒にいたねぃ？」
　ひひと笑うその姿から既に人に警戒心を与える、骨削瓢である。
（この人、確か猫鳴館の自治会員……もとい穴掘人）
　サキリは確かに見覚えがあった。スコップを持っている姿を度々猫鳴館で目撃しているのである。そして、今も。
「湖から突き出る腕、剣、それをかざす人物。そいつぁ正にアーサー王だよい。同乗のおたくはってぇなら魔法使いかい？」
　そう言いながら瓢は軽やかな足取りでサキリの目の前を横切り、楽しげに自身のスコップを肩から降ろした。
「地下帝国のために偵察に来てみたら、千載一遇の機会。あっしの愛用のスコップ、アヴァロンで鍛えて貰えば、さぞかし素晴らしいスコップになると思いませんかい？」
　そう言うと瓢はボチャン！　と迷いなくスコップを湖に放り投げた。
「さーてさて、湖の貴婦人さん、頼みますよい」
　揉み手をする瓢。思わぬ展開にサキリもつられて湖面を見つめていると、ザーッと水面が盛り上がった。まさか、また湖の貴婦人が……？

「残念でした～、お話が違います！　私は泉の精。貴方の投げたのはこの金のスコップ？　それとも銀のスコップ？」

　カックリ。瓢の顎が腹話術の人形のように綺麗に外れた。そして俯いてふるふると肩を震わすと。
「……なんじゃそりゃーーー！　元のスコップ返せやコラーーー！！！」
　うおぉぉと泉の精に向かって突進する。
　驚いたのは泉の精だ。過去彼女に突進してきた人間などいなかったであろう。
「え？！　嘘！　ちょっと待って！　やだぁー！」
　スコップを放り出して湖の中に一目散。それを追う瓢。そして盛大にバッシャンバッシャンと水しぶきが上がったと思ったら、そのまま２人とも湖の底に消えていった。
　また湖に１人になったのはサキリだ。
「……どうしようかな」
　何かあの人、いかなる時も大丈夫そうなんだよね。
　少しだけ小首を傾げて考えていたサキリだが、くるりと湖に背を向けた。
　展望台の方に歩きながらふと思う。そういや、某国民アニメに似たような道具があったよね。人間を放り込むと、キレイになって出てくるやつ。そうしたら、あのアンダーグラウンドな人が、キレイな……。
「くくっ」
　思わず吹き出してしまう。もしそうなら、ちょっと、いやかなり見てみたかったなと思いながら三夜湖を後にするサキリだった。

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